しかし意味を持たせたり、うまくハマった名前を思いついたとしても、それが他社に使われていないユニークな物かを調べるには結構手間がかかる。Googleなどで検索して探すこともできるが、その時点でオープンになっておらず、商標だけコッソリ取られているような場合は、いざ出願したら同名が既に他社に使われていた時の悲しみは深い。
こうした悩みをスムーズに解決してくれるのが、ネーミングサービス「nomyne byGMO(以下、ノミネ)」だ。ノミネは「ネーミング」に特化したウェブサービスで、最大の特長はネーミング専用の検索エンジンを備えていることだ。気になる名前が他社の商標として登録されていないか、ブランドとしての識別性を備えているか、といったネーミングに必要な事柄だけを調べられる、ネーミング専用の検索機能を提供しているのだ。
ネーミング検索サービス「nomine byGMO」。利用には無料の会員登録が必要だ。商標などの検索は、トップページの検索窓に検索したいネームを入れるだけと分かりやすい
無料での利用もできるので、実際のネーミングや商標出願のような小難しい用途に限らず「あの名前やこの名前が実際に商標として登録されているか気になる」なんてちょっとチェックしてみても楽しい。まずは実際にノミネであれこれ検索してみよう。
無料メンバーシップでは、ネーミング検索が30日で10件までという制限がある。とにかくネーミング検索をしまくりたいネーミングプロの人には、検索回数無制限の有料メンバーシップも月額1,500円で用意されている
まずは既存のブランド名を検索
ノミネでネーミング検索するには会員登録が必要だ。デフォルトのプランである「無料メンバーシップ」なら、登録後30日以内は無料で最大10件まで検索できる。登録はメールアドレスと名前だけで簡単にできるので、登録後ログインしたら、あとは検索窓へ検索したいワードを入れるだけ。今回は、「RAKUNI」と入力していざ検索!
検索結果が出るまでには結構時間がかかる。体感で大体15〜45秒だろうか。出てきた検索結果を見てみると、こちらが思っていた以上に、いろいろと面白い内容で構成されていた。
検索結果の筆頭は、Wikipediaだ。強い関連性がある名称がないかを調べてくれている。ここでヒットするような強い関連性がある名称は、実際に使用した時にそちらと混同されて、Googleなどで検索の上位に表示されにくくなってしまう。他にも、一般的な単語との関連性や、ブランドとして成立するレベルの識別性があるか、といったポイントもチェックしてくれる。今回の「RAKUNI」は、これらのチェックは全てパスしていた。つまり、新たなブランドとしては非常にいいネーミングということだ。
そして次に出てくるのが、実際に権利化されている先行ブランドがあるか、という項目だ。今回の検索結果ではNGが出ており、その理由として「日本国商標に、完全に一致している先行ブランドがあります」というメッセージが表記されていた。そして「RAKUNI」で検索した際にヒットした完全に一致、または類似のブランドがズラッと並べられる。これを眺めるのも面白い。
「RAKUNI」については、きちんと株式会社トーモとして商標登録されているのがはっきり分かる。つまり、今からこのブランドを使おうとすると商標侵害になってしまうことがすぐに分かり、うっかり完全一致のブランド名をネーミングしてしまう失敗が防げるというわけだ。
個人的に気に入っているのは、それ以外の類似の商標についても表示してくれることだ。例えば「RAKUNIE」や「RAKUNE」など、似たようなブランド名とそのロゴが表示されており、これらを眺めながらロゴのデザインを楽しむだけでもとても楽しい。
また現在はベータ版の機能だが、アメリカ合衆国の商標についても同時に調べる機能があり、今回の場合、「Rakumi」や「RAKANI」といったブランド名が登録されていると表示された。
さらに、これらの検索結果をふまえた上で、検索した名称が新しい社名やブランド名として適切かどうかを診断して提示してくれる。
検索結果では、まずネーミング自体の個性や、ブランドとしての識別性などをチェックできる
さらに、現時点でブランドとして商標登録されているかを表示するほか、ズバリその名前が先に商標登録されているか、類似の名前がどれだけ登録されているか、などの情報も確認できる
またアメリカの商標もチェックした上で、今から新ブランドの名称として適切かの診断が表示される
有名ゲームタイトルを検索してみるとどうなるか?
検索結果は納得の表示だ。まずは、最初のチェックポイントでいきなりNG。Wikipedia日本語版で完全に一致している名前があると表示された。また、会社名チェックでは、「アウトラン」を含む会社名が30件もあるという結果が出た。このうち15件は株式会社アウトランや有限会社アウトランなど、アウトランがそのまま会社名として使われていた。これだけ多く使われているアウトランを、新たに会社名として登録するのは完全に負け犬ムードだ。
知名度の高いネーミング「アウトラン」は、Wikipedia日本語版でのチェックでも複数回ヒットしているため、いきなりNGが出るのは分かりやすい。さらに社名のチェックもかなりの数がヒットしている
そして先行で登録済みのブランドとの比較ではやはりNGが出ており、完全に一致している先行ブランドとして、やはり現在権利を所有している株式会社セガゲームスの社名とともにアウトランがきちんと登録されていた。結果的には、当然のことだがブランド力の観点から新しいサービスや商品名として適切ではない可能性があると指摘されてしまった。
商標を同様にチェックしてもセガによる登録が確認できる。ここでは、類似ブランドについてもかなり幅広くチェックしてくれるのが面白い
複数のネーミングを検索できる「一括検索」機能
一括検索の場合は、その場ですぐに検索結果は出力せず、後ほど登録メールアドレス宛に検索が完了した通知が届く仕組みとなっている。通知メールからサイトに戻り、「ネーミング検索履歴」を確認することで、先ほど入力した複数のネーミング検索結果を全て確認できるようになっている。
複数のワードを同時にチェックできる一括検索もある。今回は有名なアニメーションの劇中で登場するロボットの名前を3つ同時に検索した
ネーミング検索は時間がかかるため、一括検索を使用するとその場で全ての結果が表示されず、全ての検索が完了するとメールで通知される仕組み
このようなメールで通知が届いたら再度サイトをチェック!
ネーミング検索履歴に追加された結果をチェックできる。一括検索に限らず、過去に検索した履歴は後から何度でもチェックし直すことが可能
検索回数の制限については、正直なところ「検索回数に制限があるなんて……」と残念な気持ちになったが、実際に使ってみると、この手間のかかる検索をむしろ無料で使える方が驚きだ。さらに「無料メンバーシップ」の回数では物足りない人向けに、月額1,500円で無制限にネーミング検索が利用できる「有料メンバーシップ」も用意されている。ネーミングやその商標登録などに興味がある人は、1度試してみることをおススメしたい。
池 紀彦
ゲーム&ガジェットライター
自ら触れて得た体感を形にする兼業ライター。ソフトウェア事業のディレクションと検証を行なう傍ら、パソコン雑誌編集部やAV機器メディア編集部を経て得た経験を活かし、パソコン、ガジェット、ゲーム、おもちゃなどのレビューを日夜各所で執筆。ThinkPadと程よい懐古物を好み、懐かしのゲームやパソコン、アニメ、漫画などをこよなく愛します。「やってみた」には定評あり。