https://www.netflix.com/jp/title/81478985

上映時間は2時間17分。ちょっと長いな、と思ったのもつかの間。面白くて一気に見てしまいました。

キル・ボクスンは、その道では一目置かれる殺し屋であると同時に、思春期の娘に手を焼くシングルマザーの顔も持っています。

彼女は暗殺を請け負う組織に身を置いているものの、娘のジェヨンにはその生業を一切悟らせないように気を配っています。しかし、遺伝なのかなんなのか、ジェヨンは時折危うい一面を見せるように。娘のことを考え、ボクスンは殺しの世界からは身をひこうと考えます。

ボクスンの所属する組織は、暗殺のことを作品と呼び、未成年は殺さない、会社の請け負った暗殺は絶対に遂行することを掟としています。

掟を破ればどうなるか、それとなく示される中、しかしボクスンは暗殺を失敗に見せかけて遂行を拒みます。娘との生活を守るため、ケジメをつけるために戦いに挑むボクスンは……。

ボクスンはフリーランスではなく、組織に属しており、その組織は元々バラバラだった殺し屋業界を1つにまとめたもの……という設定が秀逸。

組織で動くメリットはたくさんあるけれど、抜けるのも厄介。悪事に手を染め、寄せ集めの一枚岩ではない組織であれば、なおさらです。殺し屋でも母親でもなくとも、社会の一員として、このあたりに共感できる人もいるのでは？ 殺し屋としては有能なボクスンが、娘に対してはオロオロしたり感情的になったり、ごく普通の母の顔になるギャップにもぐっときます。

「殺人よりも子育ての方が大変」……。そりゃ「終わらせる」より「続ける」「育てる」ほうが大変なのはそうなんです。なんとなくいい話っぽく着地してこの話は終わりますが、続編がありそうな雰囲気にも期待したくなる1本です。

https://www.netflix.com/jp/title/81739766

怒濤（どとう）の伏線回収を楽しみたいならこの作品。

冒頭の約30分は、郊外に住む平凡な女性の生活が延々と描かれます。「あるある」とうなずきたくなるリアルな会話が楽しいパートです。しかし、このさりげない日常の中に怒濤の伏線が仕込まれているのです。あれはそういう意味か！ こことここがつながるのか！ 物語を追うごとに、膝を打つシーンが出てきます。Netflixオリジナルではなく、地上波で放映されていた本作ですが、何度繰り返し見ても破綻のない作りにも驚きます。

実家で両親と妹とともに暮らす麻美。勤務先の市役所の窓口業務で市民に怒られてはストレスをため、夜は幼なじみの夏希、美穂の3人でご飯やカラオケを楽しむ平凡な日々を過ごしていましたが、ある夜、交通事故であっけなく死んでしまいます。死後の世界で宣告された来世は人間ではありませんでした。別の人間に生まれ変わることはできないけれど、同じ人生をやり直して徳を積めば、次は人間に生まれ変わる…かも？ かくして麻美の人生2周目が始まります 。

33歳の記憶を持ったまま、生まれた瞬間から人生をやり直すチャンスを得た麻美。徳を積むためとはいえ、さぞ退屈だろうと思いきや、1周目の人生の中で大切に思っている行動を、それ以降も繰り返しているのが印象的です。たとえばそれは子供の頃のシール交換や、放課後の「ドラマ倶楽部」。誰でもやっていて、誰とでも同じことができそうだけど、麻美にとっては「親友たちとそれをする」ことが人生の中で外せないポイントなのでしょう。別の友達と別の遊びをするという選択肢もあるはずなのに。

とはいえ、希望する生命（つまり人間）に生まれ変わるには、今生をよく生きて徳を積む、つまりライフをブラッシュアップする必要があるわけです。周囲の人へのちょっとした言動や勉強、仕事といった日常生活で、麻美は「徳を積む」ことを常に意識しています。

そのため、1周目の人生と同じ親友たちと過ごすことを望んではいても、バタフライエフェクト的に疎遠になってしまう人もいれば、1周めでは関わらなかった人たちとの親交が深まることも。そしてその全てが、物語のあちこちで意外な形で作用する面白さが本作の魅力です。

話が進むごとに「ブラッシュアップライフ」というタイトルが本当は何を指すのか、あなたもきっと気づくはず。

このドラマを見ると、友達とご飯を食べてカラオケに行きたくなります。GWにぜひ。

https://www.netflix.com/jp/title/81465101

『忍びの家 House of Ninjas』は、タイトル通り、世を忍ぶ仮の姿で現代を生きている忍者一家の物語。

服部半蔵の子孫である「俵家」は日本で唯一の忍びの末裔（まつえい）で、代々国家権力の極秘任務（要は汚れ仕事）を請け負ってきました。しかし、6年前の任務中に長男・岳を亡くして以来、家族それぞれが喪失感や罪悪感を抱え、一家は暗い雰囲気に包まれています。

父・壮一が忍びの任務を拒み、営む酒蔵は火の車。母・陽子は忍びのスキルを活用した万引きで赤字の家計をやりくりしており、大学生の長女・凪は、美術館から美術品を盗んではこっそりSNSに上げ、また返すという愉快犯です。祖母・タキは家を守っているものの、忍びとしては隠居の身。小学生の末っ子・陸は、そもそも自分の家族が忍びの一族であることを知りません。

そして、主人公である次男の晴は、自分が見逃した敵に兄を殺されたことで自分を責め続け、今も悪夢に悩まされています。任務は拒むけど、父の酒蔵を継ぐ気もなく、自動販売機の補充員をして暮らしています。

そんな晴にある意図をもって近づいてきたのが記者の可憐。晴と可憐はある殺人事件の真相を追ううちにカルト集団にたどり着き……。

「もしも今でも、現代日本に”忍び”が潜んでいるとしたら」。この「もしも」のふくらませ方がうまいのです。

忍びの生活には数々の縛りがあります。飲酒も肉食もNGで、恋愛も制限されています。現代を生きる忍者にとって、そのルールを守りながら生きるのは難しいのですが、過去の痛手により、主人公の晴がその掟をほぼ無視しているという設定なのがポイント。牛丼屋で可憐と出会い、そこからストーリーが展開していくわけですから。

また、海外への配信も視野に入れたドラマだけあって、現代の話でありながら、家業が酒蔵だったり、古い日本家屋に秘密の部屋があったり、海外でウケそうな「ニッポン」の描写もイイ感じです。

シンプルでわかりやすいストーリーに、忍びのルールや家族それぞれの思い、葛藤、また忍びとしての制約があるゆえに盛り上がる恋愛パートなどがバランスよくちりばめられていて、つい引き込まれてしまいます。

晴の苦悩や、あるじに従わざるをえない忍びとしての宿命など、終始暗い雰囲気の中に女性陣の魅力が光るのもいい。男性キャラの数倍魅力的に描かれていると感じます。生き馬の目を抜く忍びの世界の女性陣、皆ただものではありません。

本作は主演を務める賀来賢人の持ち込み企画なのだそう。これから賀来賢人がもっと面白いことをしてくれる、その序章のような気がします。

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壮大なスケールの物語のなかに身を置くもよし、一見普通に暮らす隣人の裏の顔に思いをはせるもよし、もしかしたらあり得るかも……な、不思議な世界を楽しむのもいいでしょう。今回は流し見ではなく、ガッツリ集中して見ることでより楽しめる作品を紹介しました。

どこかに出かけなくても、映画やドラマの世界にどっぷり浸ることもストレス解消やリフレッシュになるものです。どの作品も、ストーリー展開や伏線回収の見事さだけでなく、キャストの高い演技力もあって、物語への没入を妨げるものはありません。ぜひお菓子やドリンクでテンションを上げるなど、観る体制を整えて挑んでください。プロジェクターを使うのもいいかもしれませんね。GWまでのストレスをリセットして、またがんばりましょう！