音楽制作初心者にとって、コード進行の作成は非常に難しい。例えば、ギターやピアノで「ドレミ」といった単音のメロディーを弾くのは比較的簡単だが、複数の音を同時に鳴らしてコード(和音)を作るとなると途端に難しくなる。「どの音を組み合わせれば良い音になるのか」「次にどんなコードを重ねれば自然に聞こえるのか」といった悩みは、音楽理論の知識が身についていない初心者の多くが直面する課題だろう。
近年、こうした課題はコードジェネレーターツールやMIDIパックの登場により、少しずつ解消されてはいる。ただ、より直感的かつ簡単に行えるコード進行作成のニーズは、依然として存在する。
近年、こうした課題はコードジェネレーターツールやMIDIパックの登場により、少しずつ解消されてはいる。ただ、より直感的かつ簡単に行えるコード進行作成のニーズは、依然として存在する。
クラウドファンディングで話題沸騰のChordcat
こうしたニーズを背景に2024年11月、「CDJ」シリーズなどのDJ向け機器で知られる音楽機器メーカーAlphaThetaは、コード進行の問題を解決する画期的な製品として、最新音楽制作機材「Chordcat」を発表した。独自のコードレコメンド機能を搭載したChordcatは、11月11日にクラウドファンディングサービス「Makuake」で先行予約販売が開始されると、すぐに大きな注目を集めた。その結果、この記事執筆時点(2024年12月6日)で目標金額の50万円を大きく上回り、3500万円を超える金額を集めている。
本稿ではそんな話題の最新機材の魅力を探るべく、発売前にデモ機をお借りしたので、早速レビューしてみる。
本稿ではそんな話題の最新機材の魅力を探るべく、発売前にデモ機をお借りしたので、早速レビューしてみる。
持ち運びも楽々、どこでも気軽に音楽制作
Chordcatの梱包パッケージを開けると、猫をモチーフにした機材らしく、各国語の「ニャー」という言葉がちりばめられた、遊び心のあるデザインが目に飛び込んでくる。その中に白いビニール袋に包まれた筐体とUSB Type-Cケーブルのみが同梱された、比較的シンプルな製品構成となっている。
まず、最初にチェックしたのは、そのコンパクトな外観だ。Chordcatは247×111×33ミリメートルの筐体を採用しており、実際に手に取ってみると驚くほど軽量だ。わずか0.4キログラム(電池含まず)で、片手でも余裕で持ち上げられる。
まず、最初にチェックしたのは、そのコンパクトな外観だ。Chordcatは247×111×33ミリメートルの筐体を採用しており、実際に手に取ってみると驚くほど軽量だ。わずか0.4キログラム(電池含まず)で、片手でも余裕で持ち上げられる。
梱包パッケージの内蓋部分に施された遊び心のあるデザイン
梱包パッケージの中にはChordcat筐体とUSB Type-Cケーブルが同梱されている
Chordcatの電源は、そのUSB Type-Cケーブルを使った給電か、単三電池6本での駆動に対応(アルカリ乾電池使用時は約5時間の連続使用が可能)。このため、自宅での卓上作業から、外出先での音楽スケッチ作りまで、さまざまなシーンで活用できる。
筆者の場合は単三電池ではなく、USB Type-Cポートにモバイルバッテリーを接続し、さらにヘッドフォン端子にモバイルスピーカーを接続することで、文字通り、"どこでも音楽制作"が可能な環境を構築してみた。このようにカバンに入るくらいのポータブルなセットアップを構築できるなら、外出先でもアイデアが浮かんだらすぐに音楽制作を始められる。この点は、持ち運びは便利だがソフトウェアを経由した制作となるPCではなく、どこでもフィジカルな機材を使って音楽制作したい派のクリエイターには朗報だろう。
筆者の場合は単三電池ではなく、USB Type-Cポートにモバイルバッテリーを接続し、さらにヘッドフォン端子にモバイルスピーカーを接続することで、文字通り、"どこでも音楽制作"が可能な環境を構築してみた。このようにカバンに入るくらいのポータブルなセットアップを構築できるなら、外出先でもアイデアが浮かんだらすぐに音楽制作を始められる。この点は、持ち運びは便利だがソフトウェアを経由した制作となるPCではなく、どこでもフィジカルな機材を使って音楽制作したい派のクリエイターには朗報だろう。
Chordcatに手持ちのポータブルスピーカーとモバイルバッテリーを接続したポータブルなセットアップ
本格的な音楽制作を可能にする基本性能
次に実際にChordcatでどんなことができるか見ていこう。Chordcatは、一般的に“グルーヴボックス”と呼ばれる、音楽機材だ。グルーヴボックスとは、ハードウェアのシーケンサーとシンセサイザー、ドラムマシンなどの音源機能が一体化した音楽機材で、音楽制作の現場だけでなく、ライブパフォーマンスでも多用される。
Chordcatには、8つの楽器パート(トラック)を組み合わせて16種類のパターンを作れるシーケンス機能が搭載されている。また楽器パートは、搭載されている145種類のサウンドプリセットと16種類のドラムキットを使って作成可能だ。そのため、これから音楽制作を始める初心者は、まずはこれ1台あれば、本格的な音楽制作を楽しめるだろう。
Chordcatには、8つの楽器パート(トラック)を組み合わせて16種類のパターンを作れるシーケンス機能が搭載されている。また楽器パートは、搭載されている145種類のサウンドプリセットと16種類のドラムキットを使って作成可能だ。そのため、これから音楽制作を始める初心者は、まずはこれ1台あれば、本格的な音楽制作を楽しめるだろう。
簡単かつ直感的にコード進行を作成できる支援機能
このようにグルーヴボックスとしての基本的な機能を搭載したChordcatの目玉機能は、やはりコード進行作成支援機能だ。中でもまず、筆者が実際に試してみて、便利だと感じたのが13種類の音楽ジャンル別コード進行プリセット「Chordset」という機能だ。
この機能では、ハウスやR&Bといった基本的な音楽ジャンルから、ドラムンベースやフューチャーベース、レイヴといった近年人気のダンスミュージックまで、さまざまなジャンルのコード進行プリセットが収録されている。ユーザーはこのプリセットの中から好きなものを選び、Chordcatにロードすると、そのプリセットを使ったコード進行作成ができる。
また、この機能をさらに強力なものにするのが、「Chord Cruiser」機能だ。この機能は、経験豊富な作曲アドバイザーのように、ユーザーが弾いたコードに自然につながる次のコードを提案してくれる。Chordcatは、約1万種類のコードを内蔵しており、11万通りものコード進行パターンを提案できる。そのためユーザーは、音楽理論の知識がなくても、耳で聴いて気に入ったコードを選んでいくだけで、いい感じのコード進行が作れる。
この機能では、ハウスやR&Bといった基本的な音楽ジャンルから、ドラムンベースやフューチャーベース、レイヴといった近年人気のダンスミュージックまで、さまざまなジャンルのコード進行プリセットが収録されている。ユーザーはこのプリセットの中から好きなものを選び、Chordcatにロードすると、そのプリセットを使ったコード進行作成ができる。
また、この機能をさらに強力なものにするのが、「Chord Cruiser」機能だ。この機能は、経験豊富な作曲アドバイザーのように、ユーザーが弾いたコードに自然につながる次のコードを提案してくれる。Chordcatは、約1万種類のコードを内蔵しており、11万通りものコード進行パターンを提案できる。そのためユーザーは、音楽理論の知識がなくても、耳で聴いて気に入ったコードを選んでいくだけで、いい感じのコード進行が作れる。
Chord Cruiser機能。パッド部分に表示される緑の四角を押すと提案されたコードが鳴り、コード名がディスプレイに表示される
実際に筆者はハウスのコード進行プリセットをロードし、コード進行を作成。プリセットのコードの中からひとつをChord Cruiserを使って入れ替えてみると、自分がイメージするメロディックなコード進行が作成できた。正直、筆者もコード進行の知識にそれほど明るいわけではないが、この2つの機能を組み合わせることでかなり直感的に自分がイメージするコードを作っていけるのだから驚きだ。
筆者が実際にChordcatで作ってみたハウス曲
via www.youtube.com
また、この機能と関連して、Chordcatには音楽理論に不安のある初心者にとっては心強い「キー/スケール」設定機能も搭載されている。この機能により、ユーザーは設定したキーやスケールに合った音だけを使用でき、不協和音を避けながら安心してフレーズを作成できる。
Chordcatの中央上部のLEDディスプレイには、ユーザーが演奏したコードや短音のノートが表示されるのもありがたい。この視覚的なガイド機能により、実際に鳴らしているコードや短音を目で確認しながら学習できるため、コード進行や音楽理論の理解も自然と深まっていく。特にこれから音楽制作を始める初心者にとっては、感覚的にそれらの知識を学ぶ上で心強い味方になると感じた。
Chordcatの中央上部のLEDディスプレイには、ユーザーが演奏したコードや短音のノートが表示されるのもありがたい。この視覚的なガイド機能により、実際に鳴らしているコードや短音を目で確認しながら学習できるため、コード進行や音楽理論の理解も自然と深まっていく。特にこれから音楽制作を始める初心者にとっては、感覚的にそれらの知識を学ぶ上で心強い味方になると感じた。
Jun Fukunaga
ライター・インタビュワー
音楽、映画を中心にフードや生活雑貨まで幅広く執筆する雑食性フリーランスライター・インタビュワー。最近はバーチャルライブ関連ネタ多め。DJと音楽制作も少々。