独立系書店店主が選ぶ　社会人が「正しく伝わる日本語」を話せるようになる本5選

2023.12.22

会議でのプレゼン、クライアントとの商談など、社会人として日々奮闘している人たちにとって、日本語を話す行為は切っても切り離せない。とはいえ、敬語の使い方がよく分からない人や論理的に話すことが苦手な人は多いかもしれない。今回は、そんな悩みを抱えている人たちに向けて5冊の本を紹介する。あらためて、日本語と向き合う時間を作ってみてはいかがだろうか。

1冊目！　敬語の使い方でもう混乱しない！！『図解　社会人の基本　敬語・話し方大全』岩下宣子著

社会人になると付き合う人間の幅が一気に広がり、その時々の状況に合わせた話し方や適切な言葉選びが必須になる。日本語が難しいのは敬語の種類が多く、「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」を常に使い分ける必要があるからだろう。敬語は、頭で考えていてもなかなか身につかないものだが、著者の岩下氏は、失敗を恐れずにとにかくどんどん使ってみることが大切だという。

本書は、「言葉づかいの基礎知識」「敬語の使い方」「丁寧な言い回し」「コミュニケーションの言葉」「言葉づかいの作法」「困った時のものの言い方」「クイズで育てる言葉力」の全7章で構成。実際の利用シーンに合わせた文例が豊富に掲載されているため、明日の会話から即座に実践投入できる。特に、敬語を使うときには「ウチ」（社内）と「ソト」（社外）を意識しながら話すと、言葉選びに迷いがなくなるという。この考え方は、公的な場所と私的な場所における話法の使い分けにも応用できそうだ。

社会人としての話し方の基本を身につけるための1冊としてオススメしたい。

『図解　社会人の基本　敬語・話し方大全』
発行：講談社
著者：岩下宣子
定価：1100円（税込）
発行日：2016年3月16日
判型：四六判
頁数：224P
ISBN：978-4-06-299846-8
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000213645

2冊目！　知性と教養は話す言葉で演出できる『語彙力がないまま社会人になってしまった人へ【超｢基礎｣編】』山口謠司著

語彙力があるかないかは、少し会話をすればおおよそ分かるものだ。もちろん、これはどんな場合でも難しい言葉を使えばよいという意味ではない。ただ、社会人として最低限の基本的な語彙力は身につけておきたい。

たとえば、第三者にメールで何かを依頼するとき、「いつもお世話になっております」「◯◯していただけますと幸いです」などのような文章を書いたことがある人は多いだろう。この文章の品格を一段階レベルアップするにはどうすれば良いか？　答えは「平素より大変お世話になっております」「◯◯していただけると幸甚に存じます」となる。

本書では、「平素」「幸甚」などをはじめ、「説明」「説得」「コミュニケーション」を行うときに役立つ51語の言葉を厳選。機械的に暗記するのではなく、それぞれの言葉の「成り立ち」「語源」「歴史」に注目しながら、自然と言葉が身につくように工夫されている。知性や教養をさりげなく相手にアピールするには語彙力を高めることが近道だ。まずは本書を手にとり、51語の基礎言語から学んでみよう。

『語彙力がないまま社会人になってしまった人へ【超｢基礎｣編】』
発行：ワニブックス
著者：山口謠司
定価：1540円（税込）
発行日：2018年1月23日
判型：B6変形
頁数：270P
ISBN：978-4-8470-9652-5
https://www.wani.co.jp/event.php?id=5737

3冊目！　あなたの雑談力が上がる深くて広い日本語の世界『あなたの日本語だいじょうぶ？　SNS時代の言葉力』金田一秀穂著

ネット社会全盛のいま、コロナ禍の時代とその前後の時代において、日本語はどのように変化し、使われてきたのか。言語学者の金田一秀穂氏は、「日本語を大切にすることは、正直な言葉遣いをすること」だと語る。

本書は3本の書き下ろしエッセイと、月刊誌『サライ』（小学館）に連載されていた記事をまとめた1冊。第4章の「不思議な巷の日本語」では、「二刀流」「聖地」「激おこぷんぷん丸」などの流行り言葉のほか、時代の流れとともに新たに生まれ、そして消えていった言葉を取り上げる。それぞれの文章は短文のため、スキマ時間を使って気軽に読み進めることができる。

時代が変われば、言葉の使われ方も変わるものだが、氏の発想力はあちらこちらへと展開していき、私たちが普段何気なく耳にしたり、口にしたりしている言葉がもつ本来の意味や語法が分かって楽しい。読者はただ深遠なる言葉の海に身を任せて、ぷかぷかと海上に漂っていればいい。日本語を知り尽くした著者が、縦横無尽に日本語を語る軽妙なエッセイ集である。

『あなたの日本語だいじょうぶ？　SNS時代の言葉力』
発行：暮しの手帖社
著者：金田一秀穂
定価：1650円（税込）
発行日：2023年7月12日
判型：四六判変形
頁数：284P
ISBN：978-4-7660-0235-5
https://store.kurashi-no-techo.co.jp/products/1211

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