画面を曲げることのできる、折りたたみスマートフォンの種類が増えている。2023年9月頭にベルリンで開催されたIT関連展示会「IFA 2023」(国際コンシューマ・エレクトロニクス展)の会場には、スマートフォンだけではなくノートPCも曲げてしまおうと、大型画面の折りたたみモデルも展示されていた。しかもただ折り曲げるだけではない。「魅せる」製品も登場していたのだ。
ハンドバッグのような折りたたみスマホ「HONOR V Purse」
折りたたみスマートフォンにチェーンをつけて持ち運ぶ、そんな新しい感覚の製品が中国のメーカー・HONORの「HONOR V Purse」だ。7.71インチのディスプレイを外向きに折りたたみ、本体にチェーンを取り付けると小型のハンドバッグのような外観になる。さらにたたんだディスプレイに布のテクスチャやアクセサリなどを表示させることで、あたかも本物のバッグのような外観になる。従来のスマートフォンは使わないときはポケットに入れたり片手で持ち運んだりするものだが、HONOR V Purseは人に見せるように持つスタイルが新しい。
これがスマホ?“魅せて”持ち運ぶ「HONOR V Purse」
IFA 2023で最も注目を集めたスマートフォンが、このHONOR V Purseだった。コンセプトモデルとして発表されたが、あまりにも反響が大きかったことからか、9月末には中国で販売されることになった。スペックはミドルハイレンジに抑え、価格は5999元(約12万円)と折りたたみモデルとしてはかなり安い。中国以外での販売も期待したいが、実験的な製品なので限定販売で終わってしまうかもしれない。
閉じたままでも表・裏の両面が使えるので、あえて「開かない折りたたみスマホ」として使うのも面白そうだ。
閉じたままでも表・裏の両面が使えるので、あえて「開かない折りたたみスマホ」として使うのも面白そうだ。
開けば7.71インチ画面となる
ちなみに中国では、他の折りたたみスマートフォン、例えばサムスンの「Galaxy Z Fold5」などに取り付けるチェーンも発売されたという。HONOR V Purseは折りたたみスマートフォンの新しい使い方を提唱したのだ。
折りたたみスマホ+チェーンという使い方が生み出された
ノートPCも曲げる時代へ
実はスマートフォンだけではなく、ノートPCも画面が折りたためるモデルが出ていることをご存じだろうか? レノボやASUSに続き、この9月には韓国のLG Electronicsが海外で「LG gram Fold」を発表している。同製品は広げると17インチ。ノートPCの画面としては大きいが、ディスプレイを製造するメーカーは「たためる大型パネル」の開発にしのぎを削っているのだ。
TCLの折りたためるディスプレイ
中国の家電メーカー・TCLが展示していたのは、17インチサイズのノートPC向け折りたたみディスプレイだ。TCLの子会社であるCSOTが開発したもので、ノートPCメーカー各社がこのディスプレイを採用すれば折りたためるノートPCが出来上がるわけである。TCLの折りたたみパネルは17インチ、1600×1200ピクセル、リフレッシュレート90Hzというもので、ビジネス用途であれば十分カバーできる。シャープも採用するIGZO方式により、なめらかで美しい表示が可能で、消費電力も少ない。
発色がよく低消費電力のIGZOパネル
とはいえ、まだまだノートPC向け折りたたみディスプレイは開発途上だ。TCLの製品も折りたたんだときにヒンジ部分の隙間が目立つ。現在市販されている折りたたみノートPCも、隙間なしで閉じることのできる製品はレノボの「ThinkPad X1 Fold(第二世代)」など、製品数は少ない。折りたたみスマートフォンもいまや隙間なしが当たり前となっただけに、折りたたみノートPCのディスプレイはまだまだ進化が必要だ。TCLの担当者も「まだ開発中の段階で、製品向けになるにはまだ1年くらいかかる」とのこと。来年の今頃は日本でも折りたたみノートPCの種類が増えているかもしれない。
ヒンジ部分にはまだ隙間がある
山根 康宏
香港在住携帯研究家
スマホとSIMを求めて世界各国を取材中。海外、特に中国の通信事情に精通している。大手メディアへの執筆も多数。海外スマホ・ケータイを1800台所有するコレクターでもある。