ピカソの模写や赤塚不二夫とのコラボレーション作品など意外な作品も!
8章「記憶の修築」では、2012年に自身の過去のコラージュに触発されて制作を開始した作品が展示される。田名網の戦争の記憶を思わせる戦闘機や、アメリカンコミックスのキャラクター、ハリウッド映画や日本の女優たち、パブロ・ピカソといったアーティストたちの作品が激しくうごめき合うように配置されることで醸し出される、摩訶不思議な世界観が印象的だ。
8章「記憶の修築」より、過去のコラージュに触発されて制作された作品の展示風景
9章「ピカソの悦楽」では、コロナ禍を機に制作を始めたパブロ・ピカソの模写となる「ピカソ母子像の悦楽」シリーズが展示される。同シリーズはこれまでに700点以上制作されており、同展でも複数の作品を鑑賞できる。パブロ・ピカソに田名網のエッセンスが加わった“稀代のアーティストのコラボレーション”的作品は、見るものをその世界観に引き込む不思議な引力を放っている。
9章「ピカソの悦楽」より、「ピカソ母子像の悦楽」シリーズの展示風景
10章「獏(ばく)の札」では、88歳を迎えた田名網が取り組んでいた自身の「記憶の曼荼羅(まんだら)」ともいえる大画面の作品が展示される。
また、11章「田名網敬一✕赤塚不二夫」では、田名網が敬愛した赤塚不二夫作品をモチーフにしたコラボレーション作品が展示される。アッコちゃんやイヤミ、ニャロメなどおなじみの赤塚キャラを田名網の世界観でフィーチャーしたコラージュ作品の数々は、キッチュでありながらも高尚なアートとしての雰囲気も醸し出している。
また、11章「田名網敬一✕赤塚不二夫」では、田名網が敬愛した赤塚不二夫作品をモチーフにしたコラボレーション作品が展示される。アッコちゃんやイヤミ、ニャロメなどおなじみの赤塚キャラを田名網の世界観でフィーチャーしたコラージュ作品の数々は、キッチュでありながらも高尚なアートとしての雰囲気も醸し出している。
10章「獏の札」の展示風景
11章「田名網敬一✕赤塚不二夫」展示風景
同展の最終章となる「エピローグ」では、先述したファッションブランドやアーティストらとのコラボレーション作品を多数展示。中でもサイケデリックな衣装をまとった田名網仕様の等身大のバービー人形が一際目を引く。
また、筆者が田名網を知るきっかけになったSUPERCARのアルバム・カバーアートも展示されていた。自分の中での田名網に関する"記憶の冒険"が、ここでうまく締めくくられたように感じた。
また、筆者が田名網を知るきっかけになったSUPERCARのアルバム・カバーアートも展示されていた。自分の中での田名網に関する"記憶の冒険"が、ここでうまく締めくくられたように感じた。
「エピローグ」より、SUPERCARや八代亜紀とのコラボレーション作品の展示風景
「エピローグ」より、等身大バービー人形などその他コラボレーション作品の展示風景
"芸術の秋"に気後れせず、身近なものを通じてアートを楽しむ
田名網というと、サイケデリックかつ摩訶不思議なアートの印象が強いが、『田名網敬一 記憶の冒険』では田名網がこれまでに残した作品群をテーマごとにたどることで、その作風の変化や彼自身の志向の変化に気づく。
田名網の影響は先述したようにアートの世界に限らず、ポップカルチャーの世界に広く及んでいる。"芸術の秋"だからといって構えてしまうと、日頃アートに触れていない人は美術館に足を運ぶことに少し気後れしてしまうかもしれない。しかし、田名網のように、自分にとって身近なものに影響を与えているアーティストも探せばたくさんいるはずだ。
そういったアーティストの作品に触れる場を探して、この秋は気楽にアート鑑賞を楽しむことをお勧めしたい。それを機に生活をより豊かにしてくれるアートにも興味が湧くはずだ。
田名網の影響は先述したようにアートの世界に限らず、ポップカルチャーの世界に広く及んでいる。"芸術の秋"だからといって構えてしまうと、日頃アートに触れていない人は美術館に足を運ぶことに少し気後れしてしまうかもしれない。しかし、田名網のように、自分にとって身近なものに影響を与えているアーティストも探せばたくさんいるはずだ。
そういったアーティストの作品に触れる場を探して、この秋は気楽にアート鑑賞を楽しむことをお勧めしたい。それを機に生活をより豊かにしてくれるアートにも興味が湧くはずだ。
Jun Fukunaga
ライター・インタビュワー
音楽、映画を中心にフードや生活雑貨まで幅広く執筆する雑食性フリーランスライター・インタビュワー。最近はバーチャルライブ関連ネタ多め。DJと音楽制作も少々。