チャットボット会社社長が、ChatGPT登場で絶望した話

カラクリ 小田志門

AISpecialインターネットテクノロジービジネス
OpenAIが開発した大規模言語モデル(LLM)であるChatGPTは、ビジネス界に大きな変化をもたらしています。カスタマーサポート分野のチャットボットを主力サービスとする会社の代表である筆者は焦りました!「ChatGPTだけで既存のチャットボットが不要になるのでは?」とヤバい危機感を感じました。

GMOペイメントゲートウェイやGMOメディアをはじめ、多くの有名企業にご指名いただいてる我々が、用済みとされるのではないか? 結構冷や汗モノの衝撃です。

チャットボット提供企業の社長、ChatGPTの登場で焦る

一見、突然現れたように見える外資系スタートアップによってビジネスが奪われるかもしれないと焦ったわけです。しかも、実際にはその技術は長年の研究を経て開発されたものであり、進化の伸びしろも兼ね備えてます。ポッと出のバズワードやブームではなく、本質的な変化が訪れると直感し、その変化のインパクトは計り知れないと思いました。といっても焦るだけでは解決にはならないため、私たちはChatGPTを活用した楽しいアプローチを自分たちで探求し始めました。

そして、少し落ち着く

焦りの中で、筆者とCTOやR&Dチーム(数学オリンピックや情報オリンピックのメダリスト、医師、東大助教が在籍)は、ChatGPTの本質を探求しました。元々、GPT-3を利用して自社サービスを進化させる方法を、ChatGPT登場前から検討はしていました。ただ、GPT-3は特化型モデルに比べ精度が劣ることが多く、課題がありました。

しかし、ChatGPT(GPT-3.5)は、汎用モデルが特化型モデルに迫るレベルに達し、GPT-4の登場でその傾向がさらに強まりました。一方で、GPTの課題として、「ハルシネーション(もっともらしいウソをつくこと)」と「実用時のセキュリティ問題」の2つが壁であることも明らかになりました。ハルシネーションは、GPT-3とGPT-4を比較すると減少しており、今後も低下しそうですがゼロにはならない点は注意が必要です。ハルシネーションを受け入れつつ、生成AIの価値を活かす方法を確立することが重要です。また、セキュリティ課題は、企業の心理的側面も含めて対策が求められます。

このプロセスを経て、私は冷静さを取り戻すことができました。

GPT-4の登場で、カスタマーサポートはどこへ向かうのか?

短期的には「今までのチャットボット」を置き換えない

短期的には、ChatGPTは既存のチャットボットを置き換えない、と確信しました。より正確にいうなら、「カスタマーサポート体験の向上を目指したチャットボット」は置き換わらない、です。ただし、適切に作られておらず、日々の更新や運用改善が行われないチャットボットはすぐに取って代わられるでしょう。

GPTの「ハルシネーション」特性がカスタマーサポートに必要な迅速な回答生成に適していないといえる理由が2つあります。

1つ目は、顧客が正解を知らず、回答の真偽を判断しにくい点です。問い合わせをする顧客は、自分の問題の解決策を探しているため、回答の真偽を判定することは厳しい要求です。従来のFAQや最近のAIチャットボットでは、回答がずれていることが比較的容易に分かる(FAQの0件ヒットetc)ため、このリスクは低いです。従来のものは、誤った回答でカスタマーを混乱させる心配はないわけです。

2つ目の理由は、顧客が問題解決に熱心でなく、簡単に解決したいというニーズがあるためです。私たちのFAQサービスでは、キーワードを入力せずにAIのレコメンデーションに頼るユーザーが4割、自分でキーワードを入力するユーザーが6割というデータがあります。筆者の会社のチャットボットは、WEB上の顧客の行動データをリアルタイムに解析し、「○○でお困りですか?」と顧客の困りごとを推定した上で最適なメッセージを提示する機能があります。つまり、提案型のカスタマーサポートを行い、そこから正確な情報に誘導する仕組みです。

このようなチャットボットは、顧客が自ら困りごとを入力する汎用的な会話で始まるケースと比べて、顧客のチャットボット利用数が5倍、チャットボットへの満足度が数十ポイント高い結果が出ています。これは、Q&Aコンテンツの内容が全く同じでも、「チャットボットがどう語りかけるか?」と「どの会話からスタートするか?」が同じくらい重要であることを示しています。

生成AIのトライアンドエラー方式は、このニーズにマッチしないため、ChatGPTがすぐにビジネスを置き換えることはないと考えられます。つまり、顧客満足度に関しては、さまざまなペルソナに対して、人間がデザインしたUXにまだまだ分があるわけです。
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カラクリ 小田志門

カラクリ代表取締役CEO
1980年京都府生まれ。2003年から、イー・ガーディアン(東証一部)の創業メンバー(取締役)として、SNS監視・コンタクトセンター事業の立ち上げに従事。2017年から「カスタマーサポートをエンパワーメントする」ためのAIソリューション「KARAKURI digital CS series」の開発・提供を開始。GMOメディアやGMOペイメントゲートウェイにもAIチャットボットを提供する。

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