「聞く技術」は信頼度を高める──独立系書店店主が選ぶ「聞き上手」になれる本5選

2024.4.12

日々のコミュニケーションで、相手の話を「聞く」ことをどれくらい意識しているだろうか。聞いているようで、興味を持てなかったり自分の主観を優先したりしがちで、案外聞き切ることは難しい。そこで、今回は「聞く」ことで相手を理解し、仕事でもプライベートでも役立つ5冊の本を紹介。話を「きちんと聞く」ことにじっくり取り組んでみると、より楽しく信頼し合える人間関係が築けるだろう。

小手先の技術から対話の本質までを網羅

「人に話を聞いてもらえない」「分かってもらえない」と感じるのは、実は自分が相手の話を聞くことができていないからだ。自分の心が追い詰められ、脅かされているとき、人は第三者の話をきちんと聞くことができない。仮に相手の話を聞けないなら、まずは「聞いてもらう」から始めてみよう。そうすることで、対話の循環が生まれるだろう。

本書では、「聞く」「聞いてもらう」ための、すぐに実践できる数々の小手先術を紹介するとともに、聞く人と聞いてもらう人に起こる対話による相互効果や、孤独と孤立など現代の社会問題にも触れながら、聞くことの本質を解いていく。カウンセリングの役割や対話における第三者の存在意義について、普遍的な人間関係に落とし込んで解説している。

目新しさは少ないが、日々の小さな配慮と基礎を徹底して学ぶことの重要性を実感できる。親しみやすい語り口のため、気負うことなく日常生活の中で「聞く」ことを意識したくなる。心の専門家である著者の経験と誠実な知見が詰まっており、対話の基本、本質を押さえた入門書にしてバイブルのような1冊だ。

『聞く技術聞いてもらう技術』
発行：筑摩書房
著者：東畑開人
定価：946円（税込）
発行日：2022年10月11日
判型：新書判
頁数：256P
ISBN：978-4-480-07509-3
https://www.chikumashobo.co.jp/special/kaito_tohata/

誰もが聞き上手になれるプロのテクニックが満載

インタビュアーのもっとも大切な役割は、取材対象者が本当に語りたい物語を引き出して、受け手に届けること。取材のポイントは、対象者に寄り添いつつも、時には少し距離をとり、受け手の代理人であることを見失わないことだ。受け手の存在を意識すれば、インタビューの目的も明確になる。さまざまなシーンで役立つ「聞く技術」を磨くと、相手に信頼される関係性を築くことができる。

本書では、これまで1万5000人を超える人物たちをインタビューしてきた著者が培った88のヒントを一挙公開。インタビューの事前準備、環境やシチュエーション設定など、細やかな配慮に多くの時間を割くことで、インタビュー全体を通して良い空気を作り上げると解く。

特に、人物の物語を聞く際には取材対象者の年表を作り、相手と共有することで話の密度を高める取り組みは、実際の写真も掲載されており興味深い。

事前の質問は5つ程度にとどめておき余白を作っておく、最初と最後の質問だけ決めておく、などの具体的な手法や、Q&Aのフォローも盛りだくさん。日々の仕事において、クライアントの話を聞くことが多い社会人にオススメしたい。どうすれば聞き上手になれるのか。そのヒントがこの1冊に詰まっている。

『行列のできるインタビュアーの聞く技術相手の心をほぐすヒント88』
発行：ダイヤモンド社
著者：宮本恵理子
定価：1650円（税込）
発行日：2021年10月27日
判型：四六判
頁数：272P
ISBN：978-4-478-11458-2
https://www.diamond.co.jp/book/9784478114582.html

アクティブリスニングで問題の本質をつかむ

最後まで相手の話を聞くことができない最大の敵は、「自分のしゃべりたい気持ち」と「相手への苦手意識」である。しかし、一方的なおしゃべりを続けていては、会話のキャッチボールは成立しない。

大手コンサルティング企業のマッキンゼー出身の著者が、本書で提唱する「アクティブリスニング」は、コミュニケーションの原点に帰って、真剣に徹底的に相手の話を聞き、質問もしながら理解を深めるメソッドだ。相手に深い関心を持つことがポイントで、好き嫌いでなく相手の価値や判断基準を理解しようとする姿勢を前提とする。本書では、話の聞き方から効果的な質問方法、話題の掘り下げ方、それらをまとめて解決策を構築するための具体的な手法が詳細に解説されている。

アイデアメモやチェックリストのテンプレートも掲載されているので、明日からすぐに取り組める。最初は忍耐を要するが、アクティブリスニングを継続していくことで、相手が本音で話すことができ、その知恵や経験を尊重できるようになる。さらに相手を肯定し、感謝を伝えるポジティブフィードバックを実践すると、自分も周囲も活性化し、生き生きとした人間関係を構築できるだろう。