復活するコンテンツ、復活しないコンテンツ:鵜の目「鷹木」の目

鷹木 創

Speciali4Uゲームネットサービス映画・音楽本・書籍

マンガ、映画、ゲームはどう?

こうしたアーカイブの試み、インターネット以外のコンテンツではどうでしょうか?

例えば、マンガなどでも試行錯誤が続いています。そのひとつが先日の参議院選挙で当選したマンガ家の赤松健さんが監修している「マンガ図書館Z」です。赤松さんによれば「絶版した紙のマンガをアーカイブして配信する『マンガ図書館Z』は、消滅の危機にある作品をファンと作者のために末長く読んでもらうために発案しました」とのこと。絶版になってしまった作品や単行本化できなかった作品などがマンガ図書館Zで復活する可能性がある、というわけです。

マンガ図書館Zの狙いはさらにこうした絶版本や世に出なかったコンテンツをアーカイブすることで商売にしてしまおうというところ。先ほどのWayback Machine は世界中のネットコンテンツをアーカイブするところに価値があり、そのために世界中から寄付を募っているぐらいなので、資金的には大変そうです。社会的な使命も大きいと思いますので単純比較は危険ですが、あえて比べると、マンガ図書館Zはマンガというターゲットに絞り込んでいる分、ビジネス的には強みがありそう。メディアドゥホールディングスや講談社などの企業も協力をしています。

権利が複雑になりすぎて“復活”の難易度が高いのは映像作品でしょうか。DVDになっていても配信系サービスでは配信できないパターンもあります。また、配信できたとしても一部が再現できなくなっていたりすることも……。例えば鷹木の好きな『機動戦士Zガンダム』は配信が始まった当初、オープニング曲が本来の曲から変更になっていました(2017年12月以降は「元の主題歌で配信できるようになった」と公式アナウンスがありました)。

特に今年は有名作品のリメイクや続編も登場しています。『シン・ウルトラマン』から始まり、『トップガン マーヴェリック』『ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV』……などなど。こういう作品を見るとオリジナルを見たくなるんですよねえ。

リメイク作品が多いといえばゲームです。こちらも昔の作品のアーカイブ化となると、映画と同じように権利関係が複雑。70年代や80年代のゲームはそもそも権利などが確立していなかったこともあって、いざ正規にアーカイブ化してビジネスに仕立てるとなると、もともとの作者に当たる必要も出てきます。ゲームメーカーのハムスターが提供している「アーケードアーカイブス」のような復刻シリーズや、Nintendo Switchの有料サービスとして配信されている「ファミリーコンピュータ Nintendo Switch Online」「スーパーファミコン Nintendo Switch Online」などの取り組みにも期待です。

ちなみに筆者が先日、Steamのシブサワコウ40周年記念のセールに合わせて、歴代シブサワ作品を30点ほど購入してしまったことは秘密です。当時は比較的高価だった三國志などの作品群が3万円ほどでそろえられたので、ゲームを楽しんだだけでなく“大人買い”の気分も味わえました。

コンテンツの復活のためには……

話は戻って、冒頭に紹介したEngadget 日本版の件。実はその後、筆者を含めた有志が集まって後継媒体となる「テクノエッジ(TechnoEgde)」を立ち上げたのでした。そもそもEngadgetがなくなることで、それまでEngadgetに書いてくださっていた人たちの場がなくなるわけで、それがもったいないなーという問題意識が読者も含めた関係者の間で自然と湧き上がってきたのがきっかけ。特にEngadget日本版のファウンダーの1人であるIttousaiがEngadget以外で書くのを鷹木は想像できませんでした。結果、Ittousaiを編集長とした新媒体の構想につながっていきます。
とはいえ新媒体のテクノエッジは編集長のIttousaiも話している通り「現在も更新中の米国版・中国版Engadgetと運営上の関係はなく、私を含めスタッフの一部が共通している以上の関連はありません」ということで、メディアの復活というより、リメイクと言ったほうが正確かなと思っていますが、それでも発行人の筆者としてはEngadget 日本版の精神を少しでも“復活”できればいいなと思っています。

6月の創刊後、7月には読者と一緒に創刊記念パーティーをやったり、9月にはシニアエディター兼コミュニティストラテジストがジョインしたり、何とかメディアの形ができてきました。年末に向けていろいろ仕込んでもいますので、Engadget(Ittousai)ファンの皆さまはもちろん、ガジェット好き、テクノロジー好きの皆さまに置かれましてもご期待ください。

……さて、本題に戻ります。こうして見てみると、メディアやコンテンツが復活する形というのもいろいろ。1つ共通しているのは、それに携わる制作者や権利者、そしてそれを楽しむ利用者や読者の気持ち──なのかもしれませんね。
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鷹木 創

編集主幹
2002年以来、編集記者や編集長などとしてメディアビジネスに携わる。インプレス、アイティメディアと転職し、2013年にEngadget日本版の編集長に就任。 その後スマートニュースに転職。国内トップクラスの機械学習を活用したアプリ開発会社においてビジネス開発として活躍。2021年からはフリーランスとして独立、IBM、Google などのオウンドメディアをサポートしている。

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