「書を求めに、町へ出よう」──本と偶然出会えるアプリ『taknal』を2カ月間使ってみた!
大人になった今、本をすすめるのも、すすめられるのも苦手
人に本をオススメするのって勇気がいりませんか? 私の場合「これ、おもしろいよ。読んでみて」って無邪気にためらわず人に本を差し出せたのは22歳まででした。「私がおもしろい」という喜びだけで他人となんの疑いもなく繋がれた日々は、学生時代で終わったなーと思います。
なぜなら、社会人になってライフステージや考え方の異なるいろんな人と出会えば出会うほど、「本を読むって個人的なこと」と感じるようになったからです。それに、そもそも仕事で知り合った程度の人に「読んで」って実用書以外を差し出されたら、私だって一瞬ひるみます。
だって、そういったシーンにおける主役は「本」そのものではなく「本をすすめてくれた人」になりがちだからです。私はどうしても「人」に意識が行ってしまう。そんなに「人」のこと知りたいですか? 私はお腹いっぱいです。
でも本当は、本とは出会いたいんです。だから時々本屋に足を運んで、気になった本を手に取ります。Amazonやヨドバシドットコムだって便利で重宝していますが、あれらはバイネーム(指名)で買うときに輝くサービスなんですよね。本屋や図書館が持つランダム性が私は好きなんです。
ですから、コロナ禍によって一時的に本屋も図書館も閉まったとき、本との出会いのチャンネルは簡単に途絶えてしまうのだなあと、とてもショックを受けました。
前置きが長くなりました。
今回ご紹介するアプリ『taknal(タクナル)』は、こんな屈折した本好きである私に、新しい「本との出会い」の場をくれました。私が「さわってほしくないところ」には手を出さない、とても繊細で不思議なアプリです。
利用料は無料で、よくあるアフェリエイト的な収益も発生してませんし、このアプリが何から収益を得て運営しているのかは今のところ謎。ユーザーは、ただただ「この本いいよ!」という気持ちだけを携えて街を歩けばよいのです。taknalのおかげで私は本と出会えました。
なぜなら、社会人になってライフステージや考え方の異なるいろんな人と出会えば出会うほど、「本を読むって個人的なこと」と感じるようになったからです。それに、そもそも仕事で知り合った程度の人に「読んで」って実用書以外を差し出されたら、私だって一瞬ひるみます。
だって、そういったシーンにおける主役は「本」そのものではなく「本をすすめてくれた人」になりがちだからです。私はどうしても「人」に意識が行ってしまう。そんなに「人」のこと知りたいですか? 私はお腹いっぱいです。
でも本当は、本とは出会いたいんです。だから時々本屋に足を運んで、気になった本を手に取ります。Amazonやヨドバシドットコムだって便利で重宝していますが、あれらはバイネーム(指名)で買うときに輝くサービスなんですよね。本屋や図書館が持つランダム性が私は好きなんです。
ですから、コロナ禍によって一時的に本屋も図書館も閉まったとき、本との出会いのチャンネルは簡単に途絶えてしまうのだなあと、とてもショックを受けました。
前置きが長くなりました。
今回ご紹介するアプリ『taknal(タクナル)』は、こんな屈折した本好きである私に、新しい「本との出会い」の場をくれました。私が「さわってほしくないところ」には手を出さない、とても繊細で不思議なアプリです。
利用料は無料で、よくあるアフェリエイト的な収益も発生してませんし、このアプリが何から収益を得て運営しているのかは今のところ謎。ユーザーは、ただただ「この本いいよ!」という気持ちだけを携えて街を歩けばよいのです。taknalのおかげで私は本と出会えました。
たとえばこちらの『血も涙もある』。山田詠美さんが今年の2月に出した新刊です(新刊が出ていたのを私はこのアプリで知りました)。
「人」よりも「本」とすれ違うアプリ
taknalを実際に使ってみると、本当に「本」ありきのSNSだとわかります。
アプリをインストールしたもの同士がすれ違うと、そのユーザーがおすすめする本が私のタイムラインに表示されます。
アプリをインストールしたもの同士がすれ違うと、そのユーザーがおすすめする本が私のタイムラインに表示されます。
見知らぬ本の表紙が毎日たくさん現れます。ほんと、この世にはいったい何冊の本があるんだろう……(おそらく一度に表示される本の数は制限されています。たとえ200冊以上と出会ったとしても、ほどほどの数がタイムラインに上がってきます)。
もし、タイムライン上で読みたい本を見つけたら「ハート」をタップします。そうすると私の「読みたい本」として登録されます。
本の詳細を見ると、おすすめした人の感想を読むこともできます。
で、もしもその本が苦手なら「バツ」をつけることができますが、私はまだ誰の本にも「バツ」をつけていません。ほんと見飽きない。
ちなみに、私は主に本の表紙とあらすじだけを見ています。気が向いたら他のユーザーの書いた感想を読んで「へえー」と思います。このくらいの濃度で誰かと関わるのが好きなんです。
きっと私がおすすめした本も誰かのタイムラインに表示されているんでしょうね。ってことで、おすすめしたい本を登録するために「マイページ」を充実させましょう。
もし、タイムライン上で読みたい本を見つけたら「ハート」をタップします。そうすると私の「読みたい本」として登録されます。
本の詳細を見ると、おすすめした人の感想を読むこともできます。
で、もしもその本が苦手なら「バツ」をつけることができますが、私はまだ誰の本にも「バツ」をつけていません。ほんと見飽きない。
ちなみに、私は主に本の表紙とあらすじだけを見ています。気が向いたら他のユーザーの書いた感想を読んで「へえー」と思います。このくらいの濃度で誰かと関わるのが好きなんです。
きっと私がおすすめした本も誰かのタイムラインに表示されているんでしょうね。ってことで、おすすめしたい本を登録するために「マイページ」を充実させましょう。
ここで私が「いい!」と感動したのは、自己紹介の薄さです。
自己紹介文で登録できる文字数は最大24文字。潔い。そして、おすすめしたい本の感想は最大で100文字書けるんですよ。このあたりでtaknalの目指すことがよくわかります。「“私”のことはさておき、とにかく私の大好きな“本”を知ってくれ!」というわけです。めちゃくちゃ気が楽!
ということで、小学生の頃からの愛読書である『ムーミン谷の十一月』と『夏の庭』と『円地文子の源氏物語』、そして最近お気に入りの『犬と私』『王国』などをアプリ内で検索し、表紙を見つけたら「おすすめの本」として登録します(2021年6月現在、検索してもヒットしない本はいくつかありますが、気長にアップデートを待ちます)。
こうしてまずは、私の魂のベスト9を選んで登録しました(もっとたくさん登録することもできますが、ひとまず「めちゃくちゃ好き」な本を選びました)。
登録後は、アプリのことはひとまず忘れて生活しましょう。東京都内だと毎日数十〜数百の本とすれちがいます。そのうち、ささやかな「反応」が手元に届きます。
おすすめした側は、誰が「読みたい」と思ったかはわからないけれど、もらった「ハート」の数はわかるんです。私が選んだジュンパ・ラヒリのデビュー作『停電の夜に』はファンが多いようです。渋谷をたくさん歩いていた時期に「ハート」をたくさんもらったので、渋谷のこともちょっと好きになりました。見知らぬ渋谷のラヒリファンよ、ありがとう。
自己紹介文で登録できる文字数は最大24文字。潔い。そして、おすすめしたい本の感想は最大で100文字書けるんですよ。このあたりでtaknalの目指すことがよくわかります。「“私”のことはさておき、とにかく私の大好きな“本”を知ってくれ!」というわけです。めちゃくちゃ気が楽!
ということで、小学生の頃からの愛読書である『ムーミン谷の十一月』と『夏の庭』と『円地文子の源氏物語』、そして最近お気に入りの『犬と私』『王国』などをアプリ内で検索し、表紙を見つけたら「おすすめの本」として登録します(2021年6月現在、検索してもヒットしない本はいくつかありますが、気長にアップデートを待ちます)。
こうしてまずは、私の魂のベスト9を選んで登録しました(もっとたくさん登録することもできますが、ひとまず「めちゃくちゃ好き」な本を選びました)。
登録後は、アプリのことはひとまず忘れて生活しましょう。東京都内だと毎日数十〜数百の本とすれちがいます。そのうち、ささやかな「反応」が手元に届きます。
おすすめした側は、誰が「読みたい」と思ったかはわからないけれど、もらった「ハート」の数はわかるんです。私が選んだジュンパ・ラヒリのデビュー作『停電の夜に』はファンが多いようです。渋谷をたくさん歩いていた時期に「ハート」をたくさんもらったので、渋谷のこともちょっと好きになりました。見知らぬ渋谷のラヒリファンよ、ありがとう。
ほどほどの距離感で、誰かの本棚を覗ける
SNSによって人間関係の濃淡は異なります。taknalを使っていると「この人がおすすめしてくれたこの本、めっちゃいいなあ」と感動することが時々あるんです。そうなると私は「他にどんな本をおすすめしているんだろう?」と気になります。で、それは覗けます。
すれちがった人の名前の右側に本棚のマークがありますよね、これを押すと、その人の本棚が出てきます。『怠惰の美徳』もいいけれど『観光』も気になる。でも、自己紹介は前述した通りどんなに書いても24文字ですから、深掘りする対象は「本」のことだけなんです。とってもいい。
ということで、私が大人になってからやめてしまった「これ、おもしろいよ。読んでみて」って無邪気に本をすすめることと、すすめられることを、taknalでひそかに再開しています。
本をシンプルにおすすめしたいときに、「私はこんな本を読んでいる」なんて、本当にどうでもいいことなんです。
本屋さんに行って、書店員さんがあれこれ思案して並べたであろう本を眺めるのも最高に楽しいですし、SNSで積極的に発信する作家を追いかけるのも幸せ。それと同じくらい、taknalの“出会い頭”感も私にはとても楽しいものでした。きっとおそらく「おすすめする本」には地域性も出るでしょうし、マンネリを感じたらいつもと違う土地ですれ違いを待つのも楽しいかもしれません。「書を求めに、町へ出よう」です。
ということで、私が大人になってからやめてしまった「これ、おもしろいよ。読んでみて」って無邪気に本をすすめることと、すすめられることを、taknalでひそかに再開しています。
本をシンプルにおすすめしたいときに、「私はこんな本を読んでいる」なんて、本当にどうでもいいことなんです。
本屋さんに行って、書店員さんがあれこれ思案して並べたであろう本を眺めるのも最高に楽しいですし、SNSで積極的に発信する作家を追いかけるのも幸せ。それと同じくらい、taknalの“出会い頭”感も私にはとても楽しいものでした。きっとおそらく「おすすめする本」には地域性も出るでしょうし、マンネリを感じたらいつもと違う土地ですれ違いを待つのも楽しいかもしれません。「書を求めに、町へ出よう」です。

花森 リド
ライター・コラムニスト
主にゲーム、マンガ、書籍、映画、ガジェットに関する記事をよく書く。講談社「今日のおすすめ」、日経BP「日経トレンディネット」「日経クロステック(xTECH)」、「Engadget 日本版」、「映画秘宝」などで執筆。
X:@LidoHanamori













