実現に向けて動き始めた最新の民間宇宙構想
オニール・シリンダーの実現は依然として高いハードルを伴うが、より現実的な規模や手法を模索する動きも始まっている。まずは小規模な施設から着手し、段階的に技術とノウハウを蓄積していく戦略だ。
オニール・シリンダー型のコロニーそのものの建設はまだ遠い未来の話だが、その前提となる技術、例えば大型輸送手段や宇宙資源の利用、人工重力の環境、軌道上での建設といった分野では、少しずつ研究が進んでいる。
実際に、いくつかの興味深い取り組みが動き始めている。2019年には、航空宇宙企業Blue Originの創設者であり、Amazon.comでも知られるジェフ・ベゾスが、オニール・シリンダーと宇宙での生命の未来に関するビジョンを発表した。
ベゾスはオニール・シリンダーを完璧な気候と美しい建築を備えた理想的な居住地と捉え、歴史的な都市や広大な国立公園、あるいは絶滅危惧種の避難所、さらには純粋なレクリエーション施設として設計することも可能だと語っている。将来的には、こうした宇宙居住地が1兆人を収容する可能性もあると見込まれている。
Blue Originは既に、大型ロケット「New Glenn」の開発を進めている。さらに2020年代後半には、商業宇宙ステーション「Orbital Reef」の建設に着手するという。将来的には、多くの人が暮らせるオニール・シリンダー型コロニーの実現を目指している。
民間企業による取り組みとしては、かつてOrbital Assembly Corporation(OAC)と呼ばれ、現在はAbove Spaceとして知られている企業がある。
この企業は、人工重力を持つ宇宙ステーションの開発を進めており、「Pioneer-class」と「Voyager-class」の2種類の宇宙ステーションを設計中だ。
中でもPioneer-classは最大54人を収容でき、商業運用を目的としたハイブリッド重力宇宙ステーションとして長期居住を想定している。同社は「低重力環境下でもカスタマイズ可能な可変重力機能」によって、宇宙での商業活動や特殊用途の幅を広げると予測しており、同時に低コストでの宇宙構造物建設に向けた技術開発も進めている。
オニール・シリンダー型のコロニーそのものの建設はまだ遠い未来の話だが、その前提となる技術、例えば大型輸送手段や宇宙資源の利用、人工重力の環境、軌道上での建設といった分野では、少しずつ研究が進んでいる。
実際に、いくつかの興味深い取り組みが動き始めている。2019年には、航空宇宙企業Blue Originの創設者であり、Amazon.comでも知られるジェフ・ベゾスが、オニール・シリンダーと宇宙での生命の未来に関するビジョンを発表した。
ベゾスはオニール・シリンダーを完璧な気候と美しい建築を備えた理想的な居住地と捉え、歴史的な都市や広大な国立公園、あるいは絶滅危惧種の避難所、さらには純粋なレクリエーション施設として設計することも可能だと語っている。将来的には、こうした宇宙居住地が1兆人を収容する可能性もあると見込まれている。
Blue Originは既に、大型ロケット「New Glenn」の開発を進めている。さらに2020年代後半には、商業宇宙ステーション「Orbital Reef」の建設に着手するという。将来的には、多くの人が暮らせるオニール・シリンダー型コロニーの実現を目指している。
民間企業による取り組みとしては、かつてOrbital Assembly Corporation(OAC)と呼ばれ、現在はAbove Spaceとして知られている企業がある。
この企業は、人工重力を持つ宇宙ステーションの開発を進めており、「Pioneer-class」と「Voyager-class」の2種類の宇宙ステーションを設計中だ。
中でもPioneer-classは最大54人を収容でき、商業運用を目的としたハイブリッド重力宇宙ステーションとして長期居住を想定している。同社は「低重力環境下でもカスタマイズ可能な可変重力機能」によって、宇宙での商業活動や特殊用途の幅を広げると予測しており、同時に低コストでの宇宙構造物建設に向けた技術開発も進めている。
NASAも後押しする宇宙コロニー建設
アメリカ航空宇宙局(NASA)も、こうした取り組みを後押ししている。2022年には、同機関の先進概念研究プログラムで、カーネギーメロン大学のザック・マンチェスターが提案した「1機のロケットで打ち上げ可能なkm級回転構造」の支援を行った。
この構造物は、宇宙で展開・自己組立され、地上の構造物の150倍にもなる長さを実現する見込みで、一部には地上と同等の重力環境を持つ巨大回転居住区が含まれる予定だ。
NASAではこの他、人工重力や宇宙構造物の製造に向けた研究にも取り組んでおり、溶接・3Dプリンティング、汎用モジュール連結による大型構造組立てといった分野で、将来の宇宙コロニー建設に資する技術開発を支援している。
さらに、小惑星そのものを利用した宇宙ステーション建造計画も存在する。2022年には、米ロチェスター大学の研究チームが「小惑星をまるごと宇宙都市に変える」という大胆な論文を発表した。
この構想では、直径数百m級の小惑星全体を超軽量・高強度のカーボンナノファイバー製のバッグで包み、内部で小惑星を回転させ、遠心力による人工重力を生み出す。
小惑星に含まれる岩石は宇宙放射線に対する優れた遮蔽材(しゃへいざい)にもなるとされており、制御がうまくいけば内部に地球型の居住空間を構築できる可能性がある。
ちなみにガンダムシリーズでも、ソロモンやア・バオア・クー、アクシズといった小惑星由来の宇宙ステーションや軍事要塞が登場しており、この構想が実現すれば、別の形でガンダムの世界が実現することになるかもしれない。
この構造物は、宇宙で展開・自己組立され、地上の構造物の150倍にもなる長さを実現する見込みで、一部には地上と同等の重力環境を持つ巨大回転居住区が含まれる予定だ。
NASAではこの他、人工重力や宇宙構造物の製造に向けた研究にも取り組んでおり、溶接・3Dプリンティング、汎用モジュール連結による大型構造組立てといった分野で、将来の宇宙コロニー建設に資する技術開発を支援している。
さらに、小惑星そのものを利用した宇宙ステーション建造計画も存在する。2022年には、米ロチェスター大学の研究チームが「小惑星をまるごと宇宙都市に変える」という大胆な論文を発表した。
この構想では、直径数百m級の小惑星全体を超軽量・高強度のカーボンナノファイバー製のバッグで包み、内部で小惑星を回転させ、遠心力による人工重力を生み出す。
小惑星に含まれる岩石は宇宙放射線に対する優れた遮蔽材(しゃへいざい)にもなるとされており、制御がうまくいけば内部に地球型の居住空間を構築できる可能性がある。
ちなみにガンダムシリーズでも、ソロモンやア・バオア・クー、アクシズといった小惑星由来の宇宙ステーションや軍事要塞が登場しており、この構想が実現すれば、別の形でガンダムの世界が実現することになるかもしれない。

Cities on asteroids? It could work—in theory
ロチェスター大学の研究チームが構想する「小惑星改造型宇宙ステーション」(出典:ロチェスター大学のプレスリリース)
対立が示す「もうひとつの現実」
こうした技術面での検討が少しずつ前進している一方で、政治や社会の側面については、残念ながら議論があまり進んでいないのが実情だ。
ガンダムの世界では、宇宙という新たな環境に適応して進化する人類が描かれる一方で、武力による独立運動といった過激な動きが宇宙移住者の間に生まれる可能性にも触れている。
さらに、地球居住者による宇宙移住者への差別や、ジークアクスで描かれる戦争難民に対する差別も、宇宙移住が社会課題を解決するのではなく、むしろ複雑化させることを示唆してている。
技術開発の進展と並行して、社会的課題への対応も加速させる必要があるだろう。
オニール・シリンダーの建造が現実になった場合、それは技術面にとどまらず、政治や経済の領域でも前例のない挑戦となるだろう。
言い換えれば、こうした課題のいずれかひとつでも解決できなければ、現実的なプロジェクトとして動き出すのは難しい。
現時点では、各国の宇宙開発は、より現実的な月や火星の探査に注力しており、巨大コロニーの構想はまだ「未来のビジョン」の域を出ていない。
しかし、地球環境の悪化などによって人類が宇宙進出を迫られる日が来れば、政治的な意志と国際的な協調が一気に高まり、コロニー構想が現実味を帯びてくるだろう。
そのとき重要になるのは、宇宙空間での建設技術や資源循環システム、さらには人工重力制御や放射線防御といった分野のイノベーションであり、これらの技術的ブレークスルーが、社会制度と並んでコロニーの成否を左右するカギとなる。
そうした先端技術の進展と、人間社会がどう向き合うかが問われる時代がやってくるのかもしれない。
そのときこそ、ガンダムのようなSF作品が描いてきた未来の社会の姿が、技術と人間の関係を問い直す上でも、私たちが進むべき道を考える手がかりになるはずだ。
ガンダムの世界では、宇宙という新たな環境に適応して進化する人類が描かれる一方で、武力による独立運動といった過激な動きが宇宙移住者の間に生まれる可能性にも触れている。
さらに、地球居住者による宇宙移住者への差別や、ジークアクスで描かれる戦争難民に対する差別も、宇宙移住が社会課題を解決するのではなく、むしろ複雑化させることを示唆してている。
技術開発の進展と並行して、社会的課題への対応も加速させる必要があるだろう。
オニール・シリンダーの建造が現実になった場合、それは技術面にとどまらず、政治や経済の領域でも前例のない挑戦となるだろう。
言い換えれば、こうした課題のいずれかひとつでも解決できなければ、現実的なプロジェクトとして動き出すのは難しい。
現時点では、各国の宇宙開発は、より現実的な月や火星の探査に注力しており、巨大コロニーの構想はまだ「未来のビジョン」の域を出ていない。
しかし、地球環境の悪化などによって人類が宇宙進出を迫られる日が来れば、政治的な意志と国際的な協調が一気に高まり、コロニー構想が現実味を帯びてくるだろう。
そのとき重要になるのは、宇宙空間での建設技術や資源循環システム、さらには人工重力制御や放射線防御といった分野のイノベーションであり、これらの技術的ブレークスルーが、社会制度と並んでコロニーの成否を左右するカギとなる。
そうした先端技術の進展と、人間社会がどう向き合うかが問われる時代がやってくるのかもしれない。
そのときこそ、ガンダムのようなSF作品が描いてきた未来の社会の姿が、技術と人間の関係を問い直す上でも、私たちが進むべき道を考える手がかりになるはずだ。

小林 啓倫
経営コンサルタント
1973年東京都生まれ、獨協大学外国語学部卒、筑波大学大学院修士課程修了。システムエンジニアとしてキャリアを積んだ後、米バブソン大学にてMBAを取得。その後外資系コンサルティングファーム、国内ベンチャー企業などで活動。著書に『FinTechが変える!金融×テクノロジーが生み出す新たなビジネス』(朝日新聞出版)、『IoTビジネスモデル革命』(朝日新聞出版)、訳書に『ソーシャル物理学』(アレックス・ペントランド著、草思社)、『シンギュラリティ大学が教える 飛躍する方法』(サリム・イスマイル著、日経BP)など多数。