スタジオカラーも制作に参加したことで話題となった『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』は、2025年春に放送が始まったガンダムシリーズの最新作だ。
本シリーズでは、作中に登場する先端技術が現実にどこまで実現可能かを考察する。第1回では「サイコミュとBMI」を取り上げたが、第2回となる今回は、「スペースコロニー」を取り上げてみたい。
本シリーズでは、作中に登場する先端技術が現実にどこまで実現可能かを考察する。第1回では「サイコミュとBMI」を取り上げたが、第2回となる今回は、「スペースコロニー」を取り上げてみたい。
スペースコロニーで生まれ、育ち、死んでいく
ジークアクスの物語は、1979年に放送された『機動戦士ガンダム』(以下、ファーストガンダム)で描かれた一年戦争の終結から9カ月後の世界を舞台としており、当時の設定も多くが引き継がれている。
そのファーストガンダムは、次のような印象的なナレーションから始まる。
「人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって、既に半世紀が過ぎていた。地球の周りの巨大な人工都市は人類の第二の故郷となり、人びとはそこで子を産み、育て、そして死んでいった。宇宙世紀0079、地球から最も遠い宇宙都市サイド3はジオン公国を名乗り、地球連邦政府に独立戦争を挑んできた」
ガンダムシリーズをずっと見てきた人にとっては、ごく当たり前の設定に思えるかもしれない。しかしよく考えてみると壮大な話だ。
既に人類は宇宙に進出し、そこで生まれ、育ち、死んでいく。つまり宇宙空間で普通に生活している人びとが大勢いる世界であり、中には地球に対して独立戦争を挑む者たちまで現れている。
彼らの一部は月などの衛星や他の惑星にも住んでいるが、多くの人びとが生活の拠点としているのが「スペースコロニー」と呼ばれる建造物だ。これは超巨大な円筒形の宇宙ステーションで、回転によって内部に人工重力を発生させ、人類が生存できる環境を整えている。
そのファーストガンダムは、次のような印象的なナレーションから始まる。
「人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって、既に半世紀が過ぎていた。地球の周りの巨大な人工都市は人類の第二の故郷となり、人びとはそこで子を産み、育て、そして死んでいった。宇宙世紀0079、地球から最も遠い宇宙都市サイド3はジオン公国を名乗り、地球連邦政府に独立戦争を挑んできた」
ガンダムシリーズをずっと見てきた人にとっては、ごく当たり前の設定に思えるかもしれない。しかしよく考えてみると壮大な話だ。
既に人類は宇宙に進出し、そこで生まれ、育ち、死んでいく。つまり宇宙空間で普通に生活している人びとが大勢いる世界であり、中には地球に対して独立戦争を挑む者たちまで現れている。
彼らの一部は月などの衛星や他の惑星にも住んでいるが、多くの人びとが生活の拠点としているのが「スペースコロニー」と呼ばれる建造物だ。これは超巨大な円筒形の宇宙ステーションで、回転によって内部に人工重力を発生させ、人類が生存できる環境を整えている。

スペースコロニーの内部のイメージ(出典:NSS)
まさにSF的な光景だが、こうした円筒形の宇宙ステーションは「オニール・シリンダー」と呼ばれ、実際に建造の可能性が議論されてきたアイデアだ。まずは、その実現性について考えてみよう。
オニール・シリンダーはどんな場所か
オニール・シリンダーは、「オニール・コロニー」とも呼ばれる自給自足型の巨大な宇宙居住施設で、1970年代に物理学者ジェラード・K・オニールが提唱した構想である。この円柱状の建造物は、回転によって人工重力を生み出し、シリンダー内部に地球に近い環境を再現しようとするものだ。
全米宇宙協会(以下、NSS)の解説によると、オニール・シリンダーの大きさは直径6.4〜8.0km、長さは32kmにもなる。内部には3つの陸地と3つの窓が交互に並び、3つの鏡が開閉することで昼夜のサイクルが作られる。
シリンダー内の陸地面積は約1300平方kmで、数百万人が居住可能とされている。沖縄本島の面積は約1210平方kmなのを考えると、オニール・シリンダーがいかに巨大かがわかるだろう。
とはいえ直径が7km程度の建造物となると、見上げた先に別の陸地が見えることになる。ちなみに東京駅から中野駅までの距離が約7kmだ。
また、円筒の内側であるため「地平線」は存在せず、居住区が筒状に広がる景色の中で暮らすことになる。この特殊な環境は、住民にとって一定のストレスがあるとも考えられている。ジークアクスの劇中でも、主人公マチュが「頭上に地表がある」ことの奇妙さに触れ、地球の海で泳いでみたいと願うシーンが登場する。
とはいえ、内部の環境はできる限り地球に近づける設計が想定されている。例えば重力は、シリンダーを1時間に約28回転させることで、地球とほぼ同じ1Gを生み出せるという。
当然ながら、回転の中心軸に近い場所では無重力となるが、それを逆手に取り、レクリエーション施設の設置が想定されていたという。
全米宇宙協会(以下、NSS)の解説によると、オニール・シリンダーの大きさは直径6.4〜8.0km、長さは32kmにもなる。内部には3つの陸地と3つの窓が交互に並び、3つの鏡が開閉することで昼夜のサイクルが作られる。
シリンダー内の陸地面積は約1300平方kmで、数百万人が居住可能とされている。沖縄本島の面積は約1210平方kmなのを考えると、オニール・シリンダーがいかに巨大かがわかるだろう。
とはいえ直径が7km程度の建造物となると、見上げた先に別の陸地が見えることになる。ちなみに東京駅から中野駅までの距離が約7kmだ。
また、円筒の内側であるため「地平線」は存在せず、居住区が筒状に広がる景色の中で暮らすことになる。この特殊な環境は、住民にとって一定のストレスがあるとも考えられている。ジークアクスの劇中でも、主人公マチュが「頭上に地表がある」ことの奇妙さに触れ、地球の海で泳いでみたいと願うシーンが登場する。
とはいえ、内部の環境はできる限り地球に近づける設計が想定されている。例えば重力は、シリンダーを1時間に約28回転させることで、地球とほぼ同じ1Gを生み出せるという。
当然ながら、回転の中心軸に近い場所では無重力となるが、それを逆手に取り、レクリエーション施設の設置が想定されていたという。

オニール・シリンダーの外観イメージ(出典:NSS)
こんな突拍子もないアイデアは、果たして実現可能なのだろうか。現実には、さまざまな課題が指摘されている。

小林 啓倫
経営コンサルタント
1973年東京都生まれ、獨協大学外国語学部卒、筑波大学大学院修士課程修了。システムエンジニアとしてキャリアを積んだ後、米バブソン大学にてMBAを取得。その後外資系コンサルティングファーム、国内ベンチャー企業などで活動。著書に『FinTechが変える!金融×テクノロジーが生み出す新たなビジネス』(朝日新聞出版)、『IoTビジネスモデル革命』(朝日新聞出版)、訳書に『ソーシャル物理学』(アレックス・ペントランド著、草思社)、『シンギュラリティ大学が教える 飛躍する方法』(サリム・イスマイル著、日経BP)など多数。