失敗と成功の日々——データが教えてくれた真実
3つのルールを守れれば、眠りの質を下げる原因はざっくりと取り除くことができるはずなのですが、日々の生活との両立はなかなかに難しいものがありました。一方で、ちょっとした工夫によって、時間は短くとも質のいい睡眠をとれることもわかってきました。14日間の試行錯誤からは、眠りに関するさまざまな真実が浮かんできました。
1日目:23時に寝ようと思っても、帰宅して犬の散歩をして食事を与え、自分の夕食を作って食べたら時刻は21時すぎ。雑用を済ませてお風呂に入り、早寝をするとなると、自由時間はほぼゼロなことに気づきます。
しかし、しっかり湯船に漬かったほうが「深い睡眠」の時間が増えることはこれまでのOura Ringのデータで確認済み。「湯船の中でNetflixを観る」という折衷案に落ち着きました。
長湯をしたので慌てて髪を乾かして寝室に行ったのは23時半。これでも自分的にはかなり早い就寝時間です。スマホで本を読みたい気持ちをこらえて目を閉じました。
2日目:寝る前のスマホを控えて湯船にも漬かったのに、昨夜の睡眠データはイマイチ。
1日目:23時に寝ようと思っても、帰宅して犬の散歩をして食事を与え、自分の夕食を作って食べたら時刻は21時すぎ。雑用を済ませてお風呂に入り、早寝をするとなると、自由時間はほぼゼロなことに気づきます。
しかし、しっかり湯船に漬かったほうが「深い睡眠」の時間が増えることはこれまでのOura Ringのデータで確認済み。「湯船の中でNetflixを観る」という折衷案に落ち着きました。
長湯をしたので慌てて髪を乾かして寝室に行ったのは23時半。これでも自分的にはかなり早い就寝時間です。スマホで本を読みたい気持ちをこらえて目を閉じました。
2日目:寝る前のスマホを控えて湯船にも漬かったのに、昨夜の睡眠データはイマイチ。
チャレンジ初日のデータ
私の「深い睡眠」の少なさに驚きます。これは体の回復ができていないことを表します。「起きた瞬間から疲れている」原因はこれかもしれません。
そういえば昨夜は羽毛布団を使い始めたものの、まだ暑く感じて深夜に何度も寝返りを打ったような気がします。寝室の環境にも注意を払う必要がありそうです。
この日は目の調子が悪く、眼科へ。飛び込みでも丁寧に診察してもらえましたが、かなり待たされ、犬の散歩や夕食が1時間半ほど後ろ倒しに。寝る時間にはまだ満腹感がありました。明日の睡眠スコアも期待できなさそう……。せめてデジタルデトックスだけでも、と考え、帰宅後はスマホを伏せて過ごしました。
3日目:寝る前の満腹感が影響したのか、睡眠時間はかなり短くなってしまいました。
そういえば昨夜は羽毛布団を使い始めたものの、まだ暑く感じて深夜に何度も寝返りを打ったような気がします。寝室の環境にも注意を払う必要がありそうです。
この日は目の調子が悪く、眼科へ。飛び込みでも丁寧に診察してもらえましたが、かなり待たされ、犬の散歩や夕食が1時間半ほど後ろ倒しに。寝る時間にはまだ満腹感がありました。明日の睡眠スコアも期待できなさそう……。せめてデジタルデトックスだけでも、と考え、帰宅後はスマホを伏せて過ごしました。
3日目:寝る前の満腹感が影響したのか、睡眠時間はかなり短くなってしまいました。
「深い睡眠」は増えている
しかし、そんな中でも「深い睡眠」が1時間以上ありました。思い当たるのは前日のスマホ断ち。ブルーライトの影響の大きさがうかがえます。
4日目:効果があるとはいえ、寝る前のスマホ断ちが本当につらい。同僚から対策として「スマホを廊下に置いて寝る」ことを提案されましたが、夜中に犬がトイレに起きると容赦なくスマホを踏むため断念。アラームを無視してしまい、起きられなくなる可能性もあります。枕元に伏せたスマホに意識を向けないようにしています。
6日目:スマホの代わりに紙の本を少し読んで寝ることに。枕元のライトで本を読んでいると、すぐに眠くなり、数ページで寝落ちしてしまいます。寝る前の読書が捗っていたのは、いつまでも眠くならないスマホ読書のせいだったようです。
8日目:友人と食事をしたあと、お茶をすることに。「満腹+飲酒+夜のカフェイン」のコンボです。しかし、友だちと会うときくらいは罪悪感なく楽しもう!と、あえて制限はしませんでした。
「とはいえ『寝酒』というくらいだし、多少お酒を飲んでもしっかり眠れるのでは?」と思いきや、心拍数がいつまでも下がらず、眠りの質の低下が見られました。
4日目:効果があるとはいえ、寝る前のスマホ断ちが本当につらい。同僚から対策として「スマホを廊下に置いて寝る」ことを提案されましたが、夜中に犬がトイレに起きると容赦なくスマホを踏むため断念。アラームを無視してしまい、起きられなくなる可能性もあります。枕元に伏せたスマホに意識を向けないようにしています。
6日目:スマホの代わりに紙の本を少し読んで寝ることに。枕元のライトで本を読んでいると、すぐに眠くなり、数ページで寝落ちしてしまいます。寝る前の読書が捗っていたのは、いつまでも眠くならないスマホ読書のせいだったようです。
8日目:友人と食事をしたあと、お茶をすることに。「満腹+飲酒+夜のカフェイン」のコンボです。しかし、友だちと会うときくらいは罪悪感なく楽しもう!と、あえて制限はしませんでした。
「とはいえ『寝酒』というくらいだし、多少お酒を飲んでもしっかり眠れるのでは?」と思いきや、心拍数がいつまでも下がらず、眠りの質の低下が見られました。
平均の心拍数も高め
眠りの序盤に「深い睡眠」なし
眠りの深さを見ると、心拍数が下がるタイミングで深い睡眠に移行しています。睡眠時の心拍数を下げないと、体が休まらないということがよくわかります。
睡眠スコアは惨憺たるものでしたが、ストレスは解消できたのでよしとします。これからのシーズンはこういう日が続かないように調整したいものです。
9日目:起きると口がカラカラに乾いている日が続いています。思いつきで寝る前に市販の鼻呼吸テープで口を閉じてみました。最初は違和感を感じたものの、すぐに慣れます。データ上は目立った変化はないものの、疲れが取れやすいような気がします。
10日目:比較的ラクに続けられている「14時のカフェイン締め」は効果絶大。午後の眠気を感じにくくなります。代わりに22時をすぎると眠くてたまらず、ソファで寝落ちする場合も。ここで歯を磨くとせっかくの眠気が消えてしまうので、最近は夕食後すぐに歯を磨くことに決めています。
11日目:現時点での睡眠負債が思ったほど減っておらず、ヒマだったので早く寝ることに。
睡眠スコアは惨憺たるものでしたが、ストレスは解消できたのでよしとします。これからのシーズンはこういう日が続かないように調整したいものです。
9日目:起きると口がカラカラに乾いている日が続いています。思いつきで寝る前に市販の鼻呼吸テープで口を閉じてみました。最初は違和感を感じたものの、すぐに慣れます。データ上は目立った変化はないものの、疲れが取れやすいような気がします。
10日目:比較的ラクに続けられている「14時のカフェイン締め」は効果絶大。午後の眠気を感じにくくなります。代わりに22時をすぎると眠くてたまらず、ソファで寝落ちする場合も。ここで歯を磨くとせっかくの眠気が消えてしまうので、最近は夕食後すぐに歯を磨くことに決めています。
11日目:現時点での睡眠負債が思ったほど減っておらず、ヒマだったので早く寝ることに。
だいぶ改善したけどまだ多め
たった30分早く寝るだけで、翌日の回復スコアが劇的に改善しました。
12日目:HRVという謎の数値が、なぜか仕事の調子と連動していることに気づきます。
12日目:HRVという謎の数値が、なぜか仕事の調子と連動していることに気づきます。
日曜の夜ふかしが月曜に影響
調べてみると「HRV(心拍変動バランス)」は、自律神経のバランスがどれだけ取れているかを示したものだといいます。HRVが高いと副交感神経が優位でリラックスしており、休息・回復ができている状態です。
日曜の夜はドラマを見たり、ネイルを塗り替えたりと夜ふかししがちなので月曜はいつも低調で、心を入れ替えて早寝をした火曜日は元気……という私の現状がそのまま現れています。
また適度な運動をした日の方が、HRVが高く、深い回復が得られることに気づきました。
13日目:嫌なことがあったので早く寝ることに。
ストレス解消の選択肢として、スマホや動画鑑賞に加えて「早寝」が浮上してきたのは私的に進歩です。しかしストレスを抱えて眠りにつくと、寝付きはやや悪くなるのが確認できます。
14日目:睡眠改善プロジェクトは今日で一旦一区切り。睡眠負債は「やや解消」といったところでしょうか。
しかし年単位で続けてきた、睡眠に対して意識の低い生活から見れば、短期間で大きな改善ができているという見方もできると思います。
日曜の夜はドラマを見たり、ネイルを塗り替えたりと夜ふかししがちなので月曜はいつも低調で、心を入れ替えて早寝をした火曜日は元気……という私の現状がそのまま現れています。
また適度な運動をした日の方が、HRVが高く、深い回復が得られることに気づきました。
13日目:嫌なことがあったので早く寝ることに。
ストレス解消の選択肢として、スマホや動画鑑賞に加えて「早寝」が浮上してきたのは私的に進歩です。しかしストレスを抱えて眠りにつくと、寝付きはやや悪くなるのが確認できます。
14日目:睡眠改善プロジェクトは今日で一旦一区切り。睡眠負債は「やや解消」といったところでしょうか。
しかし年単位で続けてきた、睡眠に対して意識の低い生活から見れば、短期間で大きな改善ができているという見方もできると思います。
睡眠ハックで得られた変化
2週間の睡眠ハックを経て、睡眠負債10時間超えだった私の、Oura Ring上の睡眠データは以下のように変化しました。
効率よく眠れるように
睡眠ハックに取り組む前とあとでは平均的な数値が
睡眠効率:72 →91
深い睡眠時間:35分 → 72分
HRV:23 → 47m
と変わっています。
数値的には「目覚ましい変化」と言えるほどではないかもしれません。しかし睡眠負債の根絶にはほど遠くとも、体感している変化は目覚ましいものがあります。
一番うれしいのは、朝起きた瞬間から「疲れた……」と感じることがなくなったこと。
また、一定の集中力を保ったまま本が読めるようになりました。これまでの「スマホは見るけどなぜか本は読めない」状態を脱することができたのは、個人的に大きな収穫です。積読の解消なるか? 今後が楽しみなポイントです。
その他、朝会での発言回数が自然と増えたり、周囲の雑音が聞こえないほど仕事に集中できたりと、仕事に対しても無意識にポジティブでいられるように。スマホと距離を置くようにしたせいか、ダラダラとSNSを徘徊する時間も削減できました。
睡眠効率:72 →91
深い睡眠時間:35分 → 72分
HRV:23 → 47m
と変わっています。
数値的には「目覚ましい変化」と言えるほどではないかもしれません。しかし睡眠負債の根絶にはほど遠くとも、体感している変化は目覚ましいものがあります。
一番うれしいのは、朝起きた瞬間から「疲れた……」と感じることがなくなったこと。
また、一定の集中力を保ったまま本が読めるようになりました。これまでの「スマホは見るけどなぜか本は読めない」状態を脱することができたのは、個人的に大きな収穫です。積読の解消なるか? 今後が楽しみなポイントです。
その他、朝会での発言回数が自然と増えたり、周囲の雑音が聞こえないほど仕事に集中できたりと、仕事に対しても無意識にポジティブでいられるように。スマホと距離を置くようにしたせいか、ダラダラとSNSを徘徊する時間も削減できました。
リングがなくても始められる「プチ睡眠ハック」
睡眠に関するPDCAを高速で回した2週間。頑張った割にデータの改善が見られなかった日もありましたが、一方で「こんなことで睡眠負債を減らせるの?」と驚いたことも。
日常の一見関係なさそうな小さな習慣が睡眠の質に意外な影響を与えます。ここでは、スマートリングがなくてもすぐに始められる「プチ睡眠ハック」をお伝えします。
日常の一見関係なさそうな小さな習慣が睡眠の質に意外な影響を与えます。ここでは、スマートリングがなくてもすぐに始められる「プチ睡眠ハック」をお伝えします。
空腹で寝る
満腹状態での就寝は、本来なら修復・回復に使うはずの体内のリソースを消化処理に割り当て続けることになります。疲れを持ち越さないためにも、就寝3時間前には食事を終えて「心地よい空腹感を感じて寝る」といい感じ。
Oura Ringで確認すると、空腹で寝た翌日は最低心拍数の低下、HRVの向上、深い睡眠時間の増加が確認できました。消化活動がないと夜間の心拍数がより低く安定する傾向があります。
Oura Ringで確認すると、空腹で寝た翌日は最低心拍数の低下、HRVの向上、深い睡眠時間の増加が確認できました。消化活動がないと夜間の心拍数がより低く安定する傾向があります。
足湯をする
人間は手足の末端から熱を放散して深部体温を下げます。この熱の放散を促すため、湯船につかれない日は寝る前に足湯をして血管を拡張させるようにしました。就寝30分〜1時間前に、洗面器に40℃程度のぬるめの湯を張って10〜15分足を漬けます。
入眠潜時の短縮と、皮膚温データから体温がスムーズに低下している様子が確認できました。
入眠潜時の短縮と、皮膚温データから体温がスムーズに低下している様子が確認できました。
朝一番の水分補給
睡眠中は汗などで水分が失われ、体は軽い脱水状態。起床後すぐの水分補給は、内臓に「活動開始」の明確な信号を送り、体内時計のリセットを促してくれるそう。起きてすぐ朝日を浴びるのと同じくらい、夜の自然な眠気につながる好循環が生まれます。
Oura Ringで見る限り、直接的な睡眠への影響は見えにくいですが、日中のアクティビティスコアや回復スコアが向上しやすい実感があります。
Oura Ringで見る限り、直接的な睡眠への影響は見えにくいですが、日中のアクティビティスコアや回復スコアが向上しやすい実感があります。
鼻呼吸テープ
夜間の口呼吸は酸素摂取効率を下げ、いびきや睡眠時無呼吸のリスクを高めます。また口腔内の乾燥により細菌繁殖が促進され、炎症反応で睡眠が浅くなるのだとか。市販の鼻呼吸テープで口を軽く閉じるだけで、これらの問題を一挙に解決できます。
Oura Ringで確認すると、深い睡眠時間の増加、最低心拍数の低下、HRVの向上がみられます。不快な口の渇きがないのもうれしい。
Oura Ringで確認すると、深い睡眠時間の増加、最低心拍数の低下、HRVの向上がみられます。不快な口の渇きがないのもうれしい。
寝室の気温を下げる
眠るときは暖かい部屋で快適に、と考えがちですが、入眠には深部体温の低下が必要。涼しい環境のほうが睡眠の質は高くなるそう。
私は寝る前に寝室の窓を開けて換気したのち、そのままエアコンなしで寝ていますが、起きたときの寒さがつらい場合はエアコンの「おやすみタイマー」を活用し、寝る30分前から室温を少し下げましょう。少し加湿すると鼻呼吸のしやすさも期待できます。
Oura Ringでチェックすると寝入りばなに体温がすっと下がり、深い睡眠の増加と、夜間の体温変動がより自然なパターンになることが確認できます。
私は寝る前に寝室の窓を開けて換気したのち、そのままエアコンなしで寝ていますが、起きたときの寒さがつらい場合はエアコンの「おやすみタイマー」を活用し、寝る30分前から室温を少し下げましょう。少し加湿すると鼻呼吸のしやすさも期待できます。
Oura Ringでチェックすると寝入りばなに体温がすっと下がり、深い睡眠の増加と、夜間の体温変動がより自然なパターンになることが確認できます。
睡眠ハックは「60点主義」で継続を
「質の良い睡眠」を作る生活習慣はいくつもありますが、2週間の睡眠ハックを経て思うのは「良い睡眠はストイックな生活と引き換えに手に入れるもの」ということ。
全部を同時に始めると続かないため、まず「足湯」「朝の水分補給」など簡単なものから開始し、眠りにポジティブな影響を与える習慣を継続していきましょう。
寝る時間も「毎日早寝」ではなく「週4〜5回できればOK」というゆるいルールで始める方が長続きします。小さな改善の積み重ねが、最終的に大きなパフォーマンス向上につながります。
スマートリングやスマートウォッチがあれば、睡眠スコア、深い睡眠時間、HRVなどを「導入前1週間 vs 導入後1週間」で比較し、自分に最も効果的なハックの組み合わせを見つけられるはず。
生活習慣は60点でも大丈夫。睡眠ハックは継続が一番です。ゆるく続けていくうちに「こんなに頭がスッキリしているのは久しぶり」という感覚に出合えるはずです。
全部を同時に始めると続かないため、まず「足湯」「朝の水分補給」など簡単なものから開始し、眠りにポジティブな影響を与える習慣を継続していきましょう。
寝る時間も「毎日早寝」ではなく「週4〜5回できればOK」というゆるいルールで始める方が長続きします。小さな改善の積み重ねが、最終的に大きなパフォーマンス向上につながります。
スマートリングやスマートウォッチがあれば、睡眠スコア、深い睡眠時間、HRVなどを「導入前1週間 vs 導入後1週間」で比較し、自分に最も効果的なハックの組み合わせを見つけられるはず。
生活習慣は60点でも大丈夫。睡眠ハックは継続が一番です。ゆるく続けていくうちに「こんなに頭がスッキリしているのは久しぶり」という感覚に出合えるはずです。

中野 亜希
ライター・コラムニスト
大学卒業後、ブログをきっかけにライターに。会社員として勤務する傍らブックレビューや美容コラム、各種ガジェットに関する記事執筆は2000本以上。趣味は読書、料理、美容、写真撮影など。
X:@752019













