川やダムなどの水辺に出かけたとき、なんとなくやりたくなるのが、平たい石を投げて水面を跳ねさせる「水切り」遊び。何度か投げていれば、友人や家族たちも加わり何回跳ねたかを競いたくなるし、回数を伸ばすために、跳ねそうな形をしている石の吟味にもついつい夢中になってしまったりするものです。
ギネスブックに登録されている「Stone Skimming(水切り)」部門によると、1投あたりのスキップ回数が最も多かったのは、2013年にペンシルベニア州のカート・シュタイナーによって記録された88回。シュタイナーは、単にその辺の石ころを使って記録を出したわけではなく、地元にある五大湖のひとつエリー湖の周辺で、何千もの候補となる石を日頃から集めては選別する作業をしているのだそうです。
ギネスブックに登録されている「Stone Skimming(水切り)」部門によると、1投あたりのスキップ回数が最も多かったのは、2013年にペンシルベニア州のカート・シュタイナーによって記録された88回。シュタイナーは、単にその辺の石ころを使って記録を出したわけではなく、地元にある五大湖のひとつエリー湖の周辺で、何千もの候補となる石を日頃から集めては選別する作業をしているのだそうです。
Kurt Steiner - Insane Stone Skipping - World Record - 88 Skips
via www.youtube.com
ではどんな形の石が、何十回も水面をスキップしていく優秀な石なのでしょう? 常識的に考えれば、丸餅やはんぺんのようなのっぺりした形状で、比較的軽めの石が、軽くて投げやすく、跳ねる回数も伸びやすいと思われています。世界記録保持者のシュタイナーが集めている石も、YouTubeに公開されている映像を見る限りではかなり薄くて、まるでせんべいのような形をしているのがほとんど。ところが、水切りの仕方によっては、ほかにも最適な形状があるようです。
ジャガイモ型のほうが沈みにくい?
英ブリストル大学のライアン・パーマーと、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のフランク・スミスら数学者たちが、研究ジャーナル「王立学会の会報」に発表した研究「水切りにおける形状と質量の役割」によると、実はある程度重くジャガイモのような形の石のほうが、水面にのまれにくいと説明されています。
パーマーたちは、水切りの際に跳ねやすい石は、水面に接する部分の曲率と石の質量の間にどのような数学的な関係があるのかをモデル化・特定し、水に接する面が十分に湾曲しているものならば、普通ならドボンと沈んでしまいそうな重たい石でも、水面をジャンプさせることができると主張しています。
パーマーたちは、水切りの際に跳ねやすい石は、水面に接する部分の曲率と石の質量の間にどのような数学的な関係があるのかをモデル化・特定し、水に接する面が十分に湾曲しているものならば、普通ならドボンと沈んでしまいそうな重たい石でも、水面をジャンプさせることができると主張しています。
なぜ湾曲していれば水面でジャンプするのか?
この研究によれば、水に接する石の底面の湾曲率がある程度高ければ、それによって石に作用する力の加わり方が変わり、水を押し返す力が発生しやすくなるのだそう。石が水に最初に接触したときに、より深く、より長く水を押しつけるため、そのぶん水面の変形も大きくなり、ある時点でそれが元に戻ろうとする力に変わって石を上に押し上げるのです。
普通に考えれば、石の底面を可能な限り水平に着水するように投げるのが効果的のように思えます。しかし、計算上はやや丸っこいほうが、水が石を押し返す力を増やせるというのは意外なところです。
もちろん、あまりにかさばるような石では水面を跳ねたとしても、数十もの回数を稼ぐことは難しいはず。しかし数学者は、計算上は「もっと重たい石を使えば超弾性的な反発力を得られる」と論文で述べています。つまり、跳ねた回数を稼ぐために使う、水面を走るような小刻みな反発ではなく、高く大きな跳躍「メガバウンド」が1発ドカンと決まる可能性がある、ということです。パーマーは「これは常識を覆す結果だ。もし本当に実現できれば面白いことになるだろう」と述べています。
普通に考えれば、石の底面を可能な限り水平に着水するように投げるのが効果的のように思えます。しかし、計算上はやや丸っこいほうが、水が石を押し返す力を増やせるというのは意外なところです。
もちろん、あまりにかさばるような石では水面を跳ねたとしても、数十もの回数を稼ぐことは難しいはず。しかし数学者は、計算上は「もっと重たい石を使えば超弾性的な反発力を得られる」と論文で述べています。つまり、跳ねた回数を稼ぐために使う、水面を走るような小刻みな反発ではなく、高く大きな跳躍「メガバウンド」が1発ドカンと決まる可能性がある、ということです。パーマーは「これは常識を覆す結果だ。もし本当に実現できれば面白いことになるだろう」と述べています。
回数を増やしたいなら回転も必要
この研究では、石を回転させることは想定していません。一般的に、水切り石を投げるときは、指に石のヘリを引っかけて強くスピンをかけるほうが姿勢が安定し、スキップの回数も大きく伸びます。過去の研究によって判明していることですが、やはり石に加えるスピンは水切りにおける重要な要素だとされています。回転によってジャイロ効果が生まれ、投げるときに調節した角度を維持して空中を飛び、そのまま着水させられるため、うまくスキップにつなげられる可能性が高くなるわけです。
研究者は、回数をたくさん跳ねさせるには平らで丸い石を使い、回転をかける方が良いことを認めています。しかし、周囲を驚かせたいなら、今回の研究で示したように底面が湾曲して一見すると跳ねそうにない石を投げてみるのがお勧めだと述べています。
研究者は、回数をたくさん跳ねさせるには平らで丸い石を使い、回転をかける方が良いことを認めています。しかし、周囲を驚かせたいなら、今回の研究で示したように底面が湾曲して一見すると跳ねそうにない石を投げてみるのがお勧めだと述べています。
Munenori Taniguchi
ライター。ガジェット全般、宇宙、科学、音楽、モータースポーツetc.、電気・ネットワーク技術者。
実績媒体:TechnoEdge、Gadget Gate、Engadget日本版、Autoblog日本版、Forbes JAPAN他
Twitter:@mu_taniguchi