「マイナンバーの語呂がイイ」とか言える空気じゃなかった
12桁のユニークな数字が、なんだかよくわからないが国民それぞれに割り振られる——2015年の秋、「通知カード」なる封書が郵便局からおごそかに届けられ、そこに記された個人番号(マイナンバー)を見たときの私の感想は「で!?」というものでした(現在は通知カードではなく「個人番号通知書」が届けられます)。
というのも、生き別れの家族と対面するように「これが、私の、マイナンバー!」と感動するかな〜とちょっとだけ期待していたのです。しかし相手が人間ではなく数字だったからなのか、そんな気分には一切ならず。数字が苦手な私には12桁もの数字は覚えられないし、語呂合わせをできるようなカワイイ並びでもない。だからどんなにマイナンバーを見つめても、そこに親しみも憎しみも何も湧かないのでした。
そして、もし「オイオイ、ヨロシク、ゴクローサン(0101 4649 5963)」のような神がかった語呂だったとしても、動物占いやMBTI性格診断のように「私はゴクローサンでした〜」と開示もできない。「アナタのマイナンバーは素数だった?」なんて世間話にも一切挙がらないし、ファッション誌の占いコーナーにも出てこない。
なぜなら「マイナンバーは大事な数字です、むやみに外部に漏らしてはいけません」と周知されていたからです。
そもそも行政手続きに必要な場合以外は、家族以外の他人がマイナンバーの数字を求めたり、保管することは、たとえ本人が「いいよ」と言っても、マイナンバー法で禁止されています。
当初マイナンバーの存在を重苦しいものにしていた事情はもう1つあります。大事な“シークレットナンバー”ことマイナンバーがプリントされた「通知カード」です。
この通知カードは、なんと「再発行できない」というのです。で、そうやって脅かす割には紙質がちょっと頼りない。そんなに大切なカードなら、いっそ富士山と鶴と亀が刻まれた金ピカのプレートとかで配ってほしかった!
まあ、それはそれとして、絶対になくせない紙切れと、そこにプリントされたマイナンバーを受け取ったからには、ちゃんと保管しなければいけませんでした。さんざん悩んだ末に私は、我が家で最もセキュリティが堅そうな「銀行の通帳入れ」に通知カードをそっとはさむことに。
ペラペラの通知カードを一刻も早く手放したかったこともあり、通知カードよりは分厚いマイナンバーカードの引き渡しには最速のタイミングで行きました。
というのも、生き別れの家族と対面するように「これが、私の、マイナンバー!」と感動するかな〜とちょっとだけ期待していたのです。しかし相手が人間ではなく数字だったからなのか、そんな気分には一切ならず。数字が苦手な私には12桁もの数字は覚えられないし、語呂合わせをできるようなカワイイ並びでもない。だからどんなにマイナンバーを見つめても、そこに親しみも憎しみも何も湧かないのでした。
そして、もし「オイオイ、ヨロシク、ゴクローサン(0101 4649 5963)」のような神がかった語呂だったとしても、動物占いやMBTI性格診断のように「私はゴクローサンでした〜」と開示もできない。「アナタのマイナンバーは素数だった?」なんて世間話にも一切挙がらないし、ファッション誌の占いコーナーにも出てこない。
なぜなら「マイナンバーは大事な数字です、むやみに外部に漏らしてはいけません」と周知されていたからです。
そもそも行政手続きに必要な場合以外は、家族以外の他人がマイナンバーの数字を求めたり、保管することは、たとえ本人が「いいよ」と言っても、マイナンバー法で禁止されています。
当初マイナンバーの存在を重苦しいものにしていた事情はもう1つあります。大事な“シークレットナンバー”ことマイナンバーがプリントされた「通知カード」です。
この通知カードは、なんと「再発行できない」というのです。で、そうやって脅かす割には紙質がちょっと頼りない。そんなに大切なカードなら、いっそ富士山と鶴と亀が刻まれた金ピカのプレートとかで配ってほしかった!
まあ、それはそれとして、絶対になくせない紙切れと、そこにプリントされたマイナンバーを受け取ったからには、ちゃんと保管しなければいけませんでした。さんざん悩んだ末に私は、我が家で最もセキュリティが堅そうな「銀行の通帳入れ」に通知カードをそっとはさむことに。
ペラペラの通知カードを一刻も早く手放したかったこともあり、通知カードよりは分厚いマイナンバーカードの引き渡しには最速のタイミングで行きました。
あれから10年、マイナンバーとの付き合いはどう変わったか
……こんな感じで突如始まったマイナンバーとのつき合いも、はや10年を迎えました。ちょうど先日マイナンバーカードの更新を行い、新マイナンバーカードを受け取ったところです。
かつては「で!?」と思っていたマイナンバーとマイナンバーカードですが、いざ付き合ってみると意外と便利だなあというのが、現在の私の印象です。通院時などに持ち出す機会も増えてきました。
今でももちろん「マイナンバー占い」なんて軽率な扱いはされず、きちんと管理されている印象であるものの、「何が何でも、絶対に誰にも教えない!」といった、かたくなな警戒感は薄れているような……。
実際、知人の会計士によると、マイナンバー制度が始まった頃の年末調整では関係者がマイナンバーを出したがらず、書類作成がとても大変だったそうです。今はみなさん提出してくださるケースがほとんどだとか。
そんなマイナンバーのあれこれを振り返ってみます。
かつては「で!?」と思っていたマイナンバーとマイナンバーカードですが、いざ付き合ってみると意外と便利だなあというのが、現在の私の印象です。通院時などに持ち出す機会も増えてきました。
今でももちろん「マイナンバー占い」なんて軽率な扱いはされず、きちんと管理されている印象であるものの、「何が何でも、絶対に誰にも教えない!」といった、かたくなな警戒感は薄れているような……。
実際、知人の会計士によると、マイナンバー制度が始まった頃の年末調整では関係者がマイナンバーを出したがらず、書類作成がとても大変だったそうです。今はみなさん提出してくださるケースがほとんどだとか。
そんなマイナンバーのあれこれを振り返ってみます。
運転免許証を持たぬ社会人にとって、マイナンバーカードは“救済”だった
最初に私が「こりゃ便利だぞ」と思ったのは、マイナンバーカードの持つ機能とかではなく、「存在そのもの」でした。
大学を卒業後、運転免許証をまだ持っていなかった私の「住所が記載された、顔写真付きの身分証明証」はパスポートくらいしかなかったのです。
銀行や役所に出向くときは神妙にパスポートを持参しましたが、例えば西麻布のクラブのエントランスで「IDチェックさせてくださ〜い」と言われたときが一番のピンチでした。私は顔パスできるようなVIPでもなく、そこはパスポートを取り出す雰囲気ではありません。
さらにいうとパスポートは冊子ですから、小さなバッグや洋服のポケットには入らない。つまり、何もかもがスマートじゃなかった。学生の頃なら学生証をちらっと見せればオッケーだったのに、社会人になった途端にこんなに不便になるとは……。
そんな寄る辺なき私にとって、マイナンバーカードは免許証に匹敵する「顔写真付きの公的身分証」となり、クラブやオールナイトのフェスに行くときには必ず携帯するようになりました。
服の奥まったところの深いポケットや、バッグのチャック付きの内ポケットなどに収めて、必要なときだけ出して、見せたらすぐしまうことで、紛失することなく10年を迎えた次第です。
ただ、レンタルビデオ店などでの本人確認では「マイナンバーはちょっと……」と、チェックをやんわり拒否されるケースもありました。マイナンバーカードを保護するビニール袋が数字を隠す仕様になっているのに、「マイナンバーカードなんて見てはいけない!」くらいの勢いで、お店のカウンター越しにいる店員さんが目をそらすのです。まあ、シークレットナンバーですもんね。マニュアルなど、さまざまなご事情があったのでしょう。しかたない。
大学を卒業後、運転免許証をまだ持っていなかった私の「住所が記載された、顔写真付きの身分証明証」はパスポートくらいしかなかったのです。
銀行や役所に出向くときは神妙にパスポートを持参しましたが、例えば西麻布のクラブのエントランスで「IDチェックさせてくださ〜い」と言われたときが一番のピンチでした。私は顔パスできるようなVIPでもなく、そこはパスポートを取り出す雰囲気ではありません。
さらにいうとパスポートは冊子ですから、小さなバッグや洋服のポケットには入らない。つまり、何もかもがスマートじゃなかった。学生の頃なら学生証をちらっと見せればオッケーだったのに、社会人になった途端にこんなに不便になるとは……。
そんな寄る辺なき私にとって、マイナンバーカードは免許証に匹敵する「顔写真付きの公的身分証」となり、クラブやオールナイトのフェスに行くときには必ず携帯するようになりました。
服の奥まったところの深いポケットや、バッグのチャック付きの内ポケットなどに収めて、必要なときだけ出して、見せたらすぐしまうことで、紛失することなく10年を迎えた次第です。
ただ、レンタルビデオ店などでの本人確認では「マイナンバーはちょっと……」と、チェックをやんわり拒否されるケースもありました。マイナンバーカードを保護するビニール袋が数字を隠す仕様になっているのに、「マイナンバーカードなんて見てはいけない!」くらいの勢いで、お店のカウンター越しにいる店員さんが目をそらすのです。まあ、シークレットナンバーですもんね。マニュアルなど、さまざまなご事情があったのでしょう。しかたない。
マイナ保険証の読み取り機、ちゃんと動いてる?
物体としてのマイナンバーカードに助けられ夜遊びを繰り返すうちに、私の中でマイナンバーカードへの警戒心が日に日に薄れていきました。楽しいことに使っているので当然といえば当然かもしれません。
それに、マイナンバーから個人情報を引き出すには、本人ですら顔認証やパスワードなど、それなりの手順を踏む必要があります。だからもし仮に、私が自分のオデコにマイナンバーをタトゥーで刻んでも、他人から見たら「なんだろうな」くらいにしか思われないかも(いや、やりませんけどね!)。
利用登録促進のために「マイナポイント」なる1人当たり2万円分のポイントがもらえる豪快な施策もあり、世間でも少しずつマイナンバーカードは広まっていきました。ちなみに私は2万円もらったら5万円使ってしまうような性分なので、もらったマイナポイントは一瞬で使い果たし、ついでにいろいろ買い物をし、その月の支出はむしろ増えました。
そして2021年にマイナ保険証の制度が始まると、新しいもの好きの私はマイナ保険証をガンガン使うように。ただし従来の保険証も併用していました。というのも「今日はマイナ保険証の読み取り機が不調で……」とマイナ保険証が使えなくなるケースが何度かあったからです。
なおi4U編集長の岩崎さんは、ぶっ壊れた読み取り機に遭遇する確率が25%と非常に高いのだそう。難儀ですね。
ところで、マイナ保険証の認証には「顔認証」と「暗証番号」の2種がありますが、私は顔認証を試したことがありません。マイナ保険証の顔認証はメガネやマスクありでも使えるといいますが、ただでさえ病気でコンディションが最悪なときに「顔認証通るかな〜」とかドキドキするのがイヤなんです。
2025年9月からはスマートフォンに入れたマイナンバーカードを、マイナ保険証として利用可能になりました。とはいえ、このスマホ対応の読み取り機に私は今のところお目にかかったことがないので、まだ試せていません。早く使ってみたい!
それに、マイナンバーから個人情報を引き出すには、本人ですら顔認証やパスワードなど、それなりの手順を踏む必要があります。だからもし仮に、私が自分のオデコにマイナンバーをタトゥーで刻んでも、他人から見たら「なんだろうな」くらいにしか思われないかも(いや、やりませんけどね!)。
利用登録促進のために「マイナポイント」なる1人当たり2万円分のポイントがもらえる豪快な施策もあり、世間でも少しずつマイナンバーカードは広まっていきました。ちなみに私は2万円もらったら5万円使ってしまうような性分なので、もらったマイナポイントは一瞬で使い果たし、ついでにいろいろ買い物をし、その月の支出はむしろ増えました。
そして2021年にマイナ保険証の制度が始まると、新しいもの好きの私はマイナ保険証をガンガン使うように。ただし従来の保険証も併用していました。というのも「今日はマイナ保険証の読み取り機が不調で……」とマイナ保険証が使えなくなるケースが何度かあったからです。
なおi4U編集長の岩崎さんは、ぶっ壊れた読み取り機に遭遇する確率が25%と非常に高いのだそう。難儀ですね。
ところで、マイナ保険証の認証には「顔認証」と「暗証番号」の2種がありますが、私は顔認証を試したことがありません。マイナ保険証の顔認証はメガネやマスクありでも使えるといいますが、ただでさえ病気でコンディションが最悪なときに「顔認証通るかな〜」とかドキドキするのがイヤなんです。
2025年9月からはスマートフォンに入れたマイナンバーカードを、マイナ保険証として利用可能になりました。とはいえ、このスマホ対応の読み取り機に私は今のところお目にかかったことがないので、まだ試せていません。早く使ってみたい!

花森 リド
ライター・コラムニスト
主にゲーム、マンガ、書籍、映画、ガジェットに関する記事をよく書く。講談社「今日のおすすめ」、日経BP「日経トレンディネット」「日経クロステック(xTECH)」、「Engadget 日本版」、「映画秘宝」などで執筆。
X:@LidoHanamori












