Googleスマホ「Pixel」が搭載するチップセット「Tensor」は何がすごい?

山根 康宏

AISpecialスマートフォン
グーグルのスマートフォン「Pixel 8」シリーズ(Pixel 8、Pixel 8 Pro)が日本でも発売になった。Android OSを開発し、他社にも提供しているグーグルの自社製品だけに、その使いやすさは高い評判を得ている。だがグーグルがPixel 8シリーズに採用しているのは、OSやソフトウェアだけではない。スマートフォンのチップセット(システム・オン・ア・チップ、SoC)にも自社開発の「Tensor」を搭載しているのだ。

スマートフォンの頭脳にAI機能を統合したTensor

Pixel 8シリーズに搭載されているチップセットは「Tensor G3」で、これは第3世代目となる製品だ。グーグルが開発した最初のチップセットは「Tensor G1」で、2021年11月に発表した「Pixel 6」シリーズに搭載された。翌2022年には「Pixel 7」シリーズ向けに「Tensor G2」を開発。毎年1世代ずつバージョンを高めている。

Pixel 8シリーズにはグーグル開発のTensor G3を搭載

そもそもチップセットとはスマートフォンを動かすCPU、グラフィック周りをコントロールするGPU、5Gや4G、Wi-Fiなどを制御する通信モデムなど、それぞれのチップを1まとめに統合(セット)したものだ。スマートフォンの頭脳でもあり心臓でもある。逆にいえばチップセットを基板に取り付けさえすれば、あとはメモリ、ストレージ、ディスプレイ、カメラなどを取り付け、OSを焼き込めばスマートフォンが出来上がるともいえる。まあ実際にはそんなに単純ではないが、チップセットはスマートフォンの基本的なパフォーマンスを大きく左右する重要なパーツだ。

近年のチップセットはNPU(Neural Processing Unit)と呼ばれるユニットも統合している。これはAI処理などに特化したユニットで、スマートフォンでは画像処理などを担う。スマートフォンでの写真撮影時に自在にボケを利かせたり、暗い夜のシーンでも明るく補正してくれることは当たり前になったが、これらはAIが自動処理を行っているのである。

Tensorにはグーグルが開発したNPU、Tensor Processing Unit=TPUを搭載している。名前がややこしくなってきたが、TPUはNPUの一種であり、グーグル特製のNPUの固有名詞と考えてよい。

Tensor G3にはグーグル開発のTPUが統合されている

ではTensorを搭載したPixelシリーズは他のスマートフォンとどのような性能の差があるのだろうか。違いは大きく分けて「音声処理」と「画像処理」の2つで、Pixelシリーズは高い性能を誇っているのだ。

初めてTensorチップセットを搭載したPixel 6では以下のような特徴的な機能を搭載し、AI処理によるスマートフォンの性能アップを高らかにアピールした。実際にPixel 6を使った人ならその性能の高さに驚きを覚えただろう。

・音声認識

グーグルは音声入力や翻訳アプリを提供しているが、Tensor搭載のPixelでは翻訳機能がスマートフォンの基本機能と思えるほど性能が高まっている。メッセージアプリなどではリアルタイム翻訳が可能になり、外国語で届いたメッセージを瞬時に翻訳してくれる。さらにAIが翻訳精度を高めており、Pixel 6では従来比118%の高精度で翻訳が可能になった。

・音声入力

音声認識入力は指先でソフトキーボードをタッチして入力するよりも数倍の速さで音声を認識する。キーボードを使わず文字入力することが実用レベルに達した。似ている文字候補は自動で表示してくれ、文字の修正や削除も音声で指示できる。また音声の文字起こしもリアルタイムで話し声や会話をテキスト化できる。さらに英語など一部外国語にも対応している。Pixel 7からは会話中の話者ごとにラベルを付けられ、数名での会話も誰が何を話したかを区別して文字起こしができるようになっている。

・消しゴムマジック

もはやPixelスマートフォンの最大の特徴ともいえるこの機能は、画面に写り込んでしまった邪魔なオブジェクトをきれいに消し、背景を自然に合成してくれる。消したいオブジェクトの選択はAIが行い、たいていの操作であれば微調整も不要だ。

Pixelの機能で最も知られている消しゴムマジック

Pixel 6とPixel 7では、これらの機能をスマートフォン単体で実現した。クラウドを使った同様のサービスと異なり、データ通信環境は一切不要だ。またNPUがAI処理を特化して行ってくれることで、CPUやGPUの負荷が減り、スマートフォンのパフォーマンスは高いままに、消費電力を減らすこともできる。
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山根 康宏

香港在住携帯研究家
スマホとSIMを求めて世界各国を取材中。海外、特に中国の通信事情に精通している。大手メディアへの執筆も多数。海外スマホ・ケータイを1800台所有するコレクターでもある。

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