GMOグローバルサインHDと全宅連が不動産取引における電子契約の実態に関する共同調査を実施

安蔵 靖志

DXGMOインターネットグループ業務効率化調査・レポート
電子契約サービス「電子印鑑GMOサイン」を提供するGMOグローバルサイン・ホールディングスと、宅建協会会員業務支援サイト「ハトサポ」を運営する全国宅地建物取引業協会連合会(以下、全宅連)は、不動産取引における電子契約の実態に関する共同調査を不動産事業者を対象として実施しました。

全宅連は全国宅地建物取引業者(約13万社)の約80%(約10万社)が加入する最大の不動産業界団体です。全国の47都道府県宅地建物取引業協会(宅建協会)とハトマーク・グループを構成し、消費者への安全安心な不動産取引の推進、会員業者へのサポート、業界の健全な発展のための諸事業を行っています。

「ハトサポ」は全宅連が運営する宅建協会会員業務支援サイトで、クラウド上で不動産関連書式が作成できる「ハトサポWeb書式作成システム」をはじめ、いつでもどこでも無料閲覧できる「Web研修」、顧問弁護士による無料法律相談、業務に役立つ80種類以上のサービスや商品を提供しています。

2022年7月に不動産情報流通システム「ハトサポBB」をリリースし、9月には不動産情報サイト「ハトマークサイト」が全面リニューアル、2022年11月1日に「電子印鑑GMOサイン」と連携した電子契約サービス「ハトサポサイン」が加わり、豊富なラインナップで不動産取引・宅建業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)をサポートしています。

電子契約導入の満足度は高いものの、過半数の企業はシステム未導入

2022年5月に施行された改正宅地建物取引業法(以下、改正宅建業法)により、不動産取引における電子契約の利用が可能となってから1年以上が経過しました。そこで今回の共同調査を実施したところ、不動産取引における電子契約の利用状況や現状における課題について以下のような実態が判明しました。

実際に電子契約を実施した場合の顧客満足度は7割超と大多数が好評

電子契約を導入する企業のうち約71.2%は、実際に電子契約を実施した場合の顧客にとって「おおむね好評だった」と回答しました。一般的に、新型コロナウイルスの影響で電子契約システムの普及が拡大しましたが、不動産業界のエンドユーザーである顧客からのニーズは、新型コロナが収束し始めた現在でも一定以上存在していることが分かります。

「電子契約システム導入後の顧客の反応」への回答結果

電子契約システムを導入した企業の約半数が導入目的を達成

電子契約システムの導入効果として、「契約書等の書類送付の省力化および業務効率化が実現」(約56.6%)、「顧客との日程調整が容易になる」(約53.9%)、「印紙税コスト削減」(約50%)、「書類保管・管理が容易になる」「ペーパーレス化の実現」(約48.7%)などが挙げられました。導入企業の多くで業務効率化・省力化や経費削減といった定量的な効果の発現に寄与していることが分かりました。

「電子契約システムの導入効果」への回答結果

電子契約未導入企業の半数以上は不動産関連システムも未導入

一方、電子契約システムを導入していない企業の約57.2%は、電子契約以外の不動産関連システムも未導入と回答。不動産DXがまだ発展途上にあることが判明しました。

不動産業務に関連するツールやシステムの導入状況を見ると、「テレビ会議システム」が約19.8%と最も多い結果となりました。しかし、「特にツールを導入していない」と回答した割合は約57.2%となり、電子契約システムの未導入企業では過半数で不動産DXが進展していないことを示しています。

「電子契約を導入していない企業が導入している不動産関連システム」への回答結果

「紙の契約締結で十分」という企業も依然として多い

また電子契約システムを導入していない企業のうち、さらに「現時点で導入に向けて検討および予定もない」と回答した企業(以下、導入未定企業)の約7割が、未導入理由として「紙の契約締結で十分」と回答しました。顧客も含めてデジタル化への懸念と電子契約が一般化していない現状が示されました。

「電子契約システムを未導入の企業が導入しない理由」への回答結果

現在、電子契約システムを導入していない企業の理由として、導入未定企業の約69.5%が「紙の契約締結で十分」と回答し、約56.7%が「顧客からのニーズがない」と回答しました。これにより、顧客側に電子契約の導入が進んでいない現状が分かります。さらに、企業側では、「電子契約システムを使いこなせる担当者の不在」が約37.4%、「電子契約をよく知らない」が約36.6%、「デジタル化への苦手意識」が約29%、「電子契約のセキュリティへの不安」が約27.3%といったデジタル化に関する懸念が存在していることが分かりました。

電子契約自体の実務上の改善点が浮き彫りに

2022年5月に改正宅建業法が施行された際に、国土交通省が電子契約とIT重説に関連するマニュアルとして「重要事項説明書等の電磁的方法による提供及びITを活用した重要事項説明 実施マニュアル」を発表しました。このマニュアルにおける実務上の課題として、6割以上が「電子契約実施前に書面やメールでの事前承諾が必要」と回答し、具体的な改善点が浮き彫りになりました。

実務課題として挙げられた項目は以下の通りです。

・「電子契約実施前に書面やメールでの事前承諾が必要」(約66%)
・「重要事項説明書交付時の開封確認と署名パネルの説明」(約35.8%)
・「重要事項説明書と契約書の同時送信ができない」(約26.4%)
・「署名パネルが表示されないためスマートフォンで完結できない」(約19.8%)

さらに、調査では「紙の契約書と同等の取り扱いを希望する」と答えた割合が約24.5%となり、これらの課題や要望が明らかになりました。

「電子契約システム導入企業が、国交省マニュアルに基づく電子契約業務に対して、課題を感じるか」への回答結果

【調査概要】
・調査期間:2023年6月1日~2023年6月9日
・調査機関:自社調査
・調査対象:「電子印鑑GMOサイン」の利用者および検討者、公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会(中小規模の宅建業者を中心とした全国組織)の会員
・有効回答:不動産会社1723件(うち、電子契約導入企業112件、未導入企業1611件)
・調査方法:インターネット調査

電子契約の普及に向けて引き続き協業体制を強化

改正宅建業法から1年以上が経過しましたが、不動産業界全体において電子契約が普及するにはまだ時間がかかりそうです。しかし、日本国内の労働力人口は2014年の6587万人から2030年には5683万人、2060年には3795万人と急速に減少することが予測されています(内閣府「選択する未来 人口推計から見えてくる未来像」第2章(3)人口急減・超高齢化の問題点より)。これにより、総人口に占める労働力人口の割合も低下し、働く人よりも支えられる人が多くなることが見込まれます。

このような超少子高齢化社会において、不動産DXは不動産事業者にとって業績の成長や事業の存続を維持するために重要な鍵となることは間違いありません。電子契約をはじめとしたデジタル化の取り組みは、労働力不足の緩和や業務の効率化に貢献します。不動産事業者は、これらのテクノロジーの活用を通じて競争力を高め、事業の成長や存続を図ることができます。

本調査を通して、GMOグローバルサインHDと全宅連は、導入企業の実体験に基づく課題や、未導入企業が直面する環境や心理的ハードルについて実態を把握できました。また、未導入企業からの自由記述による回答では、導入検討段階で実施してほしい具体的な施策への要望が多く寄せられました。これにより、未導入企業においても電子契約への興味や将来的な導入意欲の高さが伺えました。

GMOグローバルサインHDと全宅連は本調査によって求められている施策ニーズを具体的に把握し、今後はさらに効果的なプロモーション活動をしていく予定とのことです。両者は引き続き協業し、電子契約普及に向けてさらなる前進を目指して努力していくとしています。

今回の共同調査では課題が浮き彫りになったものの、導入企業における満足度が高いことも判明しました。電子契約や賃貸管理ソフト、テレビ会議システムを利用したオンライン内見、IT重説ツールの導入は不動産事業者や顧客となる不動産オーナーだけでなく、居住者である一般消費者にとっても利便性が向上します。これらを導入するために顧客ニーズの掘り起こしや担当者の育成などの課題をクリアし、ぜひ不動産DXの実現に向けて進んでほしいところです。

安蔵 靖志

Techジャーナリスト/家電エバンジェリスト
家電製品協会認定 家電製品総合アドバイザー(プラチナグレード)、スマートマスター。AllAbout デジタル・家電ガイド。ビジネス・IT系出版社を経てフリーに。デジタル家電や生活家電に関連する記事を執筆するほか、家電のスペシャリストとしてテレビやラジオ、新聞、雑誌など多数のメディアに出演。KBCラジオ「キャイ~ンの家電ソムリエ」にレギュラー出演するほか、ラジオ番組の家電製品紹介コーナーの商品リサーチ・構成にも携わっている。

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