空飛ぶタクシー!3Dプリンタで食事を印刷!中東のドバイで見た「世界の最先端」テクノロジー

山根 康宏

AIIoT・モビリティSpecialイベントテクノロジー

ロボットが先生や家事を行い、食事はプリンターで印刷する

IT系展示会では人間型のロボットがどこへ行っても大人気だ。Engineered Artsが開発したAmecaは歩行はしないものの、話し相手の顔の表情や声をAIが解析。まばたきや口を動かし、本物の人間のような表情を作って会話してくれる。下半身は動かないが上半身は肩・ひじ・腕が動き、首も人間のような自然な動作を行う。あとは2本足走行のメカニズムさえどこかの企業が開発すれば、合体させ、本物の人間のようになれるだろう。そしてこのような人間型ロボットに、最近はやりのChatGPTのような「会話型AI」を搭載すれば、あらゆることを教えてくれるロボット先生に早変わりする。教師の仕事は教えることが増え、年々大変になっているだけに、教師をサポートできるロボット先生の実用化は意外と早いかもしれない。

人間のような表情と動きで会話をするヒューマノイドロボットAmeca

Enchanted ToolsのMirokaiは、リアリティーより実用性を重視したロボットだ。2本足はないものの大型のボールを足の部分に備え、このボールを回転させて前後左右あらゆる方向に動き回ることができる。センサーにより、移動中や停止中も本体が倒れてしまうことはない。また顔に当たる部分にはさまざまなキャラクターを表示し、顔の表示も変えることができる。現在はキャスター付きのワゴンを目的の場所まで自動で動かすことが可能で、海外の病院などでテストが行われている。音声認識機能もあるので「このトレイを2階の3号室まで運んで」と伝えれば、腕を動かし、ワゴンの取っ手を握って目的の場所まで運んでくれる。

ワゴンをどんな場所にでも移動させてくれるMirokai

さて、どんなに生活が便利になっても日々の食事は誰かが作らなくてはならない。最近は冷凍食品のクオリティーも高く、「たかが冷凍」と馬鹿にはできないレベルの総菜も販売されている。とはいえ、すべての食事が冷凍食品で提供されているわけではない。またウーバーイーツのようなデリバリーサービスもあるが、配送料が高かったり、そもそも真夜中に開いていないレストランの食事をオーダーすることはできない。そこで期待されているのが、いつでもどこでも食事を自宅で「印刷」できるフードプリンターだ。

食事をいつでも印刷できるフードプリンター

Natural Machinesが参考展示していたフードプリンターは複数のノズルから食材を押し出して積み重ね、食品を作ることができる。現時点ではまだ砂糖菓子やホットケーキミックスなど簡単なものしか印刷できず、あらゆる食品を印刷できるわけではない。しかし人造ミートが商用化されている今、いずれは「牛肉カートリッジ」などを取り付けて、ステーキ肉を家庭で印刷できる時代が来るだろう。実際に肉のプリンターは大学などで研究が進められている。またフードプリンターは必要な量だけを印刷でき、フードロスの少ない、環境にやさしい「次世代調理機器」でもある。将来は冷蔵庫にフードプリンターが内蔵され、何十種類もの食材のカートリッジが保存され、どんな料理も自宅で印刷できるようになるかもしれない。

砂糖菓子などを印刷できるフードプリンターはすでに実用レベルに達している

フードプリンターで調理した朝ごはんを済ませたら、今度は「今日はどんなコーディネートにしようか」と、着る服を悩むことになるかもしれない。今ではブティック向けに「バーチャルフィット」を体験できるスマートミラーが実用化されている。まずスマートミラー内蔵のカメラで自分を写せばミラーに自分のアバターが表示される。次に気に入った洋服のタグをカメラで読み取ると、スマートミラー上に自分がその服を着ている姿が投影されるのだ。自分の姿を回転させることもできるし、違う色の同じ服に着せ替えることもワンタッチだ。

このシステムは自宅用に応用されているものもあり、自分のクローゼット内の洋服のタグをスキャンすると、自動的にどのメーカーのどんなアイテムかが保存され、あとは外出前に鏡に洋服をかざすだけで自分の着用姿を確認できる。コーディネートが合わないと思ったら服の色を変え、それが気に入ったらそのままオンラインでオーダーできる、といったこともできるようになるだろう。数年後のワードローブ選びは、スマホを見るのではなく、スマートミラーで自分の姿を見ながらオーダーして完結するようになるのだ。

スマートミラーがブティックでの洋服選びに活躍する

世界をリードする中東のスマートシティー

映画に出てくる「いかにも」なメカメカしいデザインのロボットが街中を動き回る時代はまだ、すぐにはやってこないだろうが、人間の代わりに作業などをサポートしてくれるロボットは中東各国で実用化が始まっている。ドバイ警察の遠隔捜査官は街中で怪しい人を見かけると走り寄ってきて、大型ディスプレイ越しに「身分証明書を見せなさい」などと取り締まりを開始する。見た目は四角い自走車だが、いずれはこれがヒューマノイドロボットとなり、ドバイの街中を本物の警官のように歩きながら治安を維持するようになるのだ。

ドバイの街中を動き回るロボット捜査

同じアラブ首長国連邦の首都・アブダビでは、2023年夏からWeRideの自動運転タクシーと自動運転バスが走り始めている。これらはテストではなく、国家レベルで与えられた自動運転自動車ライセンスを取得しており、今後はドバイなど他の同国都市でもこうしたタクシーとバスが走り始める予定だ。自動化やIT化された社会インフラの導入が次々と進む中東各国は、スマートな生活を送れる「スマートシティー」を先取りし、世界をリードしようとしている。

アブダビでは市民の日常の足となるWeRideの自動運転バス

これからも新しい技術が次々と実用化されていくだろうが、開発費や導入予算など金銭面の問題や、法令整備を整えるために時間がかかるなど、夢の世界の実現にはさまざまな障壁がある。だが中東は金策が比較的容易で政府の動きも早い。日本、アメリカ、中国などがしのぎを競って開発を進める新技術が、真っ先に商用化されていくのは中東なのかもしれない。

ドバイに行けば未来の世界を垣間見ることができる

32 件

山根 康宏

香港在住携帯研究家
スマホとSIMを求めて世界各国を取材中。海外、特に中国の通信事情に精通している。大手メディアへの執筆も多数。海外スマホ・ケータイを1800台所有するコレクターでもある。

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