「もともとできない」のではなく「できなくなる」
この反応にビックリしたのは、近所のシニアが一見するととても元気だからだ。70代でも80代でも、旅行に出掛けたり、趣味を楽しむ人が多い。そして年1回のイベントでは、シニアたちが「楽しく参加できるのはこれが最後だわ」と言うのがネタ化しているが、ちょっと本気でも思っていて、寂しさや怖さも伝わってくる。
老化というと身体面ばかりを見てしまいがちだが、実は興味や関心といった気持ちの面にも現れる。やる気がなくなったり、できないことが増えたりする。さらに残酷なことに、「今できていることが、できなくなる」。「もともとできない」わけではないし、できた自分の記憶もある。だから、生成AIを使うべきだと言って、イラっとされたのだ。
十分知見のあるシニアには、「そんなことは分かっている」のだ。でもやる気が起きない。それが老化のせいだと分かっているけれど、自分ではどうしようもなくてプライドが傷つく。きっとこの感覚は筆者自身にも確実にやってくる。その覚悟をしておく必要がある、と思った。
老化というと身体面ばかりを見てしまいがちだが、実は興味や関心といった気持ちの面にも現れる。やる気がなくなったり、できないことが増えたりする。さらに残酷なことに、「今できていることが、できなくなる」。「もともとできない」わけではないし、できた自分の記憶もある。だから、生成AIを使うべきだと言って、イラっとされたのだ。
十分知見のあるシニアには、「そんなことは分かっている」のだ。でもやる気が起きない。それが老化のせいだと分かっているけれど、自分ではどうしようもなくてプライドが傷つく。きっとこの感覚は筆者自身にも確実にやってくる。その覚悟をしておく必要がある、と思った。
いくら便利でも、生成AIを使い始めるための気力がついてこないのが現実
「してあげる」から「してもらう準備をする」へ
そう気付いたとき、自分の発想が根本から間違っていたことに気がついた。「今の高齢者に、生成AIで何かしてあげたい」というのは、控えめに言っても上から目線だ。そして実際、うまくいっていない。
シニアの感覚から逆算すると、ヒューマノイド型のロボットが最適解だと思うが、残念ながらシニアと同居できるほどまでには技術が追いついていない。
そうなると、今の自分にできるのはシニアの手助けではなく、むしろ「自分が高齢になったときに生成AIに手助けしてもらえるよう、今から準備しておく」ことだけだ。自分にはまだ、新しいことを覚える気力が残っているのだから、今のうちにやるしかない。
そう切り替えて、今準備できることを洗い出してみた。せっかくなので、準備の内容そのものも生成AIに相談しながら考えた。やってみて「これは助けてもらえそうだ」と思った項目は、大きく3つある。
シニアの感覚から逆算すると、ヒューマノイド型のロボットが最適解だと思うが、残念ながらシニアと同居できるほどまでには技術が追いついていない。
そうなると、今の自分にできるのはシニアの手助けではなく、むしろ「自分が高齢になったときに生成AIに手助けしてもらえるよう、今から準備しておく」ことだけだ。自分にはまだ、新しいことを覚える気力が残っているのだから、今のうちにやるしかない。
そう切り替えて、今準備できることを洗い出してみた。せっかくなので、準備の内容そのものも生成AIに相談しながら考えた。やってみて「これは助けてもらえそうだ」と思った項目は、大きく3つある。
準備その1:予定を忘れる自分を前提にする
50代にして、すでに雲行きが怪しい
筆者は50代半ばだが、すでにスケジュール管理が怪しい。自分で入れた予約を、自分でもびっくりするぐらいきれいに忘れる。最近は、生成AIにリマインドを任せるようにして、だいぶ改善された。「来週の火曜の14時に歯医者、前日にもリマインダーして」と話しかければ、それで終わる。手帳に書き写す手間もない。
生成AI各社は、この予定管理まわりを急速に強化している。ChatGPTでは有料プランに高機能な「スケジュール タスク」があるし、GeminiもGoogleカレンダーと連携して自然な言葉で予定の作成・変更・検索ができる。今から慣れておく価値のある道具は日々登場している。なんとか面倒くさがらずについていきたい。
生成AI各社は、この予定管理まわりを急速に強化している。ChatGPTでは有料プランに高機能な「スケジュール タスク」があるし、GeminiもGoogleカレンダーと連携して自然な言葉で予定の作成・変更・検索ができる。今から慣れておく価値のある道具は日々登場している。なんとか面倒くさがらずについていきたい。
ChatGPTの「スケジュール タスク」画面。生成AIでスケジュール管理は一変する
「物忘れが進んだとき」の3段構え
ただ、今の物忘れがもっとひどくなった段階では、設定を変える気力自体が残っていない可能性が高い。そこで普段使っている生成AI(Claude)に、「物忘れが年々ひどくなる前提で、段階ごとの対策を考えてほしい」と頼んでみた。返ってきたのは、次の3段構えだった。
段階1:入力を「話すだけ」に一本化する
「病院の予約、来月の3日10時」と口に出せば登録が完了する状態にしておく。手で打つ、アプリを開いて選ぶといった工程が1つでも挟まると、面倒になった時点で使わなくなるからだ。
段階2:通知を増やし、AIのほうから話しかけてもらう
物忘れが進むと、通知が1回では気付かない。前日・当日の朝・1時間前と多段階にし、「毎朝その日の予定を読み上げる」定期タスクも走らせる。自分が思い出す必要をなくし、AIから毎日話しかけてくる状態を標準にしてしまうわけだ。
段階3:自分以外にも、同じ通知が届くようにする
最終的には、自分1人で完結させないことが大切だという。カレンダーを家族と共有し、重要な予定は同じタイミングで家族にも通知が飛ぶようにする。前回紹介した銀行の「家族口座見守りサービス」と考え方は同じだ。
肝心なのは、この設定を元気なうちに済ませておくこと。段階3が必要になってから自分で設定するのは難しい。前回の記事で自分が書いた「元気なうちに、日常を維持するのに必要なサービスを使っておく」の生成AI版が自分にブーメランで返ってきて痛い。
段階1:入力を「話すだけ」に一本化する
「病院の予約、来月の3日10時」と口に出せば登録が完了する状態にしておく。手で打つ、アプリを開いて選ぶといった工程が1つでも挟まると、面倒になった時点で使わなくなるからだ。
段階2:通知を増やし、AIのほうから話しかけてもらう
物忘れが進むと、通知が1回では気付かない。前日・当日の朝・1時間前と多段階にし、「毎朝その日の予定を読み上げる」定期タスクも走らせる。自分が思い出す必要をなくし、AIから毎日話しかけてくる状態を標準にしてしまうわけだ。
段階3:自分以外にも、同じ通知が届くようにする
最終的には、自分1人で完結させないことが大切だという。カレンダーを家族と共有し、重要な予定は同じタイミングで家族にも通知が飛ぶようにする。前回紹介した銀行の「家族口座見守りサービス」と考え方は同じだ。
肝心なのは、この設定を元気なうちに済ませておくこと。段階3が必要になってから自分で設定するのは難しい。前回の記事で自分が書いた「元気なうちに、日常を維持するのに必要なサービスを使っておく」の生成AI版が自分にブーメランで返ってきて痛い。
準備その2:お金とパスワードを、今のうちに見える化する
サブスクは、メール連携で棚卸しする
次に不安なのが、サブスクリプションサービスとお金の管理だ。今の自分でさえ、いくつのサービスに毎月いくら払っているか即答できない。これが80代になったらどうなるか。国民生活センターも「デジタル終活」として、スマートフォンのなかの見えない契約に注意を促している。本人が忘れているサービスは、家族にはもっと分からない。
現実的な対策は、生成AIにメールを連携させ、課金や更新の通知メールから契約中のサービスを洗い出してもらうことだ。そのうえで年に1回、棚卸しをする。前述の定期タスク機能で「毎年1月に、契約中のサブスクを一覧にして『これは今も使っていますか』と聞いて」と登録しておけば、こちらが忘れていても向こうから聞いてくれる。整理下手な筆者でも、クレジットカードの明細と銀行口座の明細、そしてメールの連携を年1回でも徹底的に行えば、なんとかなりそうだ。
現実的な対策は、生成AIにメールを連携させ、課金や更新の通知メールから契約中のサービスを洗い出してもらうことだ。そのうえで年に1回、棚卸しをする。前述の定期タスク機能で「毎年1月に、契約中のサブスクを一覧にして『これは今も使っていますか』と聞いて」と登録しておけば、こちらが忘れていても向こうから聞いてくれる。整理下手な筆者でも、クレジットカードの明細と銀行口座の明細、そしてメールの連携を年1回でも徹底的に行えば、なんとかなりそうだ。
クレジットカードや銀行口座の明細と、メールの管理を生成AIにまかせて、サブスクもなんとか管理したい
パスワードをAIに教えずに管理する方法
大きな壁にぶつかるのが、パスワード管理だ。生成AIにパスワードそのものを預けるのは、率直怖い。かといって、自分の記憶力はこれから確実に落ちていく。どうすればいいのか、生成AIの提案を基にまとめたのが以下の5案だ。
1.パスワードマネージャーを使い、AIには使用サービスだけ伝える
パスワードの本体は、無料で使えるGoogle パスワード マネージャーや、有料サービスの1Passwordなどの「パスワードマネージャー」に集約する。生成AIには「どのサービスを使っているか」という情報だけを渡す。AIは案内役に徹し、鍵そのものには触らせない。個人的には、まだパスワードマネージャーでの管理に頼り切れないことが最大のハードルだ。ついパスワードを使い回ししたくなる自分を早く変えたい。
2. マスターパスワードは、あえて紙に書いて封筒に入れる
パスワードマネージャーを使えば、覚えるべきパスワードは1つだけになる。ではその1つをどう守るか。最も確実なのは、実はアナログな方法だ。復旧用コードとあわせて紙に書き、封をして金庫など物理的に安全な場所で保管する。1Passwordが「Emergency Kit(緊急キット)」の印刷を勧めているのも同じ発想だ。ネットにつながっていないものは、ネット経由では盗まれない。
3. 信頼できる家族を「緊急連絡先」に登録しておく
スマートフォンだけでなく、パソコンにも緊急連絡先の設定が要る。例えばBitwardenの「Emergency Access(緊急アクセス)」では、信頼する相手を登録しておくと、いざというときに閲覧や引き継ぎの権限を渡せる。元気なうちに設定しておけば、認知機能が落ちてからお金のことで子ども世代ともめる不毛な展開を避けられるかもしれない。
4. 覚えなくていいものは、覚えなくていい形にしておく
パスキーに対応しているサービスは、今のうちに移行しておきたい。顔や指紋で開くようになれば、そもそも文字列を覚える必要がない。思い出す作業から解放される意味は、高齢になるほど大きい。
5. AIには「司会役」を任せる
鍵を預けない代わりに、「年1回の見直しを促す」「手続きの手順を説明する」「この通知は本物か一緒に確認する」といった仕事を任せる。金庫の鍵は渡さないが、管理台帳の読み上げ係にはなってもらうイメージだ。この「鍵は渡さないが、案内はしてもらう」という線引きは、老後に限らず今すぐ有効だと思う。
1.パスワードマネージャーを使い、AIには使用サービスだけ伝える
パスワードの本体は、無料で使えるGoogle パスワード マネージャーや、有料サービスの1Passwordなどの「パスワードマネージャー」に集約する。生成AIには「どのサービスを使っているか」という情報だけを渡す。AIは案内役に徹し、鍵そのものには触らせない。個人的には、まだパスワードマネージャーでの管理に頼り切れないことが最大のハードルだ。ついパスワードを使い回ししたくなる自分を早く変えたい。
2. マスターパスワードは、あえて紙に書いて封筒に入れる
パスワードマネージャーを使えば、覚えるべきパスワードは1つだけになる。ではその1つをどう守るか。最も確実なのは、実はアナログな方法だ。復旧用コードとあわせて紙に書き、封をして金庫など物理的に安全な場所で保管する。1Passwordが「Emergency Kit(緊急キット)」の印刷を勧めているのも同じ発想だ。ネットにつながっていないものは、ネット経由では盗まれない。
3. 信頼できる家族を「緊急連絡先」に登録しておく
スマートフォンだけでなく、パソコンにも緊急連絡先の設定が要る。例えばBitwardenの「Emergency Access(緊急アクセス)」では、信頼する相手を登録しておくと、いざというときに閲覧や引き継ぎの権限を渡せる。元気なうちに設定しておけば、認知機能が落ちてからお金のことで子ども世代ともめる不毛な展開を避けられるかもしれない。
4. 覚えなくていいものは、覚えなくていい形にしておく
パスキーに対応しているサービスは、今のうちに移行しておきたい。顔や指紋で開くようになれば、そもそも文字列を覚える必要がない。思い出す作業から解放される意味は、高齢になるほど大きい。
5. AIには「司会役」を任せる
鍵を預けない代わりに、「年1回の見直しを促す」「手続きの手順を説明する」「この通知は本物か一緒に確認する」といった仕事を任せる。金庫の鍵は渡さないが、管理台帳の読み上げ係にはなってもらうイメージだ。この「鍵は渡さないが、案内はしてもらう」という線引きは、老後に限らず今すぐ有効だと思う。

赤池 淳子
編集・ライター
1973年東京都生まれ。IT系出版社を経て編集者兼ライターに。雑誌やWeb媒体での執筆・編集を行う。家電、旅行、まちづくり、子どものプログラミング教育などのテーマを追いかけている。













