Steam運営のValveが手掛けるポータブル型PC「Steam Deck」はゲーム業界にパラダイムシフトを引き起こすか

7月16日、PCゲーム配信やコミュニティ運営で知られるプラットフォーム「Steam」を運営する米国のValve Corporationが、小型ゲーム機のような外観で持ち運んで手軽にPCゲームが楽しめるポータブル型ゲーミングPC「Steam Deck」を発表した。

最大の魅力は最新ゲーム機の「PlayStation 5(PS5)」や「Xbox Series X」などと同じAMD社製のAPU(CPUとGPUが1つになった統合型プロセッサー)を搭載しながら、399ドル~649ドル(約4.4万円〜7.1万円)という、ゲーミングPCとしては非常に低価格で、3モデルが提供される点だ。

7インチ、解像度1280×800ドットのマルチタッチ対応ディスプレイを搭載し、メモリは16GBを内蔵。3モデルの差はストレージ容量の違いのみでフレームレートやグラフィックの質に差はない。399ドルの最安値モデルは容量64GB、PCIe Gen 2×1接続のeMMC、529ドルの中位モデルでは容量256GB、PCIe Gen 3×4接続のNVMe SSD、649ドルの最上位モデルは容量512GB、PCIe Gen 3×4接続のNVMe SSDのストレージをそれぞれ内蔵する。

NVMe SSDは、従来のストレージ接続規格とは異なるSSD接続規格で、より高速にデータ転送することを可能にする仕組み。書き込み/読み込み速度の速いSSDとのデータ通信をより高速に行えるようになるため、快適なゲームデータのローディングとプレイが期待できる。399ドルモデルに採用されているeMMCはSSDより小型で低容量、低価格なストレージで、SSDよりは速度が遅めとなる。

OSには独自開発の「Steam OS」の最新バージョン3.0を搭載。キーボードなどを接続せずに、本体に備えるスティックやボタン、タッチパネルなどで、すぐに操作可能な作りになっている。Steamにログインすることで、4万タイトルを超える膨大なライブラリの中から、Steam OS対応ゲームが手軽にプレイできる。

北米やヨーロッパでは2021年12月より販売を開始する、このゲーム専用機テイストのポータブルPCが、ゲーム業界にどのような影響をもたらすのか。その可能性について考えてみる。

ポータブルPCとしての「Steam Deck」

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外観は完全に携帯型ゲーム機のような「Steam Deck」 製品画像は全て「Steam Deck」のホームページより
ポータブルPCとして見ると「STEAM Deck」は非常に魅力的な機種と言える。何よりも最安が399ドル、最上位でも649ドルと、一般的なノートPCやコンパクトサイズのウルトラモバイルPC(UMPC)などと比べて、性能の割に低価格に抑えられている点は大きな魅力のひとつである。PS5やXbox Series Xクラスのゲームが動作するAPUと16GBもの大容量メインメモリを搭載して649ドルというのは、UMPCなどと比べても非常にコストパフォーマンスが高い。

近年、小型のゲーミングPCを発表、発売してきたハードメーカーの製品と比較すると、One-Netbook Technology「ONEXPLAYER」の価格は13万台~21万円台と高スペックのノートPCと遜色ない。他にもGPD Technology「GPD WIN3」が12万円台~14万円台、AYA NEO「AYANEO 2021」は現段階では通常購入できないため、単純比較はできないが、クラウドファンディング時の価格で5422香港ドル(約7万6000円)~7927香港ドル(約11万2000円)と、いずれもかなり高額に設定されており、Steam Deckのコストパフォーマンスの高さが際立つ。

Valve社がSteam Deckを市場に投入するのは、あくまでもSteam全体の収益の向上が目的と考えれば、ハードウェア単体での利益を追及する必要はない。このため、販売価格を極限まで抑えることで、プラットフォーマーとしての拡大を目指したのだと思われる。
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ストレージの違いで3モデル用意する。おススメは中位モデルだがガンガンゲームをプレイするなら最上位モデルの方がいいだろう
Linuxをカスタマイズした独自開発の専用OS、Steam OS 3.0を採用することで、従来のWindows 10などのOSライセンス費用も省ける。また、OSをハードウェアに最適化することでパフォーマンスの向上などが見込める点も、Valve自身が手掛ける意味があるといえるだろう。

AMD社のAPUは一般的なPCなどと同じ内部構造のため、Windows 10などのOSをインストールすることも可能だ。Steamの公式サイトでも「OSを含めて自由にインストールできる」とアナウンスしている。Windows 10を別途インストールし、コンパクトなポータブルPCとして使うのも面白そうだ。

一方で価格相応とも言えるのがディスプレイ。7インチ、1280×800ドットと最近のノートPCなどと比較してみると、やや解像度が低めだ。ノートPCと異なり、キーボードやマウス相当のデバイスは備えられていないため、従来のノートPCのような使い方を想定している人には向かない。

逆に前述の「ONEXPLAYER」や「GPD WIN3」、「AYANEO 2021」ではいずれもOSとしてWindows 10を採用し、ゲーム以外にポータブルPCとしての利用も想定されている。このため汎用性は高いが、ゲームのパフォーマンスは犠牲になっている部分もある。

Steam Deck発売前の現時点で単純比較は難しいが、少なくともゲーミング性能に絞った場合、従来製品のレビューなどで語られている数字以上のパフォーマンスが、Steam Deckには期待できそうだ。

携帯ゲーム機としての「Steam Deck」

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人の手のサイズと比較すると意外と大きいようにも見える
携帯ゲーム機としてSteam Deckのハードウェアを見ると、最新のコンシューマゲーム機であるPS5やXbox Series Xと同様のハードウェア構成だ。これにより、高パフォーマンスが期待できるだけでなく、コンパクトな筐体への内蔵を可能としている。
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背面。上部のR1/R2、L1/L2ボタンに加えて両手で持った時にちょうど指が当たる位置にもボタンが搭載されている。上部と背面下部には冷却用のフィンが確認できる
マルチタッチディスプレイのリフレッシュレートは60Hz。外部ディスプレイへの出力時には4K/120Hz、8K/60Hzにも対応可能とされており、迫力ある画像が実現できそうだ。

同じような作りの携帯ゲーム機「Nintendo Swtich」の現行機では、解像度はフルHD(1920×1080ドット)/60fps、すなわち60Hz相当が最大であることを考えれば、Steam Deckのスペックのすごさが伝わるのではないだろうか。雑に言ってしまえば、Steam DeckはPS5やXbox Series Xなど、現役の据え置き型ゲーム機をコンパクトに持ち運べるようにしたようなイメージだ。
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大画面の外部ディスプレイ出力にも対応。外部ディスプレイ出力時には最大4K/120Hz、8K/60Hzにも対応するというから驚きのパフォーマンスだ。ディスプレイ出力や周辺機器が接続できる専用の公式ドックも発売予定
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