「NFT」がデジタルコンテンツマーケットに革命を起こすそのワケ

Jun Fukunaga

Web3・NFTインターネットカルチャークリエイターテクノロジー金融・銀行・暗号資産

デジタルアートに“資産”としての価値をもたらすNFT

今年に入ってから、音楽や映像、アート作品などのエンターテインメント分野でNFT(Non Fungible Token:ノン・ファンジブル・トークン​)の人気が急速に高まっている。海外はもとより、PerfumeやBABYMETALといった日本の人気アーティストもデジタルアートやトレーディングカードのNFT販売を発表するなど、海外での人気に呼応して、今では日本のエンタメ業界でもNFTブームは広がりつつある状況だ。

これまでデジタルデータ化された音楽や映像、アート作品などのデジタルコンテンツは、容易にコピー・改ざんができ、自由に配布することができたため、実際に手に取れる現物の貴金属やアート作品などとは違い、対価と引き換えなくても価値を享受することができた。結果として、本来報われるべきデジタルコンテンツの制作者は得るべき対価を享受できずにいた。

しかし、NFTは、暗号資産(仮想通貨)と同じく、参加者相互の検証が入るブロックチェーン上で発行および取引されるため、コピーや改ざんがしにくく、デジタルコンテンツであっても資産としての価値を持つ「偽造不可な鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータ」になっている。そのため現物のアート作品などのように、制作者オリジナルのコンテンツであることが保証されたものを引き渡し、制作者も確実に対価を得る取引を、仕組みとして担保することが可能になった。

「世界初ツイート」のNFTは約3億円で落札

NFTが今年になって話題となっているのは、オークションに出品されたNFTの多くが高額で取引されたことがきっかけになっている。Twitter創業者のジャック・ドーシー氏による自身の初ツイートが291万5835ドル(約3億1640万円)で落札されたことや、テスラを率いる起業家のイーロン・マスク氏による自作曲が100万ドル(約1億円)を超える入札額を記録したことは広く報じられた。エンタメ分野でもこのような高額でのNFT取引の話題も多い。

スポーツ業界では、NBA選手のハイライト動画を収めたデジタルトレーディングカードゲーム「NBA Top Shot」の売上高がこの1年の間に7億ドル(約760億円)を突破したことが報告されている。NBA Top Shotの人気カードは、数万ドルから数十万ドルで取引されることも少なくない。

コロナ禍による大きな影響を受けた音楽業界では、ビジネススクール出身の音楽プロデューサーでDJの3LAU(ブラウ)によるデジタルアルバム販売の収益が、1160万ドル(約12億8400万円)となり、コロナ禍により失われたライブ収入を補う巨額の利益がNFTによって生まれたことが大きな話題となった。

これによりアーティストたちの間でNFTブームが加熱し、今年4月にはForbes誌が選ぶ「世界で最も稼ぐDJ」1位の座を6年連続で獲得したCalvin Harris(カルヴィン・ハリス)もデジタルアート付きの音源をNFTとして販売。彼の「NFTは音楽業界に革命を起こすことができる」という発言は、ブームのさらなる加速を予感させるものとして注目を浴びた。

“作品”だけでなく“体験”に紐づいたNFT活用も始まる

このようにエンタメ分野では、トレーディングカードやデジタルアートと紐づけて、NFTを販売することがブームになったが、NFTの活用方法にも多様化が見られる。

例えば米国で3月31日に公開されたハリウッド映画『ゴジラvsコング』では、プロモーションの一環として作品に関連したNFTグッズが販売された。音楽業界ではロックバンド・Kings of Leon(キングス・オブ・レオン)が、アルバム購入者に対してライブツアーの最前列でライブを鑑賞できるなどの特典を設けたNFTを販売。これらは、映画鑑賞という体験に対してNFTを付加価値として与える、もしくはライブ鑑賞という体験をNFTの形でメインコンテンツに付加しているという例だ。

また、NFTはデジタルコンテンツという特性上、VRやARなどバーチャル空間との親和性も高い。すでにVRゲーム「VRChat」上で開催されるクラブイベントでは、VRクラブのアクセスキーが出品されるなど、体験と紐づけられたNFTは、バーチャル空間の中でも活用されている。

さらにデジタルコンテンツのコレクションという面では、ゲームなどで使うアバター用の服やスニーカーなどのコスチュームもNFT化され、バーチャル空間でのコレクション文化として発展していくことも考えられる。活用の幅が広がることで、今後、NFTの可能性はますます拡大するだろう。

NFT取引には“イーサリアム(ETH)”などの暗号資産(仮想通貨)が必要

さまざまな形で発行されているNFTは、Nifty Gateway、OpenSea、Rarible、Super RareといったNFTマーケットプレイスで取引されている。NFTを購入するにはまず、取引で使う“イーサリアム(ETH)”などの暗号資産(仮想通貨)を用意する必要がある。

NFT取引で現在、主流となっているのはイーサリアムだが、その理由はNFT発行において、イーサリアムのブロックチェーンに由来する「ERC721規格」が多く採用されているためだ。イーサリアムの特徴は契約情報がブロックチェーン上に永久に保存され、改ざんされるリスクが低い点である。この特性がNFTでも活用されている。

イーサリアムは、GMOインターネットグループの暗号資産FX・売買サービス「GMOコイン」でも購入できる。GMOインターネットグループは、デジタルコンテンツ市場が拡大していることを受け、暗号資産関連の事業・サービスを通じて蓄積してきたノウハウ、自社開発によるブロックチェーン技術を生かし、NFTを活用した事業に参入することを今年4月に決定。今後、デジタルコンテンツの決済・流通をカバーするNFTマーケットプレイス「アダム byGMO」の提供を予定している。
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Jun Fukunaga

ライター・インタビュワー
音楽、映画を中心にフードや生活雑貨まで幅広く執筆する雑食性フリーランスライター・インタビュワー。最近はバーチャルライブ関連ネタ多め。DJと音楽制作も少々。

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