大ベストセラーで人生をデザインしなおそう！ ──独立系書店店主が選ぶ「幸せな自分時間を取り戻す」ための4冊

2024.11.8

コロナ禍で日常生活の変更を余儀なくされ、「本当は自分がどうしたいか、何が合っているのか」に気づき、生き方や働き方を再構築した人も多い。いまだ収束はしきらないものの、ほぼコロナ禍以前の生活に戻った現在、あなたは思ったとおりの時間を送れているだろうか？

そんな悩みや不安の解消にこそ、書籍は本領を発揮する。「幸せ」や「人生」は人類にとって普遍的なテーマだけに、昔からこの分野の「自己啓発本」が多く存在する。しかも、近年ベストセラーになっている作品は、しっかりしたエビデンスに基づいていたり、理論的・実践的であることが特長だ。

今回は、改めて自分自身と対話することで理想の人生に近づけていくための、オススメ書籍を4冊紹介する。

科学的研究に基づいた「幸せな人生」の真理とは

人生において叶えたいことや成し遂げたいこと、大切にしているものは人それぞれ異なるが、その先にある共通の願望は「幸せな人生を送ること」ではないだろうか。その疑問を科学的に解明しようと、1938年に米国で壮大な科学研究プロジェクトである「ハーバード成人発達研究」が始まった。幸せな人生の条件とは何か？　現在も調査継続中ではあるが、80年超にわたる研究の経過からある結論が明確になってきた。

本書は、本研究の4代目責任者による、「幸せな人生」に対する科学的根拠の裏付けを得た知見と考察をまとめたもの。その中で、幸せな人生のメインテーマとなるのが、ズバリ人間関係。心が通い合う良質な人間関係の中で生きていることが、人々の心身に大きく影響するという。例えば、老年期の状態調査では、50歳のときの人間関係の満足度が高い人ほど、精神的にも肉体的にも健康な80歳を迎えていることが判明している。

「幸せな人生は偶然の賜物（たまもの）ではなく、時間をかけて展開していく一つのプロセスだ」と著者は指摘。人とのつながりそのものを目的に生きていくことの重要性を突きつける。その手段として挙げられるのが、好奇心を失わず人に興味を持つ、損得勘定なしに心を開いて相手の話を聞き、自分の話も聞いてもらうなど、シンプルだが日頃おろそかにしがちなことばかり。

地位やお金といった社会が定義する幸せに惑わされずに、自分が守られているという感覚を得られる安全な人間関係を構築していくことの大切さに気づかせてくれる1冊だ。

『グッド・ライフ幸せになるのに、遅すぎることはない』
発行：辰巳出版
著者：ロバート・ウォールディンガーマーク・シュルツ著／児島修訳
定価：1870円（税込）
発行日：2023年6月20日
判型：四六判
頁数：408P
ISBN：978-4-7778-3039-8
https://tg-net.co.jp/lp01-2/

自己決定した時間軸で生きるためのヒントに

時短に効率化、生産性を向上させて時間を有効活用できてこそ、豊かな人生のように思われていた現代。しかし、コロナ禍でそれら全ての自動運転がストップした。そして人々は疑問に思った。自分の生き方はこれでいいのか、これからどうするのかということを。

本書は、企業の戦略デザイナーとして活躍していた著者が、自身の生き方についての価値観の変化を赤裸々に書き記した思考の履歴だ。著者は自分に起こった内的変化を「トランジション」と定義し、他人時間からじぶん時間へのシフトを模索、構築していった。ラットレース的な生き方から脱却すべく、不安を抱えながらも24時間のポートフォリオを書き換え、住居や働き方から、人間関係まで公私にわたり挑戦を始めていく。新しい自分になるための乗り越えるべき3段階のステップを具体的に説いた「トランジション理論」は、じぶん時間へシフトしていくために参考になるメソッドやビジョンづくりが満載だ。

著者に起こった変化や思考は、決して特別なものではなく、大半の社会人にも当てはまるだろう。本書にある提唱や方向性は、自分が感じていたことが言語化されているようで、スッキリすると同時に改めて考えるきっかけになる。と同時に、自分だけのトランジションを貫き、地道に実践を積み重ねていくことがすべてであることを痛感する。

社会が元の状態に戻るにつれ、コロナ禍では手放せると思ったはずの他人軸や社会的価値観に再び支配されていないだろうか。「こんなことできたらいいよね」と他人の成功談として流さず、誰とも比べない自分軸のトランジションに向き合って、少しずつ行動に踏み出すためのヒントを探ってほしい。