GMOインターネットグループでは、暗号資産事業を戦略的事業分野と位置付けている。「2021年12月期 第1四半期決算説明会」において、GMOインターネットグループを率いる熊谷正寿代表は「NFT技術によるスマートコントラクト（※）の課金への応用には、インターネット、ブロックチェーンとの巡り会いと同じぐらいの衝撃を受けている」と語っている。

（※ スマートコントラクト：ブロックチェーンで契約や取引・決済などの処理を自動執行するプログラムのこと。第三者を介さずに、あらかじめ定義されたコード通りに処理を行うため、IoTや著作権管理、シェアリングなど、さまざまな分野での運用が見込まれている）

熊谷代表曰く、今までのインターネットは「登場以来26年にわたり、アーティストやクリエイターなどのIPホルダー（著作権者）は、コンテンツの数は出せど収入自体はそんなに増えておらず、あるいは違法コピーされて収入が減ってしまうことになった」という場だった。

しかしNFTは、デジタル資産であることから現物のアート作品と同じようにその権利を転売することで利益を上げることができるだけでなく、スマートコントラクトにより、従来のデジタルコンテンツでは不可能だった二次流通以降の販売による利益もIPホルダーに還元することができる。

そのような二次流通可能なNFTの特性を活かすことで、IPホルダーがさまざまなお金の管理の仕方をプログラム可能になる。世の中のデジタルコンテンツが全てNFT化すれば、デジタルコンテンツの流通革命が起きる。それが熊谷代表の今後のNFTに対する見立てだ。

「紙の書籍や電子書籍では、古本などの二次販売では著作権者には収入が入りません。NFTでは二次流通以降でも、サービスの設計次第で、ずっとIPホルダーに収入が入る形も可能です。こうなると、著作権者側からも転売をどんどんしてください、という世界になります。だから、今まで（単に）流通網として機能してきたインターネットが、IPホルダーにとって一気にものすごい収益源、大きな可能性を秘めたマーケットになり得るというのが、このNFTなんです」（熊谷代表）

また、そのデジタルコンテンツの流通革命を推進するプラットフォームとなるアダム byGMOについて、熊谷代表は「（アダム byGMOは）“最高にわかりやすいマーケット”になる」という。

具体的には「仮想通貨取引所の口座開設」「マーケットプレイスで購入」「NFTウォレットで管理」など、一般にNFTの取引で使いにくいとされるUI/UX（ユーザーインターフェイス／ユーザーエクスペリエンス）を、グループの技術力とサービスを使って一気通貫で最適化。これにより全てをワンストップで利用できることを目指す。

NFTが話題になる理由は、熊谷代表が言う「デジタルコンテンツの流通革命」という可能性のほかに、最近Twitterで導入された「Tip Jar（投げ銭）」機能や「Only Fans」「Patreon」といった、ファンが直接クリエイターを支援できるサービスが注目されていることにも少なからず関係がある。

買い手からするとNFTは、現段階では一部の資金力があるコレクターのみが参入できる市場である。しかし今後、市場の高騰が落ち着き、より一般消費者向けのNFTが出品されるようになれば、NFT購入を通じたIPホルダーであるアーティストやクリエイター支援の流れもより社会に浸透していくだろう。

そう考えると、NFTの売り手、買い手双方にとって、熊谷代表が語るような、わかりやすく使いやすいNFTマーケットプレイスの必要性がより高まっていくはずだ。“最高にわかりやすいマーケット”の登場が楽しみだ。