2025年4〜6月に放送された『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(以下、ジークアクス)』。ご存じ「機動戦士ガンダム」シリーズの最新作であり、「新世紀エヴァンゲリオン」シリーズを手がけるスタジオカラーが制作に参加していることも話題となって、大人気を博した。
SF作品であるガンダムだが、リアリティをもって描かれていることもあり、劇中に登場するテクノロジーは私たちにさまざまなインスピレーションを与えてくれる。そこでこんな問いかけをしてみよう。「ガンダムや、ジークアクスに登場する先端技術は、どこまで実現され得るのだろうか?」
最終回は、ガンダムシリーズの中心である「モビルスーツ(Mobile Suites)」、すなわち「巨大二足歩行ロボット」について考えてみたい。
第1回:「サイコミュ」と「BMI」
第2回:「スペースコロニー」
第3回:「ハロ」と「AI」
SF作品であるガンダムだが、リアリティをもって描かれていることもあり、劇中に登場するテクノロジーは私たちにさまざまなインスピレーションを与えてくれる。そこでこんな問いかけをしてみよう。「ガンダムや、ジークアクスに登場する先端技術は、どこまで実現され得るのだろうか?」
最終回は、ガンダムシリーズの中心である「モビルスーツ(Mobile Suites)」、すなわち「巨大二足歩行ロボット」について考えてみたい。
第1回:「サイコミュ」と「BMI」
第2回:「スペースコロニー」
第3回:「ハロ」と「AI」
モビルスーツとは何か
モビルスーツとは、ガンダムに登場する巨大二足歩行ロボット型兵器の総称で、全高は約20m(初代ガンダムとジークアクスはいずれも18m)に設定されている。一般的なビルでいえば6階ほどの高さで、近くから見上げれば首が痛くなるほどだ。
モビルスーツは、これまでお台場や横浜などで実物大の立像が公開されており、その大きさを実感した人も多いのではないだろうか(現在、大阪・関西万博で展示されている「実物大ガンダム像」は、残念ながら片膝をついたポーズとなっているが)。
モビルスーツは、これまでお台場や横浜などで実物大の立像が公開されており、その大きさを実感した人も多いのではないだろうか(現在、大阪・関西万博で展示されている「実物大ガンダム像」は、残念ながら片膝をついたポーズとなっているが)。
大阪・関西万博で展示されている「実物大ガンダム像」(GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION | ティザーPV 第2弾)
via www.youtube.com
第1回の記事でも触れたように、ガンダムシリーズでは「ミノフスキー粒子」という設定が、このような巨大ロボットの存在に説得力を与えている。
ミノフスキー粒子とは、ガンダム作品に登場する架空の物質で、空間に散布されるとレーダーや無線通信を無効化する性質を持つ。この粒子が戦場にまかれると、遠隔による誘導や通信が不可能となり、視界に頼った「有視界戦闘」が基本となる。こうして、モビルスーツのような巨大ロボットによる近接戦闘が主流になった、という設定だ。
とはいえ、現実にはミノフスキー粒子のような物質は存在しない。つまり、モビルスーツの実現可能性を考える上で、この設定を取り払う必要がある。その上で、巨大二足歩行ロボットが現実の技術で実現できるのかを考えてみよう。
ミノフスキー粒子とは、ガンダム作品に登場する架空の物質で、空間に散布されるとレーダーや無線通信を無効化する性質を持つ。この粒子が戦場にまかれると、遠隔による誘導や通信が不可能となり、視界に頼った「有視界戦闘」が基本となる。こうして、モビルスーツのような巨大ロボットによる近接戦闘が主流になった、という設定だ。
とはいえ、現実にはミノフスキー粒子のような物質は存在しない。つまり、モビルスーツの実現可能性を考える上で、この設定を取り払う必要がある。その上で、巨大二足歩行ロボットが現実の技術で実現できるのかを考えてみよう。
進化する二足歩行技術
まずは二足歩行技術が現実にどこまで進んでいるのかを見てみよう。ガンダムシリーズには、脚部が無限軌道(いわゆるキャタピラー)になった機体や、宇宙戦に特化して足を持たない機体も登場するが、それでも「モビルスーツ」といえば二足歩行の機体が欠かせない。うれしいことに、まだ人間サイズに限られるものの、高度な二足歩行は既に現実のものとなりつつある。
現代の人型ロボット技術の頂点に立つもののひとつが、ボストン・ダイナミクスの「Atlas」だ。最新モデルでは、従来の油圧駆動から完全電動式へと移行し、より強力かつ広範囲な動作が可能になった。状況によっては、人間を上回るほどの運動能力を発揮する場面もある。
百聞は一見にしかず。次の映像は、ボストン・ダイナミクスの公式チャンネルで公開されているAtlasの動作デモだ。
現代の人型ロボット技術の頂点に立つもののひとつが、ボストン・ダイナミクスの「Atlas」だ。最新モデルでは、従来の油圧駆動から完全電動式へと移行し、より強力かつ広範囲な動作が可能になった。状況によっては、人間を上回るほどの運動能力を発揮する場面もある。
百聞は一見にしかず。次の映像は、ボストン・ダイナミクスの公式チャンネルで公開されているAtlasの動作デモだ。
Atlasの動作デモ(Walk, Run, Crawl, RL Fun | Boston Dynamics | Atlas)
via www.youtube.com
正直なところ、筆者はAtlasほどダンスをうまく踊れる気がしない。公式情報によれば、Atlasはハードウェアだけでなく制御システムの進化も著しく、AI技術も活用し、力強さとバランスを両立した運動能力と俊敏性を高度に実現している。もちろん、これはあくまで研究室内でのデモンストレーションにとどまっており、量産化されているわけではないが、それでもガンダム実現への第一歩はクリアしているといえるのではないだろうか。

小林 啓倫
経営コンサルタント
1973年東京都生まれ、獨協大学外国語学部卒、筑波大学大学院修士課程修了。システムエンジニアとしてキャリアを積んだ後、米バブソン大学にてMBAを取得。その後外資系コンサルティングファーム、国内ベンチャー企業などで活動。著書に『FinTechが変える!金融×テクノロジーが生み出す新たなビジネス』(朝日新聞出版)、『IoTビジネスモデル革命』(朝日新聞出版)、訳書に『ソーシャル物理学』(アレックス・ペントランド著、草思社)、『シンギュラリティ大学が教える 飛躍する方法』(サリム・イスマイル著、日経BP)など多数。