「『汝(なんじ)、殺すなかれ。汝、盗むなかれ』——サイバー空間ではこの言葉から2500年たった今も争いが絶えず、罪なき人が犠牲となっています」と、旧約聖書の「モーセの十戒」を引用するのは、GMOインターネットグループ 代表取締役グループ代表の熊谷正寿氏です。熊谷氏の言葉から、日本最大級のセキュリティカンファレンス「GMOサイバーセキュリティ大会議&表彰式 2025(以下、GMOサイバーセキュリティ大会議)」が始まりました。

GMOインターネットグループ 代表取締役グループ代表 熊谷正寿氏
「すべての人に安心な未来を」をキャッチフレーズに掲げるGMOインターネットグループは、2025年3月6日、東京・渋谷のセルリアンタワーでGMOサイバーセキュリティ大会議を開催。
石破茂内閣総理、平将明デジタル庁サイバー安全保障担当大臣、そして東京大学大学院工学系研究科 教授で同グループのAI顧問である松尾豊氏らが登壇し、産官学連携で導く“ネットセキュリティ最前線”を発信するこのイベントでは、どのようなことが語られたのでしょうか。そして“表彰式”が行われる理由は?
ITやセキュリティに詳しくない方にもイベントの狙いがわかるように、その様子をレポートしましょう。実はあなたも、サイバーセキュリティに関わる一員なのです!
石破茂内閣総理、平将明デジタル庁サイバー安全保障担当大臣、そして東京大学大学院工学系研究科 教授で同グループのAI顧問である松尾豊氏らが登壇し、産官学連携で導く“ネットセキュリティ最前線”を発信するこのイベントでは、どのようなことが語られたのでしょうか。そして“表彰式”が行われる理由は?
ITやセキュリティに詳しくない方にもイベントの狙いがわかるように、その様子をレポートしましょう。実はあなたも、サイバーセキュリティに関わる一員なのです!
「GMOサイバーセキュリティ大会議&表彰式2025」アーカイブ動画
via www.youtube.com
石破茂総理大臣と平将明サイバー安全保障担当大臣が語ったこと
GMOサイバーセキュリティ大会議の冒頭では、石破総理大臣と平大臣からのビデオメッセージが届きました。
石破総理大臣は、今や私たちの生活がサイバー空間なくして成り立たないことに触れつつ、「特に最近では、行政機関や企業からの情報窃取、ランサムウェアによるデータの暗号化と身代金要求、重要インフラの機能停止を目的としたサイバー攻撃などが大きな問題」と述べ、現状の厳しさを訴えます。
こうした背景を踏まえ「政府は国家安全保障戦略に基づき、サイバー安全保障分野の取り組みを強化しており、能動的サイバー防御を可能とするための法案を国会に提出したこと、また「“まさか自分が狙われることはないだろう”と思わず、国民の皆様一人ひとりに対策を取っていただく必要がある。加えて、国全体でサイバーセキュリティを強化するために、産学官が連携して“人財”育成を進めることも重要な課題」と述べました。
石破総理大臣は、今や私たちの生活がサイバー空間なくして成り立たないことに触れつつ、「特に最近では、行政機関や企業からの情報窃取、ランサムウェアによるデータの暗号化と身代金要求、重要インフラの機能停止を目的としたサイバー攻撃などが大きな問題」と述べ、現状の厳しさを訴えます。
こうした背景を踏まえ「政府は国家安全保障戦略に基づき、サイバー安全保障分野の取り組みを強化しており、能動的サイバー防御を可能とするための法案を国会に提出したこと、また「“まさか自分が狙われることはないだろう”と思わず、国民の皆様一人ひとりに対策を取っていただく必要がある。加えて、国全体でサイバーセキュリティを強化するために、産学官が連携して“人財”育成を進めることも重要な課題」と述べました。

ビデオメッセージで登場した石破茂内閣総理大臣
平大臣からは、サイバーセキュリティに関してより具体的なメッセージが発せられました。
2024年12月に日本国内の重要インフラに対してサービス停止を狙う「DDoS攻撃」が行われ、政府はこれに対する注意喚起を実施したことを紹介。
加えて平大臣は、国家を背景としたサイバー攻撃が行われていることから、北朝鮮を背景とする暗号資産窃取を狙うサイバー攻撃グループ「トレーダートレーター」に関する注意喚起と、中国の関与が疑われるサイバー攻撃グループ「ミラーフェイス」に関する注意喚起を実施したことに触れ、「能動的サイバー防御のための関連法案を取りまとめ、提出した。担当大臣として早期成立に向け尽力する」と述べました。
これらの対策について「大企業といえど、民間のみでのサイバーセキュリティの確保は極めて困難。官民連携し、民間におけるサイバー攻撃の対処能力の一層の向上につなげていきたい」と意気込みを語りました。
2024年12月に日本国内の重要インフラに対してサービス停止を狙う「DDoS攻撃」が行われ、政府はこれに対する注意喚起を実施したことを紹介。
加えて平大臣は、国家を背景としたサイバー攻撃が行われていることから、北朝鮮を背景とする暗号資産窃取を狙うサイバー攻撃グループ「トレーダートレーター」に関する注意喚起と、中国の関与が疑われるサイバー攻撃グループ「ミラーフェイス」に関する注意喚起を実施したことに触れ、「能動的サイバー防御のための関連法案を取りまとめ、提出した。担当大臣として早期成立に向け尽力する」と述べました。
これらの対策について「大企業といえど、民間のみでのサイバーセキュリティの確保は極めて困難。官民連携し、民間におけるサイバー攻撃の対処能力の一層の向上につなげていきたい」と意気込みを語りました。

ビデオメッセージで登場した平将明デジタル庁サイバー安全保障担当大臣
今そこにある“領域横断作戦”「安全保障分野におけるサイバー戦の重要性」
続いて登壇したのは、陸上自衛隊 教育訓練研究本部長で陸将の廣惠(ひろえ)次郎氏。サイバーセキュリティの話に、なぜ自衛隊が登場するのか? と思うかもしれません。しかしこれこそが文字通りのサイバーセキュリティの最前線の話であることが、聴講者にもすぐに伝わる内容でした。

廣惠次郎・陸上自衛隊 教育訓練研究本部長陸将
今、ウクライナでは戦争が起きています。その戦争でも「実はサイバー戦と軍事作戦は極めて深い関係にある」と廣惠陸将は述べ、2014年7月に発生した「ゼレノピリヤの戦い」の事例を紹介しました。
当時、戦地では電子戦によりウクライナ軍の無線機に妨害がかかり、ウクライナの兵士たちは、連絡手段として個人の携帯電話に依存していました。敵はその状況を作り出した上で、兵士の家族に向け「あなたの息子が亡くなった」などの偽のメッセージを送りました。すると心配した家族が軍に連絡し、その通信電波が多数発生することで軍の位置も特定されました。——こうした心理戦と電子戦の組み合わせにより、ウクライナ兵の行動が妨害されました。
当時、戦地では電子戦によりウクライナ軍の無線機に妨害がかかり、ウクライナの兵士たちは、連絡手段として個人の携帯電話に依存していました。敵はその状況を作り出した上で、兵士の家族に向け「あなたの息子が亡くなった」などの偽のメッセージを送りました。すると心配した家族が軍に連絡し、その通信電波が多数発生することで軍の位置も特定されました。——こうした心理戦と電子戦の組み合わせにより、ウクライナ兵の行動が妨害されました。

ウクライナにおけるサイバー戦の事例
陸将は「ゼレノピリヤの戦いの事例は、軍事における陸・サイバー・電磁波の3つの領域をまたいだ作戦で、専門用語では『領域横断作戦』と呼ぶ。2014年時点でこれをやったのは大変斬新なことで、専門家は非常に驚いた」と述べます。つまり「サイバー能力を含め、防衛省、自衛隊全体として能力を向上する必要がある」のです。
自衛隊では、陸・海・空の領域だけでなく、電磁波・宇宙・サイバー・認知と、考えていくべき領域が増え、さらにそれらが組み合わさった脅威が発生しつつあります。そして、「防衛能力向上のためには、平大臣が述べるように、官民連携が極めて重要。その意味で、皆様の協力をぜひよろしくお願いしたい」とまとめました。
自衛隊では、陸・海・空の領域だけでなく、電磁波・宇宙・サイバー・認知と、考えていくべき領域が増え、さらにそれらが組み合わさった脅威が発生しつつあります。そして、「防衛能力向上のためには、平大臣が述べるように、官民連携が極めて重要。その意味で、皆様の協力をぜひよろしくお願いしたい」とまとめました。

自衛隊が防衛について考えていくべき領域に、サイバー領域も含まれている

宮田 健
ライター
2012年よりITセキュリティのフリーライターとして活動するかたわら、個人活動として“広義のディズニー”を取り上げるWebサイト「dpost.jp」を1996年ごろから運営中。テーマパークやキャラクターだけではない、オールディズニーが大好物。2020年、2022年には講談社「ディズニーファン」に短期連載も。
Webサイト:https://dpost.jp/
X:@dpostjp