「ミス指摘」のポイント、部下の心を傷つけず、「教えてもらってよかった」と思われるには?

中野 亜希

Special働き方改革

事情を聞くときも「なんで? どうして?」の問い詰めはNG

初めに触れたように「ミスを指摘されると傷つく」という若手たちがいるのは事実です。しかしそれは「被害妄想が激しい」「仕事とプライベートの切り替えができない」といった、彼らの気の持ちようの問題とは限りません。頭ごなしの指摘や、部下の人格を丸ごと否定するような言い方を、上司が悪気なくしていることもあるからです。

たとえば、いつも書類の提出期限を守れない部下がいたとします。そんな時、こんな言い方をする人を見たことはありませんか?

「だからお前はダメなんだ。やる気がないなら帰れ」
「仕事の提出期限も守れないような人間は、性格がだらしないんだ」
「できるわけもないのに、お前みたいなやつに任せておいた俺が間違っていた。もういいよ」

頭ごなしで、言葉が強く、何の根拠もない暴言です。しかも、具体的に何を改善すればいいのかわからないので、部下が「人格否定」ととらえてしまうのも無理はありません。

「いつも期限を守れない」原因が性格にあるとは限りません。「1人の部下に業務が集中しすぎている」「指示があいまいだった」「必要な資料の取り寄せに、上司が思っている以上に時間がかかった」など、本人以外の部分に理由があることも多いです。「ここのところ、3回連続で期限を守れていないけど、どうしたの?」といった具合に、事情を聞くところから始めましょう。

このとき、部下に「問い詰められている」と感じさせないことがポイントです。「なんで期限を守れないの?」と「なんで」から始まる聞き方をしたり、部下に事情の説明を求めておきながら「言い訳はするな」などの横やりを入れたりしてしまう上司は少なくありません。それだけに、圧迫感のない対応をするだけで、部下は心を閉ざしにくくなります。

「なんで?どうして?と、怖い聞かれ方をしないだけでもありがたい」と感じている部下も多いのです。

「じゃあ、どうすればいいのか」を教える

事情を聞いたら、部下の人格とは切り分けて「仕事上の指摘」を行いますが、ただ「ここがダメ」と示すだけでは部下の気持ちを凹ませて終わることになってしまいます。同じミスを繰り返させないため、ひいては部下が成長するために、何をすればよいのか、具体的な指示とセットで指摘をしてあげたいところです。

先に挙げた「書類の提出期限を守れない」部下には、「手が回らないほど仕事を受けて抱え込む前に、相談してほしい」「わからないことをそのままにせず、疑問に感じた時点で聞きに来てほしい」「ひとつひとつの仕事にかかる時間を把握して、工程管理をしてほしい」など、具体的な改善点を知らせましょう。このとき、「ちゃんと聞きに来てほしい」「早めに返信しよう」といったあいまいな言葉ではなく、「疑問に思った時、即座に」「24時間以内に」など、具体的な表現をしたほうが、より伝わりやすいです。

注意をする際には「即、役立つアドバイス」とセット。こう考えておくのが重要です。

そもそも普段から部下をほめておく必要がある

ここまで、「部下の心を傷つけないこと」「わかりやすく具体的な指摘・指示を行うこと」についてお話ししましたが、もう1つ、重要なポイントがあります。それは「普段から部下を褒めること」!

私たちは、年次が上になり、昇進するごとに「できて当たり前」という感覚になりやすいです。「できて当たり前」だから、当たり前のことをした部下を褒めない。でも、「できないこと」は異常事態なので叱っておかなくては……。こういう思考に偏りやすい気がします。

しかし、部下の立場で考えると、普段は褒めてくれないのに、叱るときだけグイグイ来る上司の言うことなんて聞きたくないはずです。

「できたときは褒める」「できていないところは指摘し、改善策も伝える」。部下の目には、これが「一貫した態度」に映るでしょう。「良くも悪くも、上司は自分の働きをしっかり見ている」。そう感じさせることができれば、多少厳しい指摘をしたからといって、必要以上に傷つくこともないのではないでしょうか。

「普段から褒めてくれる」上司の「ちょっと厳しい一言」は普段からガミガミうるさい人が発する言葉より何倍も効果的です。

私たちは自分が思っている以上に怖い

業務の合間、お茶を飲みながら雑談している時に、仲のいい上司が言いました。

「俺たちはもう、自分が思っている以上に怖いんだから、若手には気を使わないとね。今だって、俺らはキャッキャしているつもりでも、新人から見たら虎とライオンがじゃれているように見えてるよ」と。「私たちは自分が思っている以上に怖い」とは上司の好きなジェーン・スーさんの言葉らしいのですが、確かにそうだなと思います。

若手たちが私たちに感じる「怖い」は「わかりにくい」という意味かもしれません。「指摘の理由を明確にする」「気分に任せて怒らない」「一貫した態度をとる」ことで、そのわかりにくさをなくしていけたら、より伝わりやすく、部下のためになり、ひいてはチームのためにもなるミスの指摘ができるようになるのではないでしょうか。
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中野 亜希

ライター・コラムニスト
大学卒業後、ブログをきっかけにライターに。会社員として勤務する傍らブックレビューや美容コラム、各種ガジェットに関する記事執筆は2000本以上。趣味は読書、料理、美容、写真撮影など。 Twitter:@752019

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