難しい作業や問題に取り組んでいるとき、ある箇所に集中しすぎて煮詰まってしまい、その結果、誰でも気付くような重要なポイントを見落としてしまった人は多いことでしょう。逆に、いったん集中するのをやめて、ふと別のことを考えたときに問題を解決するひらめきに出合ったという人もいるはずです。
私たちは、目前にある課題をやり遂げるためには集中することが大事だと考えています。実際、課題が一つならば、気合いを入れて集中すれば、短時間で終わらせることもできるでしょう。しかし、時と場合によっては、立ち止まって違うことを考えた方が良いこともあるようです。
私たちは、目前にある課題をやり遂げるためには集中することが大事だと考えています。実際、課題が一つならば、気合いを入れて集中すれば、短時間で終わらせることもできるでしょう。しかし、時と場合によっては、立ち止まって違うことを考えた方が良いこともあるようです。
発端は、自動車免許の試験から
マサチューセッツ工科大学のポスドク研究者であるアレクサンドラ・デッカーは、運転免許試験で多肢選択式の問題を解いているときに、あることに気付きました。それは「正解の選択肢は常に最も長く、最も詳しく記述してある」ということでした(日本の運転免許試験にも当てはまるかはわかりません。デッカーはこのとき「質問に回答することだけに集中」し続けていたら、別の角度で問題を眺めて、この法則に気付くことはできなかったと述べています。
多くの人は、集中することで目標とする問題を絞り込み、解決策を見つけられると考えているはずです。しかしデッカーが気付いたのは、その集中をあえて切らせたときに、逆に物事を広く見渡せるようになり、本題とはあまり関係のない二次的な情報や、本来なら注意する必要がない別の情報を学習できる能力が発揮されるということでした。
どんなに努力をしても、私たちは集中力や注意力を常に最高の状態に保つことはできません。集中力の低下は脳に過負荷がかかっている証拠だと示唆する研究があります。これは、集中力を持続させるためのエネルギーのようなものが枯渇する状態になるということ。わかりやすくいえば電池切れの状態です。仕事にせよ勉強にせよ、あまり根を詰めすぎない方が最終的な効果は高まるというのが、世の中の常識といっても良いでしょう。
しかし別の理論では、そのエネルギー残量が減ったときだけでなく、作業内容が単調すぎたときにも、やはり集中力を失う可能性があると主張されています。
多くの人は、集中することで目標とする問題を絞り込み、解決策を見つけられると考えているはずです。しかしデッカーが気付いたのは、その集中をあえて切らせたときに、逆に物事を広く見渡せるようになり、本題とはあまり関係のない二次的な情報や、本来なら注意する必要がない別の情報を学習できる能力が発揮されるということでした。
どんなに努力をしても、私たちは集中力や注意力を常に最高の状態に保つことはできません。集中力の低下は脳に過負荷がかかっている証拠だと示唆する研究があります。これは、集中力を持続させるためのエネルギーのようなものが枯渇する状態になるということ。わかりやすくいえば電池切れの状態です。仕事にせよ勉強にせよ、あまり根を詰めすぎない方が最終的な効果は高まるというのが、世の中の常識といっても良いでしょう。
しかし別の理論では、そのエネルギー残量が減ったときだけでなく、作業内容が単調すぎたときにも、やはり集中力を失う可能性があると主張されています。
集中を解き放つ方が、場合によっては良いこともある
今回の研究では、集中力が落ちたときに、別の無関係な内容の学習が促進されることを調べています。したがって前提条件として、集中力の低下がそれを維持するためのエネルギーの枯渇によって起こるとは考えていません。そして、取り組むべき課題が単調すぎる場合に集中力が落ちる現象も、やはりエネルギー枯渇には当てはまらないのです。むしろ、主な課題が単調すぎたときに、その集中力が他の方向に向き、その視野角を広げるのだと考えられます。
デッカーら研究チームは、トロント大学の学部生53人の協力を得て実験を行いました。その実験内容は、画面の中央に文字または数字が表示され、その左右両側に“#”や“@”といった記号が表示される何枚ものスライドを用意し、学生にそれを次々に見せて、中央に表示されるのが文字ならばコンピューターの“F”キーを、数字なら“J”キーを押してもらうというものです。
それぞれの反応時間に基づいて、集中力がどのように変動したかを学生ごとに確認したところ、予想どおり、その集中力はいわゆる「ゾーン(集中力が極限に高まった状態)」に入るときもあれば、次第にゾーン圏外に出てしまったりもしていました。ところが、この集中力が途切れているときに、多くの学生は「あること」に気付いていたことがわかりました。
実はこのスライドには、いくつかのパターンが隠されていました。ある記号はある文字の横に表示される可能性が高く、別のある記号はある数字の傍らに現れる可能性が高いといったものです。そして学生の多くは、実験中にその法則の幾つかに気付いたのです。
実験後にデータを分析したところ、学生たちは集中力が低下したときに、その注意の範囲が広がり、表示される文字や数字にひも付いた記号を認識できるようになっていました。この追加の手がかりによって、画面上にあるもの全体に脳が集中するようになっていたとのことです。そして、最も多くの組み合わせパターンに気付いたのは、ゾーン圏外にいた時間が最も長かった学生でした。
デッカーはこの現象について「時には、少し集中力を失うぐらいが良いことなのかもしれないことを示唆している。しかし実際には、集中している時間と集中していない時間を切り替える方が、全体的には最善なやり方かもしれない」とTwitterに述べています。
デッカーら研究チームは、トロント大学の学部生53人の協力を得て実験を行いました。その実験内容は、画面の中央に文字または数字が表示され、その左右両側に“#”や“@”といった記号が表示される何枚ものスライドを用意し、学生にそれを次々に見せて、中央に表示されるのが文字ならばコンピューターの“F”キーを、数字なら“J”キーを押してもらうというものです。
それぞれの反応時間に基づいて、集中力がどのように変動したかを学生ごとに確認したところ、予想どおり、その集中力はいわゆる「ゾーン(集中力が極限に高まった状態)」に入るときもあれば、次第にゾーン圏外に出てしまったりもしていました。ところが、この集中力が途切れているときに、多くの学生は「あること」に気付いていたことがわかりました。
実はこのスライドには、いくつかのパターンが隠されていました。ある記号はある文字の横に表示される可能性が高く、別のある記号はある数字の傍らに現れる可能性が高いといったものです。そして学生の多くは、実験中にその法則の幾つかに気付いたのです。
実験後にデータを分析したところ、学生たちは集中力が低下したときに、その注意の範囲が広がり、表示される文字や数字にひも付いた記号を認識できるようになっていました。この追加の手がかりによって、画面上にあるもの全体に脳が集中するようになっていたとのことです。そして、最も多くの組み合わせパターンに気付いたのは、ゾーン圏外にいた時間が最も長かった学生でした。
デッカーはこの現象について「時には、少し集中力を失うぐらいが良いことなのかもしれないことを示唆している。しかし実際には、集中している時間と集中していない時間を切り替える方が、全体的には最善なやり方かもしれない」とTwitterに述べています。
Munenori Taniguchi
ライター。ガジェット全般、宇宙、科学、音楽、モータースポーツetc.、電気・ネットワーク技術者。
実績媒体:TechnoEdge、Gadget Gate、Engadget日本版、Autoblog日本版、Forbes JAPAN他
Twitter:@mu_taniguchi