新年度の忙しさも過ぎ、ようやく一息ついている人も多いのではないでしょうか。今年のGWは連続して取れる休みがやや少なめということもあり、どこかに出かけるよりも家でのんびりするのも悪くなさそうです。
そんなときのお供はやはり、動画配信サービスで観るドラマや映画。仕事のことを忘れて、ドラマや映画を一気見しませんか? 没入感があって、現実逃避できて、気分をリフレッシュしてくれる……。そんな作品を選んでみました。
そんなときのお供はやはり、動画配信サービスで観るドラマや映画。仕事のことを忘れて、ドラマや映画を一気見しませんか? 没入感があって、現実逃避できて、気分をリフレッシュしてくれる……。そんな作品を選んでみました。
三体
https://www.netflix.com/jp/title/81024821
原作は三部作の長編小説『三体』。ドラマ化が大きな話題となった一方で、原作のボリュームが大きく、難しそうなイメージに腰が引けてしまっている人もいるかもしれません。しかしNetflix版のドラマには「そうきたか!」という大胆な脚色・改変が施されており、未読の人が楽しく見ることはもちろん、既読の人も新鮮な気分で味わうことができます。
原作の脚色・改変は、ともすればネガティブに受け取られがちですが、本作においては面白くも難解な原作の魅力を伝えることに大きく寄与していると感じます。
大きな変更は舞台が中国からイギリスに移り、登場人物がオックスフォード大学出身の優秀な科学者集団“オックスフォード・ファイブ”として再構成されていること。
1人のキャラクターが原作の複数人の役割を兼ねていたり、逆に原作では1人が担当している役割を複数名で分担していたり。文庫化された原作には、登場人物リストがついてくるほどでしたが、さまざまな人種のオックスフォード・ファイブとして再構成されたことで、人物の見分けが付きやすくなったのが個人的には嬉しいポイント。「このキャラは原作のあの人のポジションかな?あのキャラはドラマ版でやるなら誰だ?」など、予想しながら見るのも楽しいです。
キャラクターの役割を再分配したことにより、エピソードの見せ方が整理され、シーズン1の原作にあたる『三体I』に加え『三体II』『三体III』の展開も盛り込まれています。
原作を読んだ方は、シーズン1の各話サブタイトルに「2作目、3作目のあれこれをもう見られるの?」という驚きを感じるかもしれません。
第1話 カウントダウン
第2話 紅岸
第3話 世界の破壊者
第4話 我が主よ
第5話 審判の日
第6話 星群計画
第7話 前進あるのみ
第8話 面壁者
大胆な脚色は行われているものの、血塗られた文化大革命から始まる主人公の葉文潔(イエ・ウェンジエ)の人生を背景としながら地球外文明との接触を描くという物語の根幹は変わりません。
『三体』は中国のエンタメ会社テンセントによるドラマ版もすでに配信されていますが、文化大革命のシーンはかなり縮小されているとか。しかし、この目を覆いたくなるような描写なしに、本作の人間ドラマの肝心なところが伝わることはないと思うのです。ぜひ、冒頭でガツンとやられてほしいと思います。
中国の近代史や、才能きらめく若き科学者たちの青春、現実そのもののように進化したゲームの世界、監視社会、神とは?宗教とは?……さまざまな要素が複雑に絡む原作を尊重しつつ、物語の世界にすっと入っていけるような作りになっています。改変が改悪にならない珍しい例ではないでしょうか。
原作は三部作の長編小説『三体』。ドラマ化が大きな話題となった一方で、原作のボリュームが大きく、難しそうなイメージに腰が引けてしまっている人もいるかもしれません。しかしNetflix版のドラマには「そうきたか!」という大胆な脚色・改変が施されており、未読の人が楽しく見ることはもちろん、既読の人も新鮮な気分で味わうことができます。
原作の脚色・改変は、ともすればネガティブに受け取られがちですが、本作においては面白くも難解な原作の魅力を伝えることに大きく寄与していると感じます。
大きな変更は舞台が中国からイギリスに移り、登場人物がオックスフォード大学出身の優秀な科学者集団“オックスフォード・ファイブ”として再構成されていること。
1人のキャラクターが原作の複数人の役割を兼ねていたり、逆に原作では1人が担当している役割を複数名で分担していたり。文庫化された原作には、登場人物リストがついてくるほどでしたが、さまざまな人種のオックスフォード・ファイブとして再構成されたことで、人物の見分けが付きやすくなったのが個人的には嬉しいポイント。「このキャラは原作のあの人のポジションかな?あのキャラはドラマ版でやるなら誰だ?」など、予想しながら見るのも楽しいです。
キャラクターの役割を再分配したことにより、エピソードの見せ方が整理され、シーズン1の原作にあたる『三体I』に加え『三体II』『三体III』の展開も盛り込まれています。
原作を読んだ方は、シーズン1の各話サブタイトルに「2作目、3作目のあれこれをもう見られるの?」という驚きを感じるかもしれません。
第1話 カウントダウン
第2話 紅岸
第3話 世界の破壊者
第4話 我が主よ
第5話 審判の日
第6話 星群計画
第7話 前進あるのみ
第8話 面壁者
大胆な脚色は行われているものの、血塗られた文化大革命から始まる主人公の葉文潔(イエ・ウェンジエ)の人生を背景としながら地球外文明との接触を描くという物語の根幹は変わりません。
『三体』は中国のエンタメ会社テンセントによるドラマ版もすでに配信されていますが、文化大革命のシーンはかなり縮小されているとか。しかし、この目を覆いたくなるような描写なしに、本作の人間ドラマの肝心なところが伝わることはないと思うのです。ぜひ、冒頭でガツンとやられてほしいと思います。
中国の近代史や、才能きらめく若き科学者たちの青春、現実そのもののように進化したゲームの世界、監視社会、神とは?宗教とは?……さまざまな要素が複雑に絡む原作を尊重しつつ、物語の世界にすっと入っていけるような作りになっています。改変が改悪にならない珍しい例ではないでしょうか。
YOU 君がすべて
https://www.netflix.com/jp/title/80211991
キャロライン・ケプネスの同名ベストセラー小説を原作としたドラマ『YOU -君がすべて-』。
主人公は本を愛する青年、ジョー・ゴールドバーグ。ニューヨークの書店の店長を務め、同僚とも親しく、好きな本に囲まれて充実の日々を送っています。
しかし、それは彼の表の顔に過ぎません。ジョーは愛のためなら手段を選ばない男。好意を抱いた女性に激しい執着を見せる、ストーカー気質の持ち主なのです。
ある日、ジョーは書店の客、大学院生のベックに一目惚れします。
本の代金をカードで払ったベックに「現金で払うこともできたはず。彼女も自分に好意を持って、さり気なく名前を知らせてくれているのでは?」と妄想します。冒頭の数分でこの「ストーカーの理屈」に触れた私は、思わず「キモっ」と声が出てしまいました。
ジョーはベックの名前を手がかりにネットストーキングで彼女の個人情報や生活圏を洗い出し、尾行や不法侵入など、数々のストーカー行為を重ね、彼女との距離を縮めていきます。その裏では恋愛成就に邪魔な人間を狡猾に排除することも朝飯前です。
イケメンと呼んで差し支えないジョーの顔立ちと、この湿度の高い内面と、どこか貧弱な体とのアンバランスさが不気味。「イケメン」とも、「なんかキモい」と言われることもありそうなこの雰囲気が何ともリアルです。
しかし、ジョーは単なるヤバいヤツなのか?といえば違います。高度なストーキング術も、真面目で頭が良く、ロジカルに考えることができてこそ。本業の書店員としても有能です。人当たりが良く、きちんとしていて子供に優しい一面もあり、ストーキングの最中でさえ、通りすがりのお年寄りを助けてあげることも。ベックに偶然を装って接近できるチャンスをうかがい続けていても、いざとなればがっつくこともなく、自然な態度で、決して前のめりにならない自制心も持ち合わせています。
「ヤバいヤツ」と「好青年」をシームレスに行き来するジョーですが、なぜか憎めないんです。
彼の心の声であるモノローグはとても饒舌。ダサくて、キモくて、いかにもモテなそうな心の声を聞くうちに、「悪いやつじゃないし……」という気分になるから不思議です。
シーズン1では、ジョーがベックに一目惚れし、彼女を振り向かせるために奮闘します。
ジョーもたいがいですが、ターゲットにされたベックも決してクリーンな人間ではありません。それがこの物語を思わぬ結末に押し流していくのです。
キャロライン・ケプネスの同名ベストセラー小説を原作としたドラマ『YOU -君がすべて-』。
主人公は本を愛する青年、ジョー・ゴールドバーグ。ニューヨークの書店の店長を務め、同僚とも親しく、好きな本に囲まれて充実の日々を送っています。
しかし、それは彼の表の顔に過ぎません。ジョーは愛のためなら手段を選ばない男。好意を抱いた女性に激しい執着を見せる、ストーカー気質の持ち主なのです。
ある日、ジョーは書店の客、大学院生のベックに一目惚れします。
本の代金をカードで払ったベックに「現金で払うこともできたはず。彼女も自分に好意を持って、さり気なく名前を知らせてくれているのでは?」と妄想します。冒頭の数分でこの「ストーカーの理屈」に触れた私は、思わず「キモっ」と声が出てしまいました。
ジョーはベックの名前を手がかりにネットストーキングで彼女の個人情報や生活圏を洗い出し、尾行や不法侵入など、数々のストーカー行為を重ね、彼女との距離を縮めていきます。その裏では恋愛成就に邪魔な人間を狡猾に排除することも朝飯前です。
イケメンと呼んで差し支えないジョーの顔立ちと、この湿度の高い内面と、どこか貧弱な体とのアンバランスさが不気味。「イケメン」とも、「なんかキモい」と言われることもありそうなこの雰囲気が何ともリアルです。
しかし、ジョーは単なるヤバいヤツなのか?といえば違います。高度なストーキング術も、真面目で頭が良く、ロジカルに考えることができてこそ。本業の書店員としても有能です。人当たりが良く、きちんとしていて子供に優しい一面もあり、ストーキングの最中でさえ、通りすがりのお年寄りを助けてあげることも。ベックに偶然を装って接近できるチャンスをうかがい続けていても、いざとなればがっつくこともなく、自然な態度で、決して前のめりにならない自制心も持ち合わせています。
「ヤバいヤツ」と「好青年」をシームレスに行き来するジョーですが、なぜか憎めないんです。
彼の心の声であるモノローグはとても饒舌。ダサくて、キモくて、いかにもモテなそうな心の声を聞くうちに、「悪いやつじゃないし……」という気分になるから不思議です。
シーズン1では、ジョーがベックに一目惚れし、彼女を振り向かせるために奮闘します。
ジョーもたいがいですが、ターゲットにされたベックも決してクリーンな人間ではありません。それがこの物語を思わぬ結末に押し流していくのです。
中野 亜希
ライター・コラムニスト
大学卒業後、ブログをきっかけにライターに。会社員として勤務する傍らブックレビューや美容コラム、各種ガジェットに関する記事執筆は2000本以上。趣味は読書、料理、美容、写真撮影など。
X:@752019