大ベストセラーで人生をデザインしなおそう！ ──独立系書店店主が選ぶ「幸せな自分時間を取り戻す」ための4冊

2024.11.8

自分の仕事や人生観のデザイナーになる

一生の大半の時間を費やす「仕事とキャリア」。現状は大きな問題を抱えていなくても、人は「自分はどうなりたいか」を常に模索し、正解を探し続けてしまう。

「どうすれば学生たちが有意義な人生や仕事をデザインする後押しができるか？」という疑問から始まり、世界100大学で採用されたスタンフォード大学のライフデザイン講座。本書は、その思考法から具体的な実践方法までを詰め込んだ参考書のような1冊だ。

著者が提示するライフデザインとは、デザイナーの考えを身につけ、まだ存在しないキャリアや人生を想像して未来の自分を作るというもの。特に重要なポイントは「前に進む。そのためには考えるのでなく築く」こと。ただ想像するだけでなく、プロトタイプ（試作品）を作り、好奇心を持ってプロセスごと楽しみながら試していく。問題があれば見直し、失敗なら打ち切って、アップデートを重ねながら前に進んでいく。

著者が考える「ライフデザインに必要な5つの行動」について、それぞれどう実践していくか、ツールを使ったワークも含めて詳細に解説されている。実際のワークにも取り組めるので、自分の棚卸しができて、バランス良くフラットな視野で人生と仕事観を見つめ直すことができるだろう。

著者の主張は、成功者の人生を築こうという自己啓発ではない。人生はプロセスであり、ゴールのない旅のようなもの。人生に正解はないから、プロトタイプを作って自由に試し、自分で選択して決めていく方法を学び続けることが大切というものだ。収録されているワークはかなりハードだが、本気で取り組むと、これまでにない人生の捉え方ができるだろう。

『スタンフォード式人生デザイン講座』
発行：早川書房
著者：ビル・バーネット、デイヴ・エヴァンス著／千葉敏生訳
定価：880円（税込）
発行日：2019年10月3日
判型：文庫判
頁数：352P
ISBN：978-4-1505-0546-2
https://www.hayakawa-online.co.jp/shop/g/g0000090546/

処世術ではない本物の「マインドフルネス」を

ビジネスでもプライベートでも「マインドフルネス」の重要性が唱えられているが、実際に体得するのは容易ではない。そして、人生をただ楽にするテクニックでなく、自分にとって本当の豊かさを見出すために、根気よく本気でマインドフルネスに取り組むとどのような変化が表れるのか。

本書は、人生に絶望していた少年、ジムの体験を通して「マインドフルネスは人生を変えられるのか」を物語形式で説いた1冊。ジムが訪れた手品用品店で偶然出会った女性、ルースから、「本物のマジック」を教えてもらうことで、ジムは少しずつ人生を切り開いていく。

一見するとノウハウが詰まった自己啓発本に思われるが、実際に貧困家庭で育ち、大学進学も諦めていたという著者の実体験に基づいた自伝でもある。脳外科医になりマインドフルネスが心臓に作用するという科学的根拠を再認識した著者は、脳神経科学などの専門的な知見を織り交ぜ、共感性や利他主義についても論じている。

ルースに教わったマジックをもとにジムが毎日考えている「心を開く10カ条」は、どれもごく真っ当な教えだ。その教えを地道に続けたジムは「環境に自分を決めさせてはいけないことに気がついた。すべての人が大切で、価値があり、尊厳と敬意ある扱いに値する。すべての人は愛される資格がある。そしてすべての人が挑戦したりやり直したりする機会を与えられるべきだ」と心に留めて生きている。

「本物のマジック」は自分自身の心を開いて、体を緩めることを許し、何より実行している自分を信じることへの試練でもある。実際にジムがルースに教わった方法を追体験しながら読み進められるので、実践してみる価値は大いにあるだろう。

『スタンフォードの脳外科医が教わった人生の扉を開く最強のマジック』
発行：プレジデント社
著者：ジェームズ・ドゥティ著／関美和訳
定価：1870円（税込）
発行日：2016年11月15日
判型：四六判
頁数：296P
ISBN：978-4-8334-2201-7
https://presidentstore.jp/category/BOOKS/002201.html

自分の棚卸しをして最適解を探ってみる

「自分の時間を生きる」という考え方は、注目が高まっているテーマではあるが、上記4冊のうち2冊はコロナ禍以前に発行されたもの。どうしたら幸せな人生を送れるのかは、人々が悩み迷いながら模索する永遠のテーマともいえる。

自分のことなのに、なぜ自分の決めた生き方に確信が得られないのか。それは、人は社会というしがらみの中で生きているからだ。自分が築いた価値観と社会的定義の間で心を揺さぶられ、「人から見て」理想的、もしくはとがめられない人生を、人は無意識に選択してしまう。

私たちはすべてを持つことはできないし、何かを手放さないと何かを手に入れることができない。まずは自分の棚卸しをして、何があなたの幸せでがんばりたいことか、何を手放せて負担を軽くすることができるのかをじっくり考えてみよう。すぐに変えられなくても、確固たる自分軸を持っておくと、点をつなげて線にすることもできる。正解を選ぶのでなく、選んだものを正解にする力を養うためのサポート役として、紹介した書籍を活用してください。