スタジオカラーも制作に参加したことで話題となった『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』は、2025年春に放送が始まったガンダムシリーズの最新作だ。
本記事では全3回にわたり、作中に登場する先端技術が現実にどこまで実現可能かを考察する。第1回では「サイコミュとBMI」、そして第2回では「スペースコロニー」を取り上げたが、第3回となる今回は、ガンダムシリーズのマスコット的存在である小型ロボット「ハロ」を考察してみよう。
本記事では全3回にわたり、作中に登場する先端技術が現実にどこまで実現可能かを考察する。第1回では「サイコミュとBMI」、そして第2回では「スペースコロニー」を取り上げたが、第3回となる今回は、ガンダムシリーズのマスコット的存在である小型ロボット「ハロ」を考察してみよう。
“アムロの自作”にしては超ハイスペック?なハロ
ハロはガンダムシリーズをとおしてさまざまな形で登場するが、その原点は初代『機動戦士ガンダム』(以下、ファーストガンダム)に登場する「ハロ」だ。
ハロは直径40cmほどの球形ロボットで、手足が付いているが、それらを格納して完全な球体になることもできる。設定上は、主人公アムロ・レイが自作し、ガールフレンドのフラウ・ボゥにプレゼントしたとされている(後年、このハロは「市販品をカスタマイズしただけ」という設定に変更されたが)。
だがその性能は、個人の手によるとは思えないほど高性能で頑丈だ。しゃべり方こそ片言ながら、自然言語で意思疎通でき、作中でも多くの登場人物とコミュニケーションをとっている。
手足を使って移動したり、球体になって転がったり、さらには手を格納する穴の「ふた」を耳のようにパタつかせて浮かぶことも可能。何度も危機に直面しながらも壊れることなく、「一年戦争」を生き抜いている。
ハロは直径40cmほどの球形ロボットで、手足が付いているが、それらを格納して完全な球体になることもできる。設定上は、主人公アムロ・レイが自作し、ガールフレンドのフラウ・ボゥにプレゼントしたとされている(後年、このハロは「市販品をカスタマイズしただけ」という設定に変更されたが)。
だがその性能は、個人の手によるとは思えないほど高性能で頑丈だ。しゃべり方こそ片言ながら、自然言語で意思疎通でき、作中でも多くの登場人物とコミュニケーションをとっている。
手足を使って移動したり、球体になって転がったり、さらには手を格納する穴の「ふた」を耳のようにパタつかせて浮かぶことも可能。何度も危機に直面しながらも壊れることなく、「一年戦争」を生き抜いている。
ハロの初登場(4分25秒ごろから、第1話|機動戦士ガンダム【ガンチャン】)
via www.youtube.com
シリアスな展開の多いガンダムシリーズにおいて、ハロはコメディリリーフ的な立ち回りができるからか、ハロもしくはハロ的なロボットは、いろいろな設定で後続作品に登場してきた。ジークアクスも例外ではなく、最初はジャンク屋のアンキーが所有するロボットとして登場し、その後は主人公のマチュと行動をともにしている。
作品ごとに設定や機能は異なるものの、「ハロ」に共通するのは、自然言語で会話でき、さらに自律的に動き、移動できる型ロボットという点だ。
そこでこの2つの点に注目し、ハロがどこまで実現できるか考えてみよう。
作品ごとに設定や機能は異なるものの、「ハロ」に共通するのは、自然言語で会話でき、さらに自律的に動き、移動できる型ロボットという点だ。
そこでこの2つの点に注目し、ハロがどこまで実現できるか考えてみよう。
最新のAIは「サンキュー、アムロ!」より流ちょうに話す
まずは「自然言語での会話」について見てみよう。ハロの話し方はたどたどしいが、人間と会話を通じてコミュニケーションできる。また一定の人格を備えており、相手を認識して話しかけることが可能だ。例えばファーストガンダムの第1話ではアムロに対し「アムロ!」と呼びかけ、アムロが「元気だね」と声をかけると、「サンキュー、アムロ!」と答えている。
ほんの10年ほど前までは、このような応対が可能なAIが日常生活に存在すること自体が、まさにSFの世界の話だったろう。しかしその後のAI技術、特に生成AI技術の発展によって、事態が大きく変わったのはご存じの通りだ。
ChatGPTなどの生成AIチャットボットを利用している方であれば、テキストでのやりとりにおいて、AIがいかに人間らしい会話ができるようになったか実感しているだろう。
音声によるコミュニケーションという点でも、今やハロよりもずっと流ちょうに会話できるAIが登場している。
ほんの10年ほど前までは、このような応対が可能なAIが日常生活に存在すること自体が、まさにSFの世界の話だったろう。しかしその後のAI技術、特に生成AI技術の発展によって、事態が大きく変わったのはご存じの通りだ。
ChatGPTなどの生成AIチャットボットを利用している方であれば、テキストでのやりとりにおいて、AIがいかに人間らしい会話ができるようになったか実感しているだろう。
音声によるコミュニケーションという点でも、今やハロよりもずっと流ちょうに会話できるAIが登場している。
Introducing EVI 3: general voice intelligence(汎用音声インテリジェンス「EVI 3」)
via www.youtube.com
この動画は、Hume AIという企業が開発した最新型の音声AI「EVI 3」のデモを紹介している。日本語ではないため少し聞き取りづらいかもしれないが、20秒あたりから始まる実際のAI音声を聞くと、人間と区別がつかないほどリアルな話し方になっている。さらに5秒付近では人間が「ささやき声で」と指示し、それに応じてささやき声で返答する。実際のデモはこちらから体験できるので、興味のある方はぜひ試してみていただきたい。
Hume AIはニューヨークに拠点を置くスタートアップで、感情科学に基づく「共感型AI」の研究・開発を行っている。彼らが手がけるAIは、テキストだけでなく音声や映像からも学習し、人間の声や表情から喜び・不安といった数百種類の感情を高精度に測定できる。さらに、合成音声にさまざまな感情を込めることも可能だ。
特に注目されているのが「Voice Control」機能だ。これは、ユーザーが性別・自信・熱意など10の次元で感情をリアルタイムに調整できる機能で、会話のトーンを変えられる。
この機能は、カスタマーサポートや教育、愛玩用の玩具(まさしくハロのような)などさまざまな領域への応用も期待されている。同様の高度な音声AIを手掛ける企業はEVI 3に限らずほかにも数多く存在している。
こうした革新的な音声AIを可能にした背景には、「Speech-to-Speech(S2S)」モデルと呼ばれるAI技術の登場がある。
S2Sモデルは、音声入力を直接音声出力に変換することで、より自然で感情豊かな対話を実現する。従来の音声AIでは「音声→テキスト→AI処理→テキスト→音声」という多段階処理が行われていたが、S2Sモデルでは「音声→AI処理→音声」とシンプルになり、音声の韻律や感情、話者の特徴などを保持できるため、より人間らしい対話が可能になった。また応答速度も大幅に向上し、リアルタイムに近い会話が可能になっている。
Hume AIはニューヨークに拠点を置くスタートアップで、感情科学に基づく「共感型AI」の研究・開発を行っている。彼らが手がけるAIは、テキストだけでなく音声や映像からも学習し、人間の声や表情から喜び・不安といった数百種類の感情を高精度に測定できる。さらに、合成音声にさまざまな感情を込めることも可能だ。
特に注目されているのが「Voice Control」機能だ。これは、ユーザーが性別・自信・熱意など10の次元で感情をリアルタイムに調整できる機能で、会話のトーンを変えられる。
この機能は、カスタマーサポートや教育、愛玩用の玩具(まさしくハロのような)などさまざまな領域への応用も期待されている。同様の高度な音声AIを手掛ける企業はEVI 3に限らずほかにも数多く存在している。
こうした革新的な音声AIを可能にした背景には、「Speech-to-Speech(S2S)」モデルと呼ばれるAI技術の登場がある。
S2Sモデルは、音声入力を直接音声出力に変換することで、より自然で感情豊かな対話を実現する。従来の音声AIでは「音声→テキスト→AI処理→テキスト→音声」という多段階処理が行われていたが、S2Sモデルでは「音声→AI処理→音声」とシンプルになり、音声の韻律や感情、話者の特徴などを保持できるため、より人間らしい対話が可能になった。また応答速度も大幅に向上し、リアルタイムに近い会話が可能になっている。

小林 啓倫
経営コンサルタント
1973年東京都生まれ、獨協大学外国語学部卒、筑波大学大学院修士課程修了。システムエンジニアとしてキャリアを積んだ後、米バブソン大学にてMBAを取得。その後外資系コンサルティングファーム、国内ベンチャー企業などで活動。著書に『FinTechが変える!金融×テクノロジーが生み出す新たなビジネス』(朝日新聞出版)、『IoTビジネスモデル革命』(朝日新聞出版)、訳書に『ソーシャル物理学』(アレックス・ペントランド著、草思社)、『シンギュラリティ大学が教える 飛躍する方法』(サリム・イスマイル著、日経BP)など多数。