「2025年国際博覧会(以下、大阪・関西万博)」は、会場全体が一つの未来都市として機能し、持続可能な社会を実現する「未来社会の実験場」として、特に環境・エネルギー分野で画期的な実証実験がいろいろ行われました。
カーボンリサイクルを実現する「未来の森」や「未来の都市ガス」
万博会場の夢洲は人工の埋め立て地で、開催が決まった2018年時点ではインフラが未整備でした。そのため、先進的な技術でカーボンニュートラルや省エネを実現し、電力を地産地消する方向で設計されました。バイオマスなどさまざまなエネルギーを組み合わせてゼロカーボン(二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスの排出量をゼロにすること)を目指し、そのための施設を会場内に設置したり、特殊な建材や設計を取り入れたりしています。
例えば、温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を資源として活用するカーボンリサイクルの取り組みでは、CO2を吸収して固まる特殊なコンクリートを舗装路やベンチに使用。
小学生から高校生を対象にした体験型プログラムを提供する「サステナドーム」の環境配慮型コンクリートは、従来のコンクリートに比べて約70%もCO2排出を削減しているそうです。
例えば、温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を資源として活用するカーボンリサイクルの取り組みでは、CO2を吸収して固まる特殊なコンクリートを舗装路やベンチに使用。
小学生から高校生を対象にした体験型プログラムを提供する「サステナドーム」の環境配慮型コンクリートは、従来のコンクリートに比べて約70%もCO2排出を削減しているそうです。
CO2を吸収するコンクリートを使用した世界初のドームも登場
EXPOアリーナにも、コンクリートが固まる過程でCO2を吸収し、コンクリート内部に固定することでCO2排出量を実質ゼロ以下にできる環境配慮型コンクリートブロックが使われ、緑の芝生とバランスよく会場を演出していました。
EXPOアリーナにも環境配慮型コンクリートを使用
また、大気中に0.04%ほど含まれているCO2を直接回収して再利用する”未来の森”と呼ばれる「DAC(Direct Air Capture)」技術の実証実験も実施されました。この技術は世界からも注目されており、回収されたCO2を冷却用ドライアイスとして有効活用する実験も行われました。
こうした設備は、一般には非公開の「カーボンリサイクルファクトリー」にまとめて設置され、「次世代の都市ガス」といわれるメタンを合成する実証実験も行われました。
その1つ、大阪ガスメタネーション実証設備では、会場内から回収した生ごみを発酵させて得たバイオガスなどからCO2を回収し、水素と組み合わせる”メタネーション”によって「e-メタン」を合成。会場内を走るバスの燃料や迎賓館の調理で実際に使われていました。
その他、微生物の力でメタンを作る 「バイオメタネーション」と、触媒を用いた化学反応でメタンを作る「サバティエメタネーション」が実施され、いずれも同じ施設内の設備で集めたCO2を用いて合成していました。
こうした設備は、一般には非公開の「カーボンリサイクルファクトリー」にまとめて設置され、「次世代の都市ガス」といわれるメタンを合成する実証実験も行われました。
その1つ、大阪ガスメタネーション実証設備では、会場内から回収した生ごみを発酵させて得たバイオガスなどからCO2を回収し、水素と組み合わせる”メタネーション”によって「e-メタン」を合成。会場内を走るバスの燃料や迎賓館の調理で実際に使われていました。
その他、微生物の力でメタンを作る 「バイオメタネーション」と、触媒を用いた化学反応でメタンを作る「サバティエメタネーション」が実施され、いずれも同じ施設内の設備で集めたCO2を用いて合成していました。
カーボンリサイクルファクトリーでは見学ツアーを実施(写真提供:万博協会)
未来の空調服は“折り曲げられる太陽電池”付き?
会場内では、次世代の太陽電池として注目されているペロブスカイト太陽電池が、あちこちで活用されていました。ペロブスカイト太陽電池は、薄くて折り曲げることができ、従来の太陽光発電パネルに比べて軽く、発電機能もコンパクトにできるため、建物などにも使いやすい点が特長です。
例えば、西ゲート前にあるバスターミナルの屋根には、長さ250mにわたってフィルム型のペロブスカイト太陽電池が使用されていました。半年の会期中、雨や夏の強い日差しなど変化する環境下での耐久性が検証され、発電した電気は蓄電池に蓄えて夜間照明に利用されました。
例えば、西ゲート前にあるバスターミナルの屋根には、長さ250mにわたってフィルム型のペロブスカイト太陽電池が使用されていました。半年の会期中、雨や夏の強い日差しなど変化する環境下での耐久性が検証され、発電した電気は蓄電池に蓄えて夜間照明に利用されました。
フィルム型の太陽電池は使用できる応用範囲が広い
ユニークな使い方としては、ペロブスカイト太陽電池が搭載された空調ファン付きのスマートウェアがあり、一部のスタッフに提供されました。充電の手間がいらず、スマートフォンやパソコンも充電できるとのことで、夏のマストウェアとして販売されるのを期待したいところです。
スタッフが着用していたペロブスカイト太陽電池搭載のスマートウェア
新しい技術だけでなく、既存のソーラーパネルをリサイクルするアイデアも登場しました。太陽光発電パネルを再利用した「そらいす」は、扇風機付きで充電もできるマルチな屋外ベンチ。さらに移動も可能なため、災害時の非常用電源としての活用も想定されています。
太陽光発電パネルを再利用した移動式ベンチ「そらいす」
ポーランドパビリオンの前には、太陽光発電を利用したスマートスタンドや、置くだけで充電できるスマートベンチが設置され、屋外での実用性が検証されていたようです。
ポーランドパビリオンには、太陽光発電を利用した充電できるベンチとスマートスタンドを設置

野々下 裕子(NOISIA)
テックジャーナリスト
神戸を拠点に国内外のテック系イベントやカンファレンスの取材、インタビュー、リサーチなどを幅広く行う。オンラインメディアを中心に執筆多数。













