編集者・ライターはAIとどう働いている?メディア関係者の生成AI活用事情

i4U編集部

AISpeciali4U業務効率化

調べ物のGemini、構成のChatGPT、要約のClaude

—— 3つの生成AIをどのように使い分けていますか。

<ムコハタ>
Geminiは調べ物に強いですね。事実確認や下調べをして、調べて情報を整理して説明するのが上手です。Geminiからの回答に対して「それ、どこの情報を参照した?」と尋ねれば、Geminiが自分でまたGoogle検索をして、さらに「回答の再確認」というボタンを押せば、答えの参照元も明示してくれます。

参照元を人間が読むと「Geminiのこの回答は、ネットのどの情報を検索して導き出されたものなのか」「それは一次情報として正しいか」がすぐにわかります。Geminiの言っていることが正しそうなら「じゃあ、この内容を採用!」となる。検証がラクなんです。

ChatGPTは記事の構成を作るのがうまいですね。「今度、こういう人をインタビューする記事を作りたいが、どういう構成がいいかな?」って相談すると、構成案を出してくれます。質問をそのまま使うことはしませんが、切り口の参考になる。

あとは仕事とは関係ないけれど、冷蔵庫にある食材を全部伝えてレシピを考えてもらって、実際に作ってみて特においしかったものは保存しておいたり。

—— 役割分担が明確なんですね。Claudeには何を任せていますか。

<ムコハタ>
Claudeは、インタビュー記事の要約が得意です。私はAI文字起こしツールの「Rimo Voice」を使っているのですが、Rimo Voiceが書き起こしたテキストを一切編集せずに、そのままClaudeに読み込ませて、3000文字以内でまとめてもらったり。

ただClaudeがまとめたものを、そのまま使うことはしません。例えばインタビュー相手がすごくいいことを言ってくれて、その発言がそのままインタビュー記事の柱になるようなことがあります。そうした「この人、いいこと言ってる!」を、AIは見逃してしまいます。

だから、Claudeが要約をした後で「あの人いいこと言ってた気がするんだけどなあ」と引っかかったら、Rimo Voiceの書き起こしと照らし合わせながら、インタビューの録音データを聞き返しています。

—— Claudeが出力する日本語は「自然だ」と評判ですね。

<ムコハタ>
Claudeが作る文章は「修正がラク」な日本語ですね。例えばChatGPTが作った文章を「メディアに出せるレベル」までブラッシュアップするのは大変なんです。何から何まで直さないといけない場合もあります。もちろんClaudeによる文章もブラッシュアップは必要ではありますが、ChatGPTに比べれば、人間が手を加える規模はうんと少ないんです。

<岩崎>
われわれは文章を扱う仕事をしているから「AIの文章は、そのままメディアに出せるクオリティじゃない」とか「これは人間が書いていない、AIが書いている」とすぐに気が付くけれど、もしかしたら普通の人は、そんなに気にならないかもしれません。

<ムコハタ>
AIは「文章をふくらませること」はとても苦手で、文章をただただ水増ししがちなのですが、反対にニュース原稿などの情報だけを簡潔に伝える文章は得意な印象ですね。

<岩崎>
人間でいうと、診察時に要点だけをビシバシ伝えてくれるお医者さんみたいな文章ですね。「ハッキリ言ってくれて、話が早くてありがたいなあ」と思う患者さんもいるけれど、患者さんによっては「あの先生は、なんだか冷たくて怖い!」「淡々とガン告知してきた!ひどい!」って言われちゃうタイプの。

<鷹木>
そこは、すごく人間らしい視点ですよね。同じ文章の評価や印象が、受け手の性質や個性で変わっちゃう。例えば専門用語がずらっと並ぶ記事は、専門家には読みやすいけれど、一般の読者には「なんだか怖いな」と受け取られたり。怖いことは何も書いていないはずなのに、なんだか怖いと思われちゃう(笑)。

<ムコハタ>
AIが専門用語びっしりの文章を作っても、読み手はすぐに「なんで?初心者の私にはわからないんだけど?」って質問できたり、「子どもにもわかるように説明して」と命令するとかみ砕いて説明してくれたりするから、そういう意味では人間よりも優しいし、つき合いやすいかもしれません。迷惑そうなそぶりも見せず根気よく教えてくれる(笑)。

<鷹木>
文字数が一気に増えちゃいそう(笑)。1つの原稿を複数の読者層に合わせてAIにリライトさせるのは、実用レベルで使える気もします。

テキストはすぐ直せるが、イラストは直せない?

—— 早く実現してほしい生成AIのサービスはどんなものですか。

<ムコハタ>
図版を清書してくれるAIを待ち望んでいます! 今も図版を作るAIはあるにはあるのですが、クオリティが商業レベルに達していないというか、日本のメディアにフィットしない図版を生成してしまうんです。日本の絵や、日本で好まれるイラストを学習すると変わるはずです。

今はまだフリー素材の「いらすとや」のようなタッチの絵をAIが作るのは難しい。ちなみに、いらすとやさん自らが「AIいらすとや」を公開していますね。

<鷹木>
著作権のハードルや、クオリティに難があることをあれこれ言っていますが、生成AIには、めちゃくちゃ期待しているんです。

われわれがなぜ、こんなにも画像や動画の生成AIを求めているかといいますと、テキストは簡単に修正できるからなんです。でも、メディアに載せるマンガやイラストを修正したいとなると、それがどんなに小さな修正でも「全部描き直し!」になっちゃうんですよね。そこがマンガや動画のやっかいな点だと思います。

<ムコハタ>
それは、私たちが文章の修正には慣れているけれど、画像や絵を扱うことには慣れていないからなのかもしれません。画家や漫画家さんにしてみれば「文章を直すくらいなら、絵をパパッと直した方が早い!」と感じているかも。

<岩崎>
たしかに! 人によって得意なことと苦手なことが違いますもんね。

<鷹木>
文章を1カ所だけチョロッと直したつもりでも、そのチョロッと修正した内容が文章全体に波及することもありますもんね(笑)。「修正の大変さ」や「商用レベルのクオリティでのものづくり」という観点でいうなら、画像も文章も音楽も、必要な労力は似ているかも。

—— 求められる労力は同じで、人によって得手不得手があるから、生成AIに求めるものも人や仕事によって違うのですね。

<鷹木>
生成AIがメディアで活躍する方法を考えると、もちろん「文字起こし」や「校正」の仕事もイメージしやすいのですが、そうした仕事は編集者ならすぐにできてしまうので、本当に欲しい生成AIツールという観点で考えると、自分たちにはできないことを、AIに任せたいんです。

—— ありがとうございました。さあ、これをどう記事にしましょう。

<岩崎>
それこそChatGPTに相談して構成を作ってもらったらいいかも?

—— 確かに!
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i4U編集部

i4U(アイ・フォー・ユー)は、新しい「情報」と「感動」と「笑顔」をお届けする、GMOインターネットグループのオウンドメディアです。有名メディアでの執筆・編集経験者による記事をお楽しみください。

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