目指すは「デジタルクローン」!?シリコンバレーで起業した日本人AIスタートアップの野望

ムコハタワカコ

AIネットサービス業務効率化

“スパークした瞬間”をハイライトとして保存・共有

Glaspは、ウェブページのハイライトを共有するアイデアからスタートした。後に著作権の問題を避けるため、公開されているウェブの情報をハイライトするかたちに変更。ユーザーが情報を集め、共有し、誰でもアクセスできるようにすることを目指している。

使い方をもう少し詳しく説明しよう。Glaspをブラウザの拡張機能としてインストールすると、閲覧しているページのテキストのうち、気になった部分をドラッグしてハイライトして保存できる。保存した情報はほかのユーザーからも見ることができ、共有が可能だ。

ウェブ上のテキストに直接ハイライトを入れて保存できる

ハイライトした文章はURLとともに保存、共有が可能

アプリではなくブラウザの拡張機能としてサービスを提供し、クリッピングではなく「ハイライト」という方法を選んだ理由は、デスクトップ利用時の方が、ユーザーにとって価値の高い文章と接しているとわかったためだ。またデスクトップユーザーの方が、内容に対する定着率が高いこともわかったという。プラグインであれば、ユーザーは気軽に短いフレーズで文章を保存できて見返しやすい上、原文が載っていたウェブサイトにも簡単にアクセスできる。

「クリッピングツールはいろいろとありますが、結局みんな、あまり読み返さないじゃないですか。ハイライトなら、少なくとも自分が共感したり、反対したり、何かしら“スパーク”した瞬間であることは間違いありません。大事だったことに焦点を当てられます」(渡辺氏)

Glasp自体がハイライト共有という意識の高いテーマだけに、サービスの成長にはUI/UXも含めより一層の改善が必要と思われるが、今後の伸びしろは大きいサービスといえるだろう。

プロダクトの成長のために、生成AIをいち早く取り入れる工夫も行った。生成AIには早くから注目していたという渡辺氏らは、「まだ誰もやっていない、ChatGPTを使ったプロダクト」を考えた。もともとGlaspには、YouTubeの音声を書き起こしてハイライトできる機能があったが、これを応用したYouTubeの書き起こしをサマリーを表示できるツールを開発。2024年2月には100万インストールを突破した。

最終的なプロダクトイメージは「デジタルクローン」

Glaspでは2021年8月と2023年3月の2度、日本のサイバーエージェント・キャピタルと米国のVCや個人投資家らから資金調達を行っている。今後、Glaspの有料化により、収益化を目指す。現在Glaspには、弁護士事務所などから契約書など部外秘のドキュメントを扱いたいというニーズが多く寄せられているそうだ。そこで有料版では、ハイライトの非公開保存とグループの特定ユーザー間でのシェア、ローカルPDFをアップロードしてハイライトできる機能などを提供する予定だという。

一方、Glaspにはもともと、“人類の知識を残す”というミッションがある。Glaspの最終的なプロダクトのイメージは、Zoomのようにユーザーが対面で話をできるような「デジタルクローン」をオンライン上に再現することだ。画像や声をキャプチャーして、本物のようにしゃべらせるAIツールは既にいくつかある。その精度を上げて違和感を減らすことに加えて、裏側の人格をどう作るかということが、デジタルクローンの実現には重要だ。

「我々の強みは、学習データを持っていること。ハイライトデータには個人の学びや興味がたまっている」と渡辺氏はいう。それらデータを元に人格を作り、加えてその個人の声や話し方、表情、メッセージのスタイルなども再現したデジタルクローンをと彼らは考えている。

「今後、LINEやWhatsappといったメッセージアプリなど、言葉のやり取りに人格やアイデンティティが含まれるような情報も入れていきたいです」(渡辺氏)

さらに将来的には、人の知識や経験がデジタル空間に保存され、アクセス可能な人格として残せる世界を、彼らは目指している。

「仮にイーロン・マスクの意見が聞きたいとして、今は一度に聞けるのは1人だけ。それが、100万人が同時に聞いても答えられるようになるんです。プライバシーや著作権、人格権の問題はありますが、亡くなった人との対話もできるようになるかもしれません。実現できれば、知識の民主化が達成できるのではないかと思っています」(渡辺氏)
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ムコハタワカコ

編集・ライター
書店員からIT系出版社、ウェブ制作会社取締役、米系インターネットメディアを経て独立。現在は編集・執筆業。IT関連のプロダクト紹介や経営者インタビューを中心に執筆活動を行う。企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)、組織づくりや採用活動などにも注目している。

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