「はんこレス」「電子契約」で社会はどう変わるのか? 電子印鑑のプロに聞く

2021.6.8

リモートワークが普及するも「捺印“痛”勤」が働き手の大きなストレスに

コロナ禍をきっかけに広がったリモートワーク。これによりオフィスワーカーは、感染に関わる三密を避ける形で自宅での業務が可能になった。

しかし、それでも出社しないといけない業務がある。「捺印」だ。

日本ではこれまで多くの企業で紙と印鑑を使って承認や確認を行う業務フローが存在していた。また、契約を取り交わした証拠として、紙にサインや押印・捺印済みの書類を作成してきた商習慣がある。このため、リモートワーク導入後も押印・捺印のためだけに通勤する「捺印“痛”勤」がリモートワーカーの大きなストレスになっていた。

このようなリモートワークの課題を解決するものとして注目を集めたのが、出社せずともオンライン上で押印・捺印と同じ効力を得ることができる電子印鑑・電子契約サービスだ。

従来の印鑑と同じ法的効力を持つ電子印鑑

電子印鑑・電子契約では、紙の代わりに電子ファイル（PDF）を作成し、そこに電子署名とタイムスタンプを付与することで「いつ」、「誰が」電子ファイルを作成したのかを証拠として残すことができる。

そのため、「従来の印鑑と同じ法的効力を得ることができ、これまで会社にいなければできなかった業務もリモートワークで実現できるようになった」と語るのは、「電子印鑑GMOサイン」を提供するGMOグローバルサイン・ホールディングス電子契約事業部長の牛島直紀氏だ。

GMOグローバルサイン・ホールディングス電子契約事業部長牛島直紀氏

“当事者署名型”と“事業者署名型”の2種類がある

電子署名・電子契約サービスは、“当事者署名型”と“事業者署名型（立会人型）”の2つに大きく分類される。前者は、“インターネット世界の法務局”である電子認証局による厳格な審査を受け、本人確認済みの電子証明書を発行するため、証拠力が非常に高いことが特徴だ。一方、後者は事前に証明書を取るという煩雑さがない分、本人性の担保は当事者署名型よりも劣るが、サービスを提供する事業者のメールなどによる認証だけで署名できる手軽さが特徴になっている。

GMOサインでは、この2つの署名タイプの両方に対応している。その理由について牛島氏に尋ねてみたところ、このような答えが返ってきた。

「印鑑の世界でも印鑑証明書を添付できる実印もあれば、もう少しライトな契約をできる（認印や角印のような）ものもあります。我々のサービスもそれと同じく、両方をユーザーが利用できるのが非常に大きな特徴です」（牛島氏）

電子印鑑に抵抗感のあった業界を動かしたツールの使いやすさ

電子署名・電子契約サービスは、先述のとおり、実際のはんこと同じ法的効力を持つ。このため、電子化に抵抗の少ないIT業界、人材業界などでは、比較的早い段階から導入する企業が多かった。しかし、ほかの業界では、契約は自社だけでなく取引先にも関わるものであるため、法的効力に関わらず、これまで電子印鑑や電子契約の信頼性に対する抵抗感は強かったという。

また、不動産業や建設業では一部、紙の書面での契約が法的に義務付けられているものもある。さらに、建設業界では、下請け先としてベテランの1人親方に仕事を発注することもある。ITツールにあまり慣れていない彼らが実際に使いこなせるのかという懸念が発注する会社側にもあり、法的には問題のない契約においても導入に踏み切れない企業が多かったという話だ。

しかし、牛島氏によればGMOサインを実際に導入した企業からは、「スマホさえあれば契約書の内容を確認して署名できる簡単なツールだ」と好感触の反応が返ってきているそうだ。このような反応は、GMOサインがシンプルで使いやすい、極力簡単なツールを目指していたからこそのもの。また、その使いやすさが口コミでも広がったことにより、建設業界でのGMOサイン導入増加に繋がっているという。