筆者はカスタマーサポートに特化したAIチャットボットサービスを提供する会社の代表として、カスタマーサポートにどのようにAIテクノロジーを活用すればいいか、日々追究しています。今回は、経営目線、部門目線、現場目線の3つの視点で「AI時代に生き残る真のカスタマーサポート」について考察してみました。
生成AI前史時代のコンタクトセンター
まずは、「ChatGPT」などの生成AI時代登場以前までのカスタマーサポートの役割を簡単に振り返りたいと思います。
1980年代ごろから、製品のアフターサポート的な役割を主としてメーカーを中心にカスタマーサポート業務は確立されました。その後、1990年代後半から2010年代にかけて、カスタマーサポートは大規模化し、専業のビジネス市場が出来上がってきた経緯があります。矢野経済研究所の試算では、現在でも約1兆円の国内市場が存在しています。
生成AI登場の少し前、2015年くらいからディープラーニングを始めとした新しいAI技術が登場します。以降、人間のタスクの一部分の代替や効率化のための技術・サービスが、カスタマーサポート部門でも徐々に実装され、「精度と効率の時代」から「効果の時代」へ移ろうとしているのが現在です。
ひとことでいうと、「これくらい電話問い合わせがあるから、これくらいの人員が必要」という単純なボトムアップのコストセンターではなく、投資効果の高い部分にリソースをかける時代になろうとしています。
したがって投資対効果の高いカスタマーサポートが体現できている、ということが「AI時代に生き残る真のカスタマーサポート」の前提といえます。ちょっと抽象度が高く、当たり前のような感じがありますが、実際にはそうなっていないところが多いという現状が、その実現の難易度を物語っています。
生成AI登場の少し前、2015年くらいからディープラーニングを始めとした新しいAI技術が登場します。以降、人間のタスクの一部分の代替や効率化のための技術・サービスが、カスタマーサポート部門でも徐々に実装され、「精度と効率の時代」から「効果の時代」へ移ろうとしているのが現在です。
ひとことでいうと、「これくらい電話問い合わせがあるから、これくらいの人員が必要」という単純なボトムアップのコストセンターではなく、投資効果の高い部分にリソースをかける時代になろうとしています。
したがって投資対効果の高いカスタマーサポートが体現できている、ということが「AI時代に生き残る真のカスタマーサポート」の前提といえます。ちょっと抽象度が高く、当たり前のような感じがありますが、実際にはそうなっていないところが多いという現状が、その実現の難易度を物語っています。
経営レイヤーで変革の意思決定が重要
「投資対効果の高いカスタマーサポート」と聞くと、そんなことはビジネスでは当たり前ではないかと思われるかもしれません。しかし、現状はそこまで簡単ではありません。長らく(そして今でもほとんどが)「精度高く・効率よく」を求められていた企業にとって、「効果」と言われても対応は簡単ではありません。
経営レイヤーでは、顧客体験の向上/顧客戦略などは重要テーマです。そしてカスタマーサポート部門は、顧客体験の向上(もしくは顧客体験の低下の回避)に少なからず寄与しています。
実は海外でも日本でも、コンタクトセンターにとって顧客体験(CX)の向上が最重要戦略であることには変わりありません。
経営レイヤーでは、顧客体験の向上/顧客戦略などは重要テーマです。そしてカスタマーサポート部門は、顧客体験の向上(もしくは顧客体験の低下の回避)に少なからず寄与しています。
実は海外でも日本でも、コンタクトセンターにとって顧客体験(CX)の向上が最重要戦略であることには変わりありません。
コンタクトセンターの重要戦略
しかし、戦略を現場に落とし込んだ後の指標(KPI)は、海外と日本で全く異なります。
コンタクトセンターのCX向上のために重視するKPI
海外企業では顧客ロイヤリティ指標(利益貢献に影響のある指標)が重視されるのに対して、国内企業は応答率を挙げる企業が最も多いです。応答率とは、コールセンターへの入電数(着信数)に対して、オペレーターが応答できたコール数の割合のこと。かんたんにいえば「電話がどれだけつながったか」を表します。
残念なことに、電話がつながったかどうかで顧客ロイヤリティ指標が上がることはありません。ロイヤリティ指標を上げるには、顧客への応対者の「熱意」が伝わるかが大きなポイントです。次に正確で誠実な情報をくれることや、自分の知らなかったお得な情報、最新情報をくれるという体験が寄与します。これらは企業と顧客の関係によって、どのような顧客対応が顧客ロイヤリティに影響を与えるのかという長年にわたる試行錯誤の末に見つかっていくものです。
さらに応答率をKPIにおくと、AIの使い所を間違うケースがあります。典型的な施策が「呼量削減」です。
呼量とは単位時間あたりの通信回線の占有量で、1回の通話時間が長い、あるいは通話が同時に多数あると増える数字です。同じ回線数で呼量が増えれば電話がつながらない確率が高くなります。この呼量が減ったとき、顧客が他のチャネルを活用してくれるのであれば問題ありませんが、応答率を向上させるためだけに呼量を削減しようと思うと、本来の問題を解決すべきお客様を逃しかねません。
残念なことに、電話がつながったかどうかで顧客ロイヤリティ指標が上がることはありません。ロイヤリティ指標を上げるには、顧客への応対者の「熱意」が伝わるかが大きなポイントです。次に正確で誠実な情報をくれることや、自分の知らなかったお得な情報、最新情報をくれるという体験が寄与します。これらは企業と顧客の関係によって、どのような顧客対応が顧客ロイヤリティに影響を与えるのかという長年にわたる試行錯誤の末に見つかっていくものです。
さらに応答率をKPIにおくと、AIの使い所を間違うケースがあります。典型的な施策が「呼量削減」です。
呼量とは単位時間あたりの通信回線の占有量で、1回の通話時間が長い、あるいは通話が同時に多数あると増える数字です。同じ回線数で呼量が増えれば電話がつながらない確率が高くなります。この呼量が減ったとき、顧客が他のチャネルを活用してくれるのであれば問題ありませんが、応答率を向上させるためだけに呼量を削減しようと思うと、本来の問題を解決すべきお客様を逃しかねません。
行き過ぎた「呼量削減」が招くコンタクトの減少とは
顧客ロイヤリティ指標を目標に掲げた場合は、「企業にコンタクトしなかった」人を基本的に0にすることを目標にするため、呼量削減と真逆のアプローチとなります。効果の時代に乗り遅れる企業は、間違った呼量削減施策で顧客ロイヤリティが低下し、企業収益が低下、さらにコスト削減要請で呼量削減……という負のスパイラルが回ることでしょう。
経営目線で「AI時代に生き残る真のカスタマーサポート」を体現するには、この投資対効果の高いカスタマーサポートへの転換の意思決定が、1つ目のポイントとなります。投資効率の高いカスタマーサポートとはつまり、顧客にとって価値があり、ロイヤリティが高まるものです。簡単ではありませんが、もっとも重要なポイントであると思います。
具体的には、どのようにすればいいでしょうか。それには企業全体の顧客戦略に連動した施策検討が必要です。
経営目線で「AI時代に生き残る真のカスタマーサポート」を体現するには、この投資対効果の高いカスタマーサポートへの転換の意思決定が、1つ目のポイントとなります。投資効率の高いカスタマーサポートとはつまり、顧客にとって価値があり、ロイヤリティが高まるものです。簡単ではありませんが、もっとも重要なポイントであると思います。
具体的には、どのようにすればいいでしょうか。それには企業全体の顧客戦略に連動した施策検討が必要です。
「効果の時代」に必要なカスタマーサポートにおける検討テーマの例
いろいろとテーマはありますが、顧客データの一元管理と、各種カスタマーサポート施策の効果を見える化する基盤構築が、最低限必須の準備だと考えます。
カラクリ 小田志門
カラクリ代表取締役CEO
1980年京都府生まれ。2003年から、イー・ガーディアン(東証一部)の創業メンバー(取締役)として、SNS監視・コンタクトセンター事業の立ち上げに従事。2017年から「カスタマーサポートをエンパワーメントする」ためのAIソリューション「KARAKURI digital CS series」の開発・提供を開始。GMOメディアやGMOペイメントゲートウェイにもAIチャットボットを提供する。