さようなら、Windows 10──マイクロソフトがたどり着いた「和解」の時代のラストシーズン

武者 良太

Specialインターネットテクノロジー
正直に言うと、僕はまだ「更新プログラムを構成しています」という画面を、心のどこかで待っている。あの仕事を一段落とできるタイミングとなるブルースクリーンが二度と灯らなくなる日がくるとは。頭では分かっていても、実感は追いついていない。

Windows 10のサポートが終わる。個人ユーザー向けの拡張セキュリティ更新プログラム(ESU)が2027年10月12日に終了する。これが最後だ。ラストシーズンだ。

※写真出典:photoAC(https://www.photo-ac.com/main/detail/3183162/)

怯えながらも大きくなってきたOS

振り返ればWindowsという存在は、幾度となく何かの存在に怯えていたように感じる。

Windows 95の頃はMacintoshのSystem 7を横目に、GUIを一般のPCユーザーの元へ届けながらインターネットブームを背景に爆発的な人気を得た。

Windows 98の時代にはNetscapeとのブラウザ戦争が佳境を迎え、Webという新しい生活圏そのものを取り込もうと、Internet Explorerを自分の身体の奥深くに浸透させていった。

続くWindows Meが向き合ったのは、家庭に広がり始めたデジタルカメラやビデオ、そしてブロードバンド化していくインターネットというマルチメディア。しかし無理がたたって安定性という代償を払うことに。

業務用で安定していたWindows 2000をベースに作られたWindows XPは、スタートメニュー、デスクトップ、タスクバーという基本操作を踏襲し、Service Packによって高度化するセキュリティ対策に対応。これは1つの到達点だった。

ところがWindows Vistaは、進化しなくてはいけないという呪いにかかり、OSという身体が重たくなってしまった不器用な青年期といえよう。

Windows 7は、その反省から生まれた、地に足のついた働き者だったように思う。

そしてWindows 8。あれは、明らかにiPadに恋をしてしまったWindowsだった。当時の開発責任者が後年「definitely driven by Apple」と振り返っているように、マウスとキーボードを使い続けてきた無数のユーザーを置き去りにして、指先でなぞる未来のほうへ本体ごと作り替えようとした。あの盲目的で衝動的な恋は、それまで向き合っていたフォロワーに摩擦と戸惑いを残していった。

振り返ると、Windowsは確かに巨人だった。世界中のデスクトップを支配し、誰もが疑いようもなくそこに立っていた。けれど巨人であることと、何も恐れずにいられることは、まったく別の話だ。Macintoshを恐れ、Netscapeを恐れ、Linuxを恐れ、iPadやAndroidを恐れた。

その怯えの連鎖の中で、もう一つ厄介なライバルがいたことも忘れてはいけない。それは、Windows自身の前バージョンだ。使い慣れたXPを手放そうとしない業務現場、軽快さゆえに離れがたかった7ユーザーたち。マイクロソフトは幾度となく、外の黒船だけでなく、自分自身のかつての姿とも競い合い、乗り換えを説得し続けなければならなかった。

新しいWindowsにとって、時に最大の障壁は、過去の自分自身だった。

Windows 10は、その反省のうえに、立っていた。
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武者 良太

1971年生まれ。ライター/ジャーナリスト。出版社勤務を経て独立し、Kotaku Japan編集長を務めた。スマートフォン、AI、XR、オーディオ、カメラを中心に、製品レビューから開発者へのインタビュー、技術が暮らしやビジネスに与える影響まで幅広く取材。ギズモード・ジャパン、ITmedia、東洋経済オンラインなどに寄稿。ユーザー目線でテクノロジーを伝える。

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