“最速でのスキル獲得”を仕組み化——この夏『センスフルネス』を読むべき5つの理由

2025.7.10

理由3：夏休みの挑戦を成功させる「学び方」そのものを学べる

私たちは学校で多くの知識を学ぶものの「効果的な学び方」そのものを体系的に教わる機会は意外と少ない。本書は、特定のスキルだけでなく、あらゆる学びに応用できる「学習方法」を身につける知恵を与えてくれる。それは「上達する力」を鍛えるともいえるだろう。

なかでも重要なのが、第2の要素である「効果的な実践（Do）」の考え方だ。ただ時間をかけるだけでは、成長にはつながらないのは明白で、どう取り組めば上達につながるのかを理解することが欠かせない。本書では、教科書を繰り返し読むといった受け身の学習よりも、実際に問題を解いたり、学んだ内容を自分の言葉で説明したりするような能動的なアプローチの方がはるかに効果的だと説かれている。

単純な反復だけでなく、練習に「変化」を取り入れることの有効性も本書では指摘されている。さまざまな状況に対応できる応用力を育てるには、バリエーションのある練習が効果的だ。また、簡単すぎず難しすぎない、自分にとって最適な「難易度のスイートスポット」を見つけることも、成長を最大化するための鍵となる。さらに、学んだ知識やスキルを実際の場面で使ってみることの意義も語られている。

こうした「効果的な学び方」の原則を夏休み前に理解しておけば、語学やプログラミング、楽器の練習など、どんな計画にも応用が利き、より効率よく、確実に成果を出せるだろう。本書は、人間が持つ「学習の処理能力」そのものを高める一冊でもあるのだ。

理由4：試行錯誤とフィードバックで、着実に成長できる

上達への道は平坦ではない。壁にぶつかったり、停滞を感じたりすることもある。本書が紹介する第3の要素「調整（Feedback）」は、まさにそうした局面で力を発揮する。

試行錯誤を重ね、そこから得られるフィードバックを基に軌道修正を繰り返す。これが進歩の本質だ。

ここでいうフィードバックは、誰かに間違いを指摘されることだけを意味しない。自ら実践し、その結果を注意深く観察することで、現実から直接フィードバックを得ることが重要になる。うまくいかなかったとしても、それは失敗ではなく、次の一手を考えるためのヒントになる。問題を解決しようと向き合うその課程こそが、学びを深めていく。

さらに、時には古くからのやり方や思い込みを手放す「アンラーニング（Unlearning）」が必要になる場合がある。例えば、あえて自分に新しい制約を課してみたり、客観的な視点を与えてくれるコーチのような第三者に意見を求めてみたりすることで、無意識の壁を乗り越えられるかもしれない。

このアンラーニングは、自己認識と変化への意欲を必要とする高度なプロセスだが、停滞を打破し、次のレベルへ進むためには避けて通れない。

そして「学び（See）、実践（Do）、調整（Feedback）」というサイクルを意識的に回すことが、ただの「経験」を、真の「専門性」へと変えていく鍵となる。

何年経っても伸び悩むケースは、この「調整」のプロセスが欠けているからかもしれない。

限られた夏休みの時間を最大限にいかすためにも、この試行錯誤と調整のプロセスを意識しておきたい。

理由5：新しい挑戦への意欲と自信が高まる

本書の考え方を実践し、効果的な学習戦略を取り入れることで、以前よりも速く、確実に「より良く」なっていく実感が得られるはずだ。

たとえ小さな一歩でも、目に見える進歩は自信となり、次の挑戦への意欲につながる。まさに「成功が成功を呼ぶ」という好循環が生まれていく。

「自分には才能がない」「どうせ無理だ」といった思い込みで限界を感じたことはないだろうか？しかし「より良く」なれると実感することは、そのような思い込みを打ち破る力強い経験となる。「やればできる」という手応えは、成長を信じるマインドセットを育ててくれるだろう。

この考え方を身につけることは、単にスキルを高めるだけではない。自分には縁がないと思っていた分野や、難しそうだと敬遠していた挑戦に対しても、自信を持って一歩を踏み出せるようになるかもしれない。

学ぶことの本質とは、視野が広がり、これまで見えてなかったものが見えるようになることだ。そして自分の中に眠っていた能力に気づくことでもある。

おわりに

夏休みという貴重な時間を、自己成長のために最大限活用したいと考えているなら、スコット・H・ヤングが提唱する学習アプローチに触れてみる価値は十分にある。

本稿で紹介した5つの理由、すなわち「1.実践的なスキル向上の指針が得られること」「2.“より良く”を目指す取り組みやすい姿勢が身につくこと」「3.“学び方”そのものを学び目標達成を加速できること」「4.試行錯誤と調整を通じて着実に成長できること」「5.新しい挑戦への意欲と自信が高まること」は、このアプローチが夏休みを、そしてこれからの人生を豊かにする可能性を示している。大切なのは、完璧を目指す姿勢ではなく、継続的に「より良く」なろうとする意志だ。そしてそれを支える具体的な方法論が存在するということだ。本書は、そのための羅針盤であり、実践的なツールでもある。

この夏、自らの目標に向けて、本書の考え方を取り入れてみてほしい。マインドセットと戦略を手にすれば、これまでとは違う、確かな手応えと成果を得られるはずだ。あなたの夏が、学びと発見に満ちたものになることを願っている。

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小林啓倫

経営コンサルタント
1973年東京都生まれ、獨協大学外国語学部卒、筑波大学大学院修士課程修了。システムエンジニアとしてキャリアを積んだ後、米バブソン大学にてMBAを取得。その後外資系コンサルティングファーム、国内ベンチャー企業などで活動。著書に『FinTechが変える！金融×テクノロジーが生み出す新たなビジネス』（朝日新聞出版）、『IoTビジネスモデル革命』（朝日新聞出版）、訳書に『ソーシャル物理学』（アレックス・ペントランド著、草思社）、『シンギュラリティ大学が教える飛躍する方法』（サリム・イスマイル著、日経BP）など多数。