「聞く技術」は信頼度を高める──独立系書店店主が選ぶ「聞き上手」になれる本5選

2024.4.12

会話が楽になる44のコツを伝授

他人に興味が持てない、盛り上げなくてはとプレッシャーを感じる、相手の反応ばかりが気になる、沈黙が怖い……など、会話そのものが苦手な人は少なくない。そんな人は、話の聞き方を学ぶ前に、まずは聞くためのコツを体得して習慣づけてみてはいかがだろうか。自分の聞く姿勢次第で、双方が充実した会話のキャッチボールを成立させることができるだろう。

本書は、楽しく会話するには相手の話を聞けば良いと気づいた著者が、自身の苦手意識を克服した実体験をもとに、等身大の目線で具体的なアドバイスを伝授する。インタビュアーになったつもりで自分ではなく受け手が知りたそうなことを聞く、相手の話したい欲を削らない、注意すべき落とし穴など、ちょっとした心がけで会話はどんどん弾んでいくことが分かる。

巻末には「聞く習慣」をつくる44のコツリスト、1カ月のチャレンジワークも収録されているので、日頃の意識づけにも活用できる。相手に話してもらうことで、もっと楽に会話ができれば、そこでしか得られない生きた情報や発見があるはずだ。

『聞く習慣～自分と人生が変わるいちばん大切な会話力』
発行：クロスメディア・パブリッシング
著者：いしかわゆき
定価：1628円（税込）
発行日：2023年4月28日
判型：四六判
頁数：288P
ISBN：978-4-295-40823-9
https://book.cm-marketing.jp/books/9784295408239/

コミュニケーションを根本から見つめ直す

「その人の話をその人の話として聞く」という、実践的なテクニックが役に立たない、本音のコミュニケーションを掘り下げたことはあるだろうか。言葉をやりとりするということは、ただ情報伝達を行うわけではない。人が話す言葉には当人も無自覚な物語や感情を連れてきている可能性があるからだ。共感だけでは表面上の対話にしかとどまらず、たとえ意味の理解につながらなくても「あなたを知りたい」という気持ちが信頼を生む。

本書では、映画監督やケアの専門家などさまざまな状況や立場で話を「聞く」という活動を試みている4人をインタビュー。その振り返りを考察する。読み進めていくうちに、見過ごされがちな「他者を尊重すること」に改めて気づかされる。

問題の解決ばかりが優先され、尊厳の回復、同時に自分の感情を取り戻すことが後回しにされている現代社会への危機感にも言及。さらには、無自覚に行ってしまう自分の解釈やジャッジを手放すこと、そのうえで完全に聞ききることの重要性を伝えていく。「聞く」「話す」だけにとどまらず、言葉やその意味、対人関係における深いコミュニケーションとは何かを根本から考えさせられる1冊だ。

『聞くこと、話すこと。人が本当のことを口にするとき』
発行：大和書房
著者：尹雄大
定価：1870円（税込）
発行日：2023年5月10日
判型：四六判
頁数：264P
ISBN：978-4-479-39405-1
https://www.daiwashobo.co.jp/book/b10030448.html

とことん「聞く」に意識を向けてみよう

うまく「話すこと」が重要視されがちな今だからこそ、「聞くこと」により着目し、意識を集中してみてはどうだろうか。今回、紹介した5冊の書籍に共通しているポイントは、まずは相手が差し出す言葉を、主観を持たずに素直に聞く姿勢。聞くことができるようになると、相手との信頼関係が生まれるだけでなく、自分にも新たな気づきや出会いをもたらしてくれる。

「聞くこと」はただ一方的に受け身でいることではなく、相手に心を開いて尊重する姿勢を提示することでもある。話を聞いてもらったと感じた相手は、あなたの話にも耳を傾けたくなるだろう。発する言葉の数よりも、聞くことで相手の話を理解したという良質なキャッチボールができれば、コミュニケーションはもっと楽しいものになるはずだ。