2014年、ハーバード大学の研究者らは、スマートフォンやタブレット端末などのディスプレイが発する短波長の光—いわゆるブルーライトが、人の入眠を阻害して睡眠の質を低下させると主張する研究論文を発表しました。
この論文は、スマートデバイスが睡眠に影響を与えるという学説の根拠として世界に広まり、ブルーライト対策商品が家電量販店やメガネ店に並ぶきっかけになったとされています。
ところが近年は、スマートデバイスの画面が発するブルーライトの量は比較的少なく、睡眠への影響が誇張されているとする研究論文やレポートが増えつつあります。
この論文は、スマートデバイスが睡眠に影響を与えるという学説の根拠として世界に広まり、ブルーライト対策商品が家電量販店やメガネ店に並ぶきっかけになったとされています。
ところが近年は、スマートデバイスの画面が発するブルーライトの量は比較的少なく、睡眠への影響が誇張されているとする研究論文やレポートが増えつつあります。
そもそもブルーライトとは何か
ブルーライト対策商品の説明書きや売り文句には、スマートフォンやテレビ、パソコン、タブレット、LED照明が発する大量のブルーライトが体内時計に影響を与え、睡眠を阻害すると主張するものが多く見受けられます。
ブルーライトとは、紫から青に見える範囲の可視光線で、およそ380〜500nmの波長を持つ光です。
人体において夜間の入眠を促すのは、概日リズムと呼ばれる生理現象です。概日リズムは、約1日周期の昼夜の明暗に合わせて体内時計を調節する仕組みです。
特に哺乳類は、脳の視床下部の視交叉上核(体内時計の中枢)で周囲の明るさの変化を認識し、その他の情報と統合して脳の中央部にある松果体に伝達することで、睡眠を司るホルモン・メラトニンの分泌を調節します。
メラトニンは主に夜間に分泌され、脈拍・体温・血圧などを低下させて睡眠を促します。また、日中の明るさを浴びることでメラトニンの分泌が抑制されて体内時計が調節され、規則正しい生活リズムの維持に役立つとされています。
冒頭のハーバード大学の研究では、12人の参加者を対象に、半数には就寝前にiPadで電子書籍を、残りの半数には紙の本を読むよう依頼しました。結果、iPadで読書をした人は紙の本を読んだ人に比べて寝付きが悪く、翌朝の目覚めも良くありませんでした。
研究者らは、iPadのグループの寝付きが悪くなった原因は、LEDバックライト液晶ディスプレイが発する光に青色光が通常の白色光より多く含まれるためだと結論づけました。
その後も、スマートフォンのディスプレイが発するブルーライトが入眠を阻害し、概日リズムを乱すことを裏付けるような研究がいくつか報告され、ブルーライト睡眠阻害説はさらに広まりました。
ブルーライトとは、紫から青に見える範囲の可視光線で、およそ380〜500nmの波長を持つ光です。
人体において夜間の入眠を促すのは、概日リズムと呼ばれる生理現象です。概日リズムは、約1日周期の昼夜の明暗に合わせて体内時計を調節する仕組みです。
特に哺乳類は、脳の視床下部の視交叉上核(体内時計の中枢)で周囲の明るさの変化を認識し、その他の情報と統合して脳の中央部にある松果体に伝達することで、睡眠を司るホルモン・メラトニンの分泌を調節します。
メラトニンは主に夜間に分泌され、脈拍・体温・血圧などを低下させて睡眠を促します。また、日中の明るさを浴びることでメラトニンの分泌が抑制されて体内時計が調節され、規則正しい生活リズムの維持に役立つとされています。
冒頭のハーバード大学の研究では、12人の参加者を対象に、半数には就寝前にiPadで電子書籍を、残りの半数には紙の本を読むよう依頼しました。結果、iPadで読書をした人は紙の本を読んだ人に比べて寝付きが悪く、翌朝の目覚めも良くありませんでした。
研究者らは、iPadのグループの寝付きが悪くなった原因は、LEDバックライト液晶ディスプレイが発する光に青色光が通常の白色光より多く含まれるためだと結論づけました。
その後も、スマートフォンのディスプレイが発するブルーライトが入眠を阻害し、概日リズムを乱すことを裏付けるような研究がいくつか報告され、ブルーライト睡眠阻害説はさらに広まりました。
「ブルーライト有害説」を覆す、近年の研究
現在では、冒頭で触れたように、近年は、スマートデバイスの画面から発せられるブルーライトの量は比較的少なく、睡眠への影響は誇張されているとする研究論文やレポートが増えつつあります。
例えばスマートフォンのブルーライトを低減するナイトモードなどを就寝前に使用しても、睡眠の質が改善されるわけではないことが、2022年の研究報告で明らかになっています。
2023年には、スイスのバーゼル大学とドイツのマックス・プランク生物サイバネティクス研究所が、男女各8名を対象に23日間実施した研究で、就寝1時間前に青色光・白色光・黄色光を浴びた際の脳波への影響を調べた結果、青色光が睡眠に悪影響を与える「決定的な証拠はない」との結論を得ています。
2024年には、睡眠医学レビュー誌に掲載された世界11件の研究をまとめたレビューで、 就寝前1時間にディスプレイの光を見ていると寝つきが悪くなるという証拠は認められなかったと、英タイムズが報じています。
さらに、全米睡眠財団が2024年に行った睡眠と小児科の専門家16人による議論では、スマートデバイスの使用全般が子どもや青少年の睡眠を損なうものの、その主な原因は夜間の刺激的または不快なコンテンツである可能性を指摘する合意声明が発表されました。
目への影響についても、2024年の研究では、人がスマートデバイスから約24時間で受けるブルーライトの量は、屋外で1分間過ごす間に受ける量にも満たないと報告されています。
例えばスマートフォンのブルーライトを低減するナイトモードなどを就寝前に使用しても、睡眠の質が改善されるわけではないことが、2022年の研究報告で明らかになっています。
2023年には、スイスのバーゼル大学とドイツのマックス・プランク生物サイバネティクス研究所が、男女各8名を対象に23日間実施した研究で、就寝1時間前に青色光・白色光・黄色光を浴びた際の脳波への影響を調べた結果、青色光が睡眠に悪影響を与える「決定的な証拠はない」との結論を得ています。
2024年には、睡眠医学レビュー誌に掲載された世界11件の研究をまとめたレビューで、 就寝前1時間にディスプレイの光を見ていると寝つきが悪くなるという証拠は認められなかったと、英タイムズが報じています。
さらに、全米睡眠財団が2024年に行った睡眠と小児科の専門家16人による議論では、スマートデバイスの使用全般が子どもや青少年の睡眠を損なうものの、その主な原因は夜間の刺激的または不快なコンテンツである可能性を指摘する合意声明が発表されました。
目への影響についても、2024年の研究では、人がスマートデバイスから約24時間で受けるブルーライトの量は、屋外で1分間過ごす間に受ける量にも満たないと報告されています。
本当の「睡眠の敵」はコンテンツ?
2025年3月、米国がん協会が12万2000人以上を対象に行った調査では、毎日のスクリーン使用が就寝時間の遅延と週あたり約50分の睡眠時間減少に関連していることが明らかになりました。
ただ、睡眠医学専門医のアレックス・ディミトリウ博士は、「同調査の著者ら自身が、本研究では因果関係を明確に特定できないと認めている」と指摘しています。
さらに同氏は「ニュース記事やブログ、SNSの投稿をスクロールしていると、何時間でも起きていられる。しかし本を読もうとすると、10分も経たないうちに眠くなる。私の患者たちも同じように感じている」と述べ、スマートデバイスの画面はただ明るさよりも「あまりに興味を引きすぎる」ことが睡眠の妨げになっていると説明しています。
確かに、入眠を邪魔しているのはブルーライトというより、魅力的なコンテンツが画面にあふれているからという可能性はありそうです。特にSNSやYouTubeは、アルゴリズムによってユーザーが興味を持ちそうなコンテンツを分析し、推奨するように設計されています。
要するに、ブルーライトの影響はゼロではないが、それよりもスマートデバイスが推奨するコンテンツにユーザーが強い興味を持つことで、眠気が吹き飛んでいる可能性があるということです。
スタンフォード大学の精神医学・行動科学教授、ジェイミー・ザイツァー氏は、ブルーライト睡眠阻害説について、科学的な内容自体は悪くなかったものの、人びとに誤った結論を導かせた点を問題視し、「信じられないほど誤解を招く研究だった」と述べています。
同氏は、ブルーライトが睡眠に影響を与える可能性は否定していません。目にあるメラノプシンという光感受性タンパク質が、光全般に反応しつつも特に青色に対して敏感に反応する性質を持つからです。
若い人ほど光によるメラトニン抑制効果を受けやすい可能性がある一方で、加齢とともに光への感受性は低下し、加齢に伴う目の機能変化によって光の影響も軽減される可能性があります。
つまり本当の問題は、寝る前にスマートデバイスで何をしているかであり、「人びとを眠らせないのは光そのものよりコンテンツの内容の方が大きい」とザイツァー氏は述べています。
ただ、睡眠医学専門医のアレックス・ディミトリウ博士は、「同調査の著者ら自身が、本研究では因果関係を明確に特定できないと認めている」と指摘しています。
さらに同氏は「ニュース記事やブログ、SNSの投稿をスクロールしていると、何時間でも起きていられる。しかし本を読もうとすると、10分も経たないうちに眠くなる。私の患者たちも同じように感じている」と述べ、スマートデバイスの画面はただ明るさよりも「あまりに興味を引きすぎる」ことが睡眠の妨げになっていると説明しています。
確かに、入眠を邪魔しているのはブルーライトというより、魅力的なコンテンツが画面にあふれているからという可能性はありそうです。特にSNSやYouTubeは、アルゴリズムによってユーザーが興味を持ちそうなコンテンツを分析し、推奨するように設計されています。
要するに、ブルーライトの影響はゼロではないが、それよりもスマートデバイスが推奨するコンテンツにユーザーが強い興味を持つことで、眠気が吹き飛んでいる可能性があるということです。
スタンフォード大学の精神医学・行動科学教授、ジェイミー・ザイツァー氏は、ブルーライト睡眠阻害説について、科学的な内容自体は悪くなかったものの、人びとに誤った結論を導かせた点を問題視し、「信じられないほど誤解を招く研究だった」と述べています。
同氏は、ブルーライトが睡眠に影響を与える可能性は否定していません。目にあるメラノプシンという光感受性タンパク質が、光全般に反応しつつも特に青色に対して敏感に反応する性質を持つからです。
若い人ほど光によるメラトニン抑制効果を受けやすい可能性がある一方で、加齢とともに光への感受性は低下し、加齢に伴う目の機能変化によって光の影響も軽減される可能性があります。
つまり本当の問題は、寝る前にスマートデバイスで何をしているかであり、「人びとを眠らせないのは光そのものよりコンテンツの内容の方が大きい」とザイツァー氏は述べています。

Munenori Taniguchi
ライター。ガジェット全般、宇宙、科学、音楽、モータースポーツetc.、電気・ネットワーク技術者。
実績媒体:TechnoEdge、Gadget Gate、Engadget日本版、Autoblog日本版、Forbes JAPAN他
Twitter:@mu_taniguchi













