「電車ではハンディファン、オフにして?」隣席から吹く風に賛否両論
ファンから惜しまれつつも9月末で幕を下ろす読売テレビの「情報ライブ ミヤネ屋」。放送終了へ向けたカウントダウンが刻々と進んでいく夏のある日、番組コメンテーターとして出演したタレント・コラムニストの小原ブラスさんによる、季節感を押さえたさすがの辛口コメントが賛否両論を呼んだ。
番組ではこのSNS投稿を「アリ?ナシ?」コーナーでフィーチャー。ブラスさん本人にスタジオで直撃したところ、ブラスさんは
「風ってストレスですよ。フーッて息を吹きかけられるのと一緒かも。電車で、ため息で『ハァ〜!』ってやって、広がったら嫌じゃないですか」
「ちょっかい出しているのと一緒かも。田舎のヤンキーやったら『なにガン飛ばしとんじゃ!』と同じレベル、『なに風飛ばしとんじゃ!』みたいな。気を遣っている感じで使ってほしい」
と、その発信の意図を解説していたのであった。
「風ってストレスですよ。フーッて息を吹きかけられるのと一緒かも。電車で、ため息で『ハァ〜!』ってやって、広がったら嫌じゃないですか」
「ちょっかい出しているのと一緒かも。田舎のヤンキーやったら『なにガン飛ばしとんじゃ!』と同じレベル、『なに風飛ばしとんじゃ!』みたいな。気を遣っている感じで使ってほしい」
と、その発信の意図を解説していたのであった。
タマキ、酷暑に負けて「ハンディファン持ち歩き勢」デビューを果たす
いやぁ、みんなイライラしてるのは今年の酷暑のせいでしょうかね……(笑)。実は筆者タマキ、これまではハンディファンに対して抵抗感があったのだが、この夏のあまりの酷暑ぶりに、もともと軟弱な美意識がとうとう敗北し、「ハンディファン持ち歩き勢」デビューを果たしてしまった。
タマキ、ハンディファンデビューしました
この夏はどこへ行くにも、その日のバッグ選びを「ハンディファンが入るかどうか、出し入れしやすいかどうか」で決め、雨や強風ではない限り、自宅を出てから最寄り駅までの道中も、電車を待つプラットフォームでも、歩いても止まっても死んだ魚の目で「ブ〜〜〜ン」と風に当たっていた。さすがに、若い女子たちのようにハンディファンを首や腰からぶら下げるところまでには至らなかったけれど……。
彼女たちがハンディファンをキラキラのストラップで盛ってファッションにまでしているのは、それだけ日常でハンディファンの登場回数が多いことの反映。女子の世界でカスタマイズのための「ケース」「ストラップ」がはやっているものとは、すなわち生活必需品なわけで、スマホや日傘、ペットボトル、リップなどと同列にハンディファンももはや「あって当たり前」「なかったら生きていけない」ものだということの証である。
で、そういうキラキラがはやるとすぐ「ケシカラン」「甘えだ」って言われるんだけど、甘えじゃないのよ。実際に命の危険があるくらい暑いんだもの。中高年の男性だって小学生諸君だって、「日傘を差しましょう」って言われるようになってやっと日傘がデフォルトになったでしょう? 精神論で我慢すると命の危険にさらされるから、クーラー嫌いな高齢者の皆さんも一日中クーラーつけてくださいね、ってNHKでも毎日、言ってたくらい。
気候変動には精神論で立ち向かったら自分が死ぬぞ……ってのは、コロナ以降の数年で人類が学習したことである。地球規模で人類を整理しようとやってくる疫病や寒波や熱波に対しては、我慢とか忍耐は自殺行為だ。かつて、スーツを暑いさなかにもきっちり着こなしていた英国紳士の間では「お洒落とは我慢である」なんてのが共通認識だったらしいけど、現代の気候変動下にあっては「我慢」は「死」に直結するので優先順位はだいぶ低い。おじちゃんは短パンTシャツ、おばちゃんはあっぱっぱ(緩めのワンピース)で命を守るのだ。それが21世紀のオシャレである。
彼女たちがハンディファンをキラキラのストラップで盛ってファッションにまでしているのは、それだけ日常でハンディファンの登場回数が多いことの反映。女子の世界でカスタマイズのための「ケース」「ストラップ」がはやっているものとは、すなわち生活必需品なわけで、スマホや日傘、ペットボトル、リップなどと同列にハンディファンももはや「あって当たり前」「なかったら生きていけない」ものだということの証である。
で、そういうキラキラがはやるとすぐ「ケシカラン」「甘えだ」って言われるんだけど、甘えじゃないのよ。実際に命の危険があるくらい暑いんだもの。中高年の男性だって小学生諸君だって、「日傘を差しましょう」って言われるようになってやっと日傘がデフォルトになったでしょう? 精神論で我慢すると命の危険にさらされるから、クーラー嫌いな高齢者の皆さんも一日中クーラーつけてくださいね、ってNHKでも毎日、言ってたくらい。
気候変動には精神論で立ち向かったら自分が死ぬぞ……ってのは、コロナ以降の数年で人類が学習したことである。地球規模で人類を整理しようとやってくる疫病や寒波や熱波に対しては、我慢とか忍耐は自殺行為だ。かつて、スーツを暑いさなかにもきっちり着こなしていた英国紳士の間では「お洒落とは我慢である」なんてのが共通認識だったらしいけど、現代の気候変動下にあっては「我慢」は「死」に直結するので優先順位はだいぶ低い。おじちゃんは短パンTシャツ、おばちゃんはあっぱっぱ(緩めのワンピース)で命を守るのだ。それが21世紀のオシャレである。
絶対来ると思ってた「ハンディファンの電車内お作法」
さて、周囲に「酷暑に負けてハンディファンデビューしてしまった」という話をしつつ、実は「これから電車内や人前でハンディファンをどう使うべきか、OK/NGのマナーやエチケット論が絶対に出てくる」と予言していたタマキ。ブラスさんの「あんたの汗を気化させたキモい風が……!」論争には、「キターーーーーーー!」と大喜びであった。
というのも、ハンディファンなるものが市民権を得たのはここ数年の話。コロナ前後の普及し始めた頃には「温暖化ゆえの災害レベルの熱波では、背に腹を替えられない」という意見もあれば、「自分専用の扇風機を持ち歩くなんてカッコ悪い、受け入れられない」との意見もあり、世代を超えた大ブレイクというよりは、10代、20代の若年層を中心とした流行として、ジワジワ伸びていった感じであった。
やはりその「風を振りまく」イメージがコロナ禍と相性が悪かったこともあるのだろうか、猛暑及び熱中症対策グッズでは、ハンディファンよりも日傘の方が先に市民権を得ていった。この『i4U』でも、ここ2、3年は日傘レビューがたくさん出ている。しかしながら日傘だけで「UVカット率99%、日焼け防止」「瞬時に日陰、体感マイナスナントカ℃」というのも限界がある。
もちろん日傘はデフォよ! そこにプラスするものとして、首の後ろを冷やす冷感リングや冷感タオル、冷感スプレーに加え、ハンディファンはホームセンターやドラッグストア、スーパーマーケットなどの店頭で売られるようになってきた。通学する子どもたちや高齢者などの熱中症リスクの高い人や、屋外もしくは外回りの活動・仕事をする人には、一般的な熱中症対策として浸透していった。
しかし、マダムや会社員の皆さん、そしてオシャレピーポーの方々には、ハンディファンはなかなか受け入れがたかったのも事実である。市場導入期にはキャラクターものなどのカジュアルでかわいらしいデザインが多かったため、子どもっぽ過ぎる、庶民的すぎる、オシャレじゃない、なんてのが飛びつかなかった人たちの本音だろう。だが、それ以上に熱中症アイテム全般を公的な場でどう取り入れるか、そもそも「大人として」持ってていいものなのかどうか、の共通ルールがないことで、お互いに顔を見合わせていたのではないか。
3年ほど前、まだ熱中症対策グッズ一般が子どもや高齢者、一部の中高生くらいの持ち物だった頃の話だ。オシャレジムで、同世代のマダムたちと「そろそろ高校生、大学生になる自分の子どもたちの恋愛事情」を話していたとき、有名大に通うモテ男子を持つセレブ母が、
「こないだ息子の新しい彼女と会ったんだけどっ! 顔の前でハンディファンを回したまま『はじめまして〜』ってやって来たのよっ!」
と、いたくお怒りであった。
聞いていたマダムたちは爆笑し、仲間内ではその後しばらく「息子がハンディファン持った彼女を連れて来たらどうする(笑)」というミームをもてあそんでいたし、当時は私も「ハンディファンとか、ないわ〜。そんなマナー知らずの小娘が来たら困るわ〜」と思っていたのだ。つまり3年前の夏の社会的空気では、有名大の女子大生が自分の彼氏の“お母さま”にごあいさつする場面でハンディファンを回したまましゃべるのは、とても失礼で非常識と受け取られた、ということである。
さて、それから3年経った今はどうなったのか?
というのも、ハンディファンなるものが市民権を得たのはここ数年の話。コロナ前後の普及し始めた頃には「温暖化ゆえの災害レベルの熱波では、背に腹を替えられない」という意見もあれば、「自分専用の扇風機を持ち歩くなんてカッコ悪い、受け入れられない」との意見もあり、世代を超えた大ブレイクというよりは、10代、20代の若年層を中心とした流行として、ジワジワ伸びていった感じであった。
やはりその「風を振りまく」イメージがコロナ禍と相性が悪かったこともあるのだろうか、猛暑及び熱中症対策グッズでは、ハンディファンよりも日傘の方が先に市民権を得ていった。この『i4U』でも、ここ2、3年は日傘レビューがたくさん出ている。しかしながら日傘だけで「UVカット率99%、日焼け防止」「瞬時に日陰、体感マイナスナントカ℃」というのも限界がある。
もちろん日傘はデフォよ! そこにプラスするものとして、首の後ろを冷やす冷感リングや冷感タオル、冷感スプレーに加え、ハンディファンはホームセンターやドラッグストア、スーパーマーケットなどの店頭で売られるようになってきた。通学する子どもたちや高齢者などの熱中症リスクの高い人や、屋外もしくは外回りの活動・仕事をする人には、一般的な熱中症対策として浸透していった。
しかし、マダムや会社員の皆さん、そしてオシャレピーポーの方々には、ハンディファンはなかなか受け入れがたかったのも事実である。市場導入期にはキャラクターものなどのカジュアルでかわいらしいデザインが多かったため、子どもっぽ過ぎる、庶民的すぎる、オシャレじゃない、なんてのが飛びつかなかった人たちの本音だろう。だが、それ以上に熱中症アイテム全般を公的な場でどう取り入れるか、そもそも「大人として」持ってていいものなのかどうか、の共通ルールがないことで、お互いに顔を見合わせていたのではないか。
3年ほど前、まだ熱中症対策グッズ一般が子どもや高齢者、一部の中高生くらいの持ち物だった頃の話だ。オシャレジムで、同世代のマダムたちと「そろそろ高校生、大学生になる自分の子どもたちの恋愛事情」を話していたとき、有名大に通うモテ男子を持つセレブ母が、
「こないだ息子の新しい彼女と会ったんだけどっ! 顔の前でハンディファンを回したまま『はじめまして〜』ってやって来たのよっ!」
と、いたくお怒りであった。
聞いていたマダムたちは爆笑し、仲間内ではその後しばらく「息子がハンディファン持った彼女を連れて来たらどうする(笑)」というミームをもてあそんでいたし、当時は私も「ハンディファンとか、ないわ〜。そんなマナー知らずの小娘が来たら困るわ〜」と思っていたのだ。つまり3年前の夏の社会的空気では、有名大の女子大生が自分の彼氏の“お母さま”にごあいさつする場面でハンディファンを回したまましゃべるのは、とても失礼で非常識と受け取られた、ということである。
さて、それから3年経った今はどうなったのか?

河崎 環
コラムニスト・立教大学社会学部兼任講師
1973年京都生まれ神奈川育ち。慶應義塾大学総合政策学部卒。子育て、政治経済、時事、カルチャーなど多岐に渡る分野で記事・コラム連載執筆を続ける。欧州2カ国(スイス、英国)での暮らしを経て帰国後、Webメディア、新聞雑誌、企業オウンドメディア、政府広報誌などに多数寄稿。ワイドショーなどのコメンテーターも務める。2022年よりTOKYO MX番組審議会委員。社会人女子と高校生男子の母。著書に『女子の生き様は顔に出る』(プレジデント社)など。













