「AIで未来を創る」GMOインターネットグループが生成AIの活用推進で目指すもの

i4U編集部

AIGMOインターネットグループインタビュー

「AIパスポート」はパートナー全員をおのずと“AI人財”にする仕組み

——「GMO AIパスポート」を全パートナーが受検し、合格率100%とするのは、そう簡単なことには思えません。どのように達成したのですか。

それはもう「やると決めたらやる」だけです(笑)。目標に向かって走るのみ。これはGMOインターネットグループが長年培ってきた性質でもありますし、私個人も「たとえ能力の差があったとしても、できないことなんてこの世にはない」をモットーに生きています。

「GMO AIパスポート」の受検については、GMOインターネットグループの人事チームが特に協力して進めてくれました。何しろグループの全パートナーですから、各グループの人事と協力して、徹底的にやったわけです。

このAIパスポートは、AIに関する表層的な知識を求めるものではなく、AIを活用する上でのコツや注意すべき点が身につくような設問にしました。合格するとAIの基本的な活用方法がおのずと身につくことを目指しました。

そして同時に全パートナー参加必須の「AIセミナー」も毎月2回開催していましたし、先ほどお話しした「GMO Library」のAI関連書籍も日に日に充実していったので、それぞれの施策の相乗効果が現れて、「必ずAI人財になる」という空気を醸成できたと思います。みんな「やらなきゃ!」と危機感を持っていたはずです。

ですからオフィス内での日常会話でも「“AIパスポート”、どうやってクリアした?」なんて話題が飛び交っていましたよ。

——AI人財を育てる環境づくりでいうと、人財育成プログラムの「短期AI人財育成プログラム AI虎の穴」(以下、虎の穴)もありますね。

これは主に非エンジニアのパートナーを対象にした短期の教育プログラムです。3カ月、およそ120時間かけて、AIやローコード、ノーコードの技術を学びます。最終的にはそれらの技術を使った業務の効率化・自動化ツールを自分で作成できるようになることを目的にしています。

あえて「非エンジニア」と銘打ったのには理由があります。基本的にエンジニアには、業務を自動化する能力が備わっています。AIリテラシーも高い場合が多い。GMOインターネットグループでは、エンジニアに限らず全てのパートナーをIT・AI人財にする目的があり、現在の採用方針もそれに沿っています。ですから虎の穴はグループ内にいる非エンジニアも全てIT・AI人財にすることを目標に掲げました。

虎の穴を受講するパートナーたちは、それはもう必死になって食らいついてきてくれますよ! ちょうど第1タームが終わって、第2タームが始まりましたが、こちらの予想を上回る人数のパートナーから受講申し込みがありました。グループ全体でAI人財を育てる環境が整ったと感じますね。

虎の穴を通して、エンジニアと非エンジニアが共通言語を持つことで、コミュニケーションの質も向上しました。これこそが最も素晴らしい無形の財産だと感じますし、そんな財産を築けていることに、やりがいと誇りを持っています。

形のないコミュニケーションの拡大を全身で表現しようとする李氏。ちなみに社内での愛称は"JB(ジェイビー)"

ちなみにグループのうち、GMOインターネットグループ株式会社では、社内のSlack上でGPT-4、Gemini、Claude 3などの最新生成AIを、パートナーが安全かつ気軽に使えるようにしています。

熊谷代表は日頃からさまざまな生成AIに同じ質問やプロンプトを投げ、それぞれのAIからの回答をもとに、さらに思考を掘り下げています。生成AIの回答は、AIごとに特徴がありますし、質問するたびに変化があります。

異なる特徴を持つ生成AIに同じ質問をすることは、AIパスポートでも推奨していたAI活用のノウハウです。こうした使い方を、全パートナーが安全な環境で実践することが、組織の戦闘力の向上につながると考えたわけです。

そこでSlack上でGemini、Claude、ChatGPTなどのAIたちに同時にメンションするだけで、異なった方向性の回答が得られるSlackアプリを作りました。そして生成された回答に対するブラッシュアップも、複数のAIが同時に行います。多角的かつ多層的にAIを利用できるので、私たちにとって極めて有用な武器(ツール)となっています。

AI活用によって約10万時間を創出

——「AIしあおうぜ!プロジェクト」によって、グループ内ではどのような成果が出ていますか。

まず定量的な成果をお話しますと、生成AI活用によって、グループ全体で1カ月あたり約10万6000時間を創出できました。この数字は、各社・全パートナーに対して定期的に調査を行い、算出しています。

5カ月前に行った前回調査と比較しても、1万時間以上の業務時間を追加で創出することに成功しています。そして興味深いことに、「AI 活用によって1人あたりが創出した時間」は、第1回の調査と第2回とで、さほど大きくは変わってはいないんですね。

——つまりAIを活用しているパートナーの数が増えている、ということでしょうか。

そうです。AIそのものが進化すればさらに1人当たりの業務効率化は進むでしょうが、現段階のAIのレベルでいえば、AIをフル活用できていると考えています。

ですから現在は「AI業務活用度」の向上を目標としています。AIしあおうぜ!プロジェクトでは、パートナーのAI業務活用度を、現在の80%から90%まで年内に引き上げを目指しています。

どのように引き上げるかといいますと、 AIの活用方法を模索中のパートナーのAIに対する意識や知識をさらに高め、活用率アップにつなげます。これがプロジェクトの目下の重要ミッションです。

またGMOインターネットグループでは、1年間で18億円相当の業務効率化を実現することを、2024年度の目標に設定しました。これは各社・各パートナーの業務を洗い出してコスト削減できるところはどこなのかを具体的に算出して、定めた目標です。

ちなみに定性的なところでいうと、先ほどご紹介した社内SNSのGMO Geniusには、毎日さまざまな投稿が続いています。モチベーションの高いパートナーが多く参加してくれているのを肌で感じています。

人とAIはどのように役割分担をするのか

——AIが進化を続けるなかで、人とAIはどのように役割分担をしていくと考えていますか。

人間にはそれぞれに特性があります。ですから人とAIとの役割分担について一言で申し上げるのは難しいのですが、その人の得意ではない部分をAIが補うような関係になると思いますね。

一般的には「たたき台をまずAIが作る」流れが進むはずです。0から1を生み出し、たたき台を作るときには最もコストが発生します。そこをAIが短時間で作って、仕上げの部分で人間がクリエイティビティを発揮して磨き上げていく。それが人間の仕事だと考えています。


人間にはAIが作った「たたき台」から宝を見つける「目利き力」が求められるわけですから、AIの進化と共に、人間そのものも研さんを重ねる必要があるでしょうね。

JBが目指す場所はいつだって天よりも高い。まさに"ムーンショット”だ

——AI革命時代となる今後、GMOインターネットグループはどのような立ち位置を目指していきますか。

まず、私たちGMOインターネットグループがこれまで大切にしてきた夢やビジョン、フィロソフィーは変わらないと考えています。つまり、インターネットの産業の中で圧倒的No.1になる夢は不変なのです。必ず1番になります。

そのうえで、インターネットの中でAIの存在が大きくなっていくのだと捉えています。ですから、AIのインフラ、つまりAIの“場”を提供していきます。私たちAIしあおうぜ!プロジェクトの活動も、その大きな流れの一部なのです。

AI産業を豊かに楽しくし、新たなAIの文化・産業とお客様の「笑顔」「感動」を創造し、社会と人々に貢献していきます。これは私たちGMOインターネットグループのフィロソフィーと重なるところであり、「AIで未来を創る」とはそういうことだと考えています。

とてつもなく大きなことを語っているように聞こえるかもしれません。でも、私たちは本当にそう信じて、計画を立て、その目標に向かっているのです。

——GMOインターネットグループの目標は、ジャンベさん自身の目標でもあるのですね。最後にメッセージをお願いします。

AI推進に加えて、私のもうひとつの仕事は社内のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進です。「ツールや環境を作る人が苦労することで、みんなが楽になることが、一番素晴らしい」」をモットーに働いてきました。

その私のモットーとAIは、とても相性がいいのです。AIが進化し、それを利用できる環境を整え、活用ノウハウが確立されれば、みんなが楽になります。これこそ、まさに「デジタルトランスフォーメーション」だと思います。

GMOインターネットグループが生み出すサービスやテクノロジーで、日本全体が豊かに、楽に、楽しくなる。そんな未来に向けて全力疾走することをお約束します。
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i4U編集部

i4U(アイ・フォー・ユー)は、新しい「情報」と「感動」と「笑顔」をお届けする、GMOインターネットグループのオウンドメディアです。有名メディアでの執筆・編集経験者による記事をお楽しみください。

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