「御手洗家、炎上する」
御手洗家、炎上する
「御手洗家、炎上する」は、藤沢もやしの同名マンガを原作としたサスペンスドラマ。
代々、病院を経営をする裕福な一家・御手洗家。ある日その邸宅が全焼する火災が起こる。13年後、御手洗家では美しく、凄みのある御手洗家の後妻・真希子が、家事代行業の村田杏子を迎え入れていた。家政婦として御手洗家に潜入した杏子には、ある目的があった―。
裕福な母親と貧しいシングルマザーの境遇が、火災をきっかけに入れ替わる。毎話驚きの展開や、復讐劇ならではのハラハラ感があり、あっという間に見終えてしまう。
本作の大きな魅力は真希子を演じる鈴木京香のヴィランっぷり。目的のために手段を選ばない悪女の演技を堪能できる。
カリスマ読者モデル・御手洗真希子のSNSの活用ぶりや凋落するまで、そして凋落してからの流れはとてもリアルだ。承認欲求の強い真希子がSNSの間口の広さを利用して強い発信力を手に入れたまではいいが、ひとつ間違うとその力は自分を燃やし尽くす炎になる……リアルな世界でも何度も目にした光景だ。
本作の大まかな流れはオーソドックスな復讐劇だが、SNSやインフルエンサーといった要素が絶妙なリアリティになり、物語を進める力になっているのが面白い。
杏子を演じる永野芽郁もいい。終始かわいく、正義感に燃える男気あふれるヒロイン……に見えて、初回から「え??」と思うような裏の顔が明かされる。
そして、主演2人だけでなく、このドラマはキャラクター全員が一筋縄ではいかないのだ。もっというと、登場人物全員が、どこかおかしい。
それぞれの本当の姿は薄皮を1枚ずつめくるように明かされていき、それが二転三転する展開と意外な驚きを生む。ジェットコースターのような物語だが、復讐だけでなく、皆が少しずつ変化し、成長していく過程も見ることができ、ラストは明るい。復讐譚(ふくしゅうたん)ではあるけれど、あと味が悪くないのもいい。
代々、病院を経営をする裕福な一家・御手洗家。ある日その邸宅が全焼する火災が起こる。13年後、御手洗家では美しく、凄みのある御手洗家の後妻・真希子が、家事代行業の村田杏子を迎え入れていた。家政婦として御手洗家に潜入した杏子には、ある目的があった―。
裕福な母親と貧しいシングルマザーの境遇が、火災をきっかけに入れ替わる。毎話驚きの展開や、復讐劇ならではのハラハラ感があり、あっという間に見終えてしまう。
本作の大きな魅力は真希子を演じる鈴木京香のヴィランっぷり。目的のために手段を選ばない悪女の演技を堪能できる。
カリスマ読者モデル・御手洗真希子のSNSの活用ぶりや凋落するまで、そして凋落してからの流れはとてもリアルだ。承認欲求の強い真希子がSNSの間口の広さを利用して強い発信力を手に入れたまではいいが、ひとつ間違うとその力は自分を燃やし尽くす炎になる……リアルな世界でも何度も目にした光景だ。
本作の大まかな流れはオーソドックスな復讐劇だが、SNSやインフルエンサーといった要素が絶妙なリアリティになり、物語を進める力になっているのが面白い。
杏子を演じる永野芽郁もいい。終始かわいく、正義感に燃える男気あふれるヒロイン……に見えて、初回から「え??」と思うような裏の顔が明かされる。
そして、主演2人だけでなく、このドラマはキャラクター全員が一筋縄ではいかないのだ。もっというと、登場人物全員が、どこかおかしい。
それぞれの本当の姿は薄皮を1枚ずつめくるように明かされていき、それが二転三転する展開と意外な驚きを生む。ジェットコースターのような物語だが、復讐だけでなく、皆が少しずつ変化し、成長していく過程も見ることができ、ラストは明るい。復讐譚(ふくしゅうたん)ではあるけれど、あと味が悪くないのもいい。
「赤ずきん、旅の途中で死体と出会う」
赤ずきん、旅の途中で死体と出会う
「赤ずきん、旅の途中で死体と出会う」は、青柳碧人による同名のミステリ小説の第1章「ガラスの靴の共犯者」を実写化したもの。
ある日、赤ずきんは森でシンデレラという少女に出会う。義母と義姉にいじめられ、お城の舞踏会に行けないと聞いた赤ずきんは、魔法使いの力を借りてシンデレラを舞踏会へ連れて行く。しかし、その道すがら、かぼちゃの馬車が人を轢いてしまい……。
ただの童話ではなく、「赤ずきん」と「シンデレラ」のクロスオーバー、しかもみんなが「いい子ちゃん」じゃない設定が最高!
福田監督が、多くの人に愛された童話を自身の世界観で再構築し、ハチャメチャさに輪をかけて笑わせてくれる。ムロツヨシと佐藤二朗が共演している映画にハズレはなく、「アドリブかな?」とニヤニヤしたくなる台詞のオンパレードなのも楽しい。
特筆すべきは、女優陣の豪華さだ。
朝ドラヒロインとしても活躍する橋本環奈の赤ずきん、新木優子のシンデレラをはじめ、夏菜、桐谷美玲、山本美月に真矢みきまで、どこを見ても美女ばかり。しかも、童話ならではのドレスやヘアスタイルがギャグにもコスプレにもなっておらず、本当に美しい。眼福とはまさにこのこと……。
ブラックユーモアに少しのミステリーで気楽に楽しめる1本。「シンデレラフィット」がこんな解釈なのも面白い。
ある日、赤ずきんは森でシンデレラという少女に出会う。義母と義姉にいじめられ、お城の舞踏会に行けないと聞いた赤ずきんは、魔法使いの力を借りてシンデレラを舞踏会へ連れて行く。しかし、その道すがら、かぼちゃの馬車が人を轢いてしまい……。
ただの童話ではなく、「赤ずきん」と「シンデレラ」のクロスオーバー、しかもみんなが「いい子ちゃん」じゃない設定が最高!
福田監督が、多くの人に愛された童話を自身の世界観で再構築し、ハチャメチャさに輪をかけて笑わせてくれる。ムロツヨシと佐藤二朗が共演している映画にハズレはなく、「アドリブかな?」とニヤニヤしたくなる台詞のオンパレードなのも楽しい。
特筆すべきは、女優陣の豪華さだ。
朝ドラヒロインとしても活躍する橋本環奈の赤ずきん、新木優子のシンデレラをはじめ、夏菜、桐谷美玲、山本美月に真矢みきまで、どこを見ても美女ばかり。しかも、童話ならではのドレスやヘアスタイルがギャグにもコスプレにもなっておらず、本当に美しい。眼福とはまさにこのこと……。
ブラックユーモアに少しのミステリーで気楽に楽しめる1本。「シンデレラフィット」がこんな解釈なのも面白い。
「0.5の男」
0.5の男
雅治、40歳ひきこもり。古くなった実家を妹夫婦も同居できるようにと2世帯住宅に建て替える計画が持ち上がる。両親の1世帯、妹家族の1世帯に加え、雅治にも、「0.5世帯」の部屋が用意されていた。2.5世帯暮らしによって外の世界へ放り出された男が少しずつ変わってゆく。「0.5の男」は、笑って泣ける新時代の家族ドラマだ。
おそらく10年近く、実家の1部屋に引きこもっていたと思われる40歳の雅治が、「家族以外と話す」「昼に外に出る」といった具合で、1話毎にできることを増やしていく5話構成になっている。
主演の松田龍平がすばらしい。ちょっと猫背でダルそうな歩き方、訥々(とつとつ)とした話し方、仕草や表情のひとつひとつが主人公・雅治そのものすぎて、「実在の人物を覗き見ているのでは?」と背筋が寒くなるほどだ。
雅治が起きてきてテレビをつける第1話冒頭、カメラ固定のまま延々と、ゆうに数分はある長回しが続く。ここで一気にドラマに引き込まれ、もう止められない。
両親と雅治だけの家が2.5世帯住宅に建て替えられ、妹一家が引っ越してくる。生活をともにする人が増えれば、揉めごとも増える。ハワイと北欧がチグハグに並べられた玄関や、思春期の姪にあからさまに不審がられる雅治、保育園に行きたがらない息子を巡って朝から響き渡る怒鳴り声……ケンカの種は家のいたるところにあり、そのどれもがあるあるすぎて共感性羞恥がすごい。
ここから家族のあり方がちょっとずつ変化していく、その過程の描き方がいい。甥の蓮にせがまれ、雅治が長い手足で踊る「バグレンジャー」ダンスに癒やされ、恵麻の歌う「紅葉」に浄化され、何気なく同じ食卓についた雅治から目が離せない両親の様子に泣かされる。制作には1年かかったとのことで、家族の変化とともに季節の移ろいも感じられるのがいい。
5話のエンディングで明かされる、「これ、どうやって撮ってるんだ……?」と不思議に思っていた2.5世帯住宅のセットの秘密も必見だ。
******
忙しい時、疲れたときは、なにかに思い切り没頭することが、思いのほかストレスを解消してくれることもある。しんみりと物思いにふけりがちな秋の夜に、好きなフードやドリンクを手に、映像の世界に没頭すれば、気分がリセットされ、新たな活力が湧いてくるかも。
おそらく10年近く、実家の1部屋に引きこもっていたと思われる40歳の雅治が、「家族以外と話す」「昼に外に出る」といった具合で、1話毎にできることを増やしていく5話構成になっている。
主演の松田龍平がすばらしい。ちょっと猫背でダルそうな歩き方、訥々(とつとつ)とした話し方、仕草や表情のひとつひとつが主人公・雅治そのものすぎて、「実在の人物を覗き見ているのでは?」と背筋が寒くなるほどだ。
雅治が起きてきてテレビをつける第1話冒頭、カメラ固定のまま延々と、ゆうに数分はある長回しが続く。ここで一気にドラマに引き込まれ、もう止められない。
両親と雅治だけの家が2.5世帯住宅に建て替えられ、妹一家が引っ越してくる。生活をともにする人が増えれば、揉めごとも増える。ハワイと北欧がチグハグに並べられた玄関や、思春期の姪にあからさまに不審がられる雅治、保育園に行きたがらない息子を巡って朝から響き渡る怒鳴り声……ケンカの種は家のいたるところにあり、そのどれもがあるあるすぎて共感性羞恥がすごい。
ここから家族のあり方がちょっとずつ変化していく、その過程の描き方がいい。甥の蓮にせがまれ、雅治が長い手足で踊る「バグレンジャー」ダンスに癒やされ、恵麻の歌う「紅葉」に浄化され、何気なく同じ食卓についた雅治から目が離せない両親の様子に泣かされる。制作には1年かかったとのことで、家族の変化とともに季節の移ろいも感じられるのがいい。
5話のエンディングで明かされる、「これ、どうやって撮ってるんだ……?」と不思議に思っていた2.5世帯住宅のセットの秘密も必見だ。
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忙しい時、疲れたときは、なにかに思い切り没頭することが、思いのほかストレスを解消してくれることもある。しんみりと物思いにふけりがちな秋の夜に、好きなフードやドリンクを手に、映像の世界に没頭すれば、気分がリセットされ、新たな活力が湧いてくるかも。
中野 亜希
ライター・コラムニスト
大学卒業後、ブログをきっかけにライターに。会社員として勤務する傍らブックレビューや美容コラム、各種ガジェットに関する記事執筆は2000本以上。趣味は読書、料理、美容、写真撮影など。
X:@752019