黒木華×野呂佳代が都知事選に挑む!「わきまえない女たち」の政治エンタメ『銀河の一票』
『銀河の一票』
与党幹事長の娘であり秘書を務める茉莉(黒木華)。ある日届いた怪文書の真相を追おうとしたことが父の逆鱗(げきりん)に触れ、家も仕事もすべてを奪われてしまう。「政界に戻りたい」と願う茉莉が目を付けたのは、偶然出会ったスナックのママ・月岡あかり(野呂佳代)。都知事は副知事を指名することができる——。自分を副知事に指名させるため、茉莉はあかりを都知事選へ担ぎ出すという破天荒な奇策に打って出る。
「スナックのママが都知事選出馬!?」の疑問を納得に変える丁寧なビルドアップ
政治の「中の人」の視点から選挙活動のリアルな仕組みや駆け引きを描きつつ、小難しい政治劇に落とさず極上のエンターテインメントに仕上げた本作。序盤をじっくり使い、「人間力が高いといっても、なぜスナックのママを都知事に?」という疑問を物語の説得力へと変えていく構成が見事で、気がつけば2人の挑戦を全力で応援したくなる。黒木華と野呂佳代の主演コンビはもちろん、三浦透子、シシド・カフカなど、魅力的な女性たちが、シスターフッド、挫折からの成長、「大人になった今だからこその青春」を描き出す。
実の父から「秘書」としてドライに扱われる一方、政治家の娘だからと敬遠されて親しい友達はできない。同僚たちからは「お嬢」と呼ばれ、どこに行っても「幹事長の娘」であることがついて回る茉莉。
怪文書の裏を取ろうと、茉莉は父の秘書・雫石の行動記録を盗み見ようと画策する。そのやり口に「涼しい顔でよくこんなことを……」と思っていると、出し抜いたつもりの雫石から手痛いしっぺ返しを食らう。海千山千の政界の大人たちのほうが、一枚も二枚も上手だったのだ。
そんな自分を変えたいという思いと「社会の停滞感を変えたい」という意思が交わるプロットに、茉莉のセリフ「政治の話じゃないです。私たちの話です」が重なり、胸が熱くなる。
●『銀河の一票』(Amazon Prime Video)(FOD)(Hulu)(Netflix)(U-NEXT)
実の父から「秘書」としてドライに扱われる一方、政治家の娘だからと敬遠されて親しい友達はできない。同僚たちからは「お嬢」と呼ばれ、どこに行っても「幹事長の娘」であることがついて回る茉莉。
怪文書の裏を取ろうと、茉莉は父の秘書・雫石の行動記録を盗み見ようと画策する。そのやり口に「涼しい顔でよくこんなことを……」と思っていると、出し抜いたつもりの雫石から手痛いしっぺ返しを食らう。海千山千の政界の大人たちのほうが、一枚も二枚も上手だったのだ。
そんな自分を変えたいという思いと「社会の停滞感を変えたい」という意思が交わるプロットに、茉莉のセリフ「政治の話じゃないです。私たちの話です」が重なり、胸が熱くなる。
●『銀河の一票』(Amazon Prime Video)(FOD)(Hulu)(Netflix)(U-NEXT)
記憶を消してもう一度見たい!軍艦島の人々をめぐる愛と謎『海に眠るダイヤモンド』
『海に眠るダイヤモンド』
2018年、東京でその日暮らしを送るホストの玲央(神木隆之介)は、謎の老婦人・いづみ(宮本信子)から突然プロポーズを受ける。彼女の初恋の相手であり、自分と瓜二つの面影を持つ男・鉄平の足跡をたどるうちに、物語は1950年代、石炭産業で栄華を極めた長崎県・端島(軍艦島)の記憶へと遡っていく。
石炭から石油へとエネルギーの主役が移り変わる時代のうねりの中で生きた人々の、生涯をかけた友情と純愛の真相とは——。
石炭から石油へとエネルギーの主役が移り変わる時代のうねりの中で生きた人々の、生涯をかけた友情と純愛の真相とは——。
いづみは誰なのか?現代と過去をつなぐミステリー
高度経済成長期の端島と、現代の東京。いづみが言うには、玲央は端島にいたいづみの初恋の相手と瓜二つなのだという。彼らはどんな関係なのか?というのが序盤の謎だ。
物語は端島パートと東京パートが交互に進むが、端島パートに登場する3人の女性たちに「いづみ」という名のものはいない。いづみは、かつての端島にいた誰に当たるのか。想い人の鉄平はいま、どこにいるのか……? この物語は壮大な歴史絵巻であると同時に、散りばめられたピースが過去と現代で重なり合う上質なミステリーとしても観るものを引き込んでいく。
炭鉱の島に生きた若者たちの息遣い、感情の揺らぎが画面越しに生々しく伝わる演技と演出がすばらしい。特に物語の大きな転換点となる、ある女性と鉄平の心が通い合うシーンは、ドラマであることを忘れ、「2人が本当にそこに実在していた」としか思えないほどの純度と熱量を放っており、本作屈指の必見シーンだ。
タイトルにある「ダイヤモンド」は炭鉱に夢をみた人々が望んだ「黒いダイヤ」、つまり石炭であり、また「誰もが生まれながらに携えている輝きや想い」でもあるのかもしれない。かつての誰かに似ていると声をかけられる。そんな偶然の出会いや運の巡り合わせによって、人は自分自身のダイヤモンドを見つけられるのかも……そんな気持ちにさせてくれる。
もう1つ、物語のラストに出てくる「ダイヤモンド」がある。そのあまりに切ない真相は、どんなに泣いても問題ない、翌日の予定がない日に確かめてほしい。
●『海に眠るダイヤモンド』(Amazon Prime Video)(U-NEXT)
ささいな出来事から日常が崩れ、あるいは動き出す5つの物語。日常の崩壊、狂気、そして再生。激動のドラマを見届けたとき、画面越しの私たちの心にも変化が生まれるかもしれない。長くなり始めた夜にでも、じっくりと傑作たちを堪能してほしい。
物語は端島パートと東京パートが交互に進むが、端島パートに登場する3人の女性たちに「いづみ」という名のものはいない。いづみは、かつての端島にいた誰に当たるのか。想い人の鉄平はいま、どこにいるのか……? この物語は壮大な歴史絵巻であると同時に、散りばめられたピースが過去と現代で重なり合う上質なミステリーとしても観るものを引き込んでいく。
炭鉱の島に生きた若者たちの息遣い、感情の揺らぎが画面越しに生々しく伝わる演技と演出がすばらしい。特に物語の大きな転換点となる、ある女性と鉄平の心が通い合うシーンは、ドラマであることを忘れ、「2人が本当にそこに実在していた」としか思えないほどの純度と熱量を放っており、本作屈指の必見シーンだ。
タイトルにある「ダイヤモンド」は炭鉱に夢をみた人々が望んだ「黒いダイヤ」、つまり石炭であり、また「誰もが生まれながらに携えている輝きや想い」でもあるのかもしれない。かつての誰かに似ていると声をかけられる。そんな偶然の出会いや運の巡り合わせによって、人は自分自身のダイヤモンドを見つけられるのかも……そんな気持ちにさせてくれる。
もう1つ、物語のラストに出てくる「ダイヤモンド」がある。そのあまりに切ない真相は、どんなに泣いても問題ない、翌日の予定がない日に確かめてほしい。
●『海に眠るダイヤモンド』(Amazon Prime Video)(U-NEXT)
ささいな出来事から日常が崩れ、あるいは動き出す5つの物語。日常の崩壊、狂気、そして再生。激動のドラマを見届けたとき、画面越しの私たちの心にも変化が生まれるかもしれない。長くなり始めた夜にでも、じっくりと傑作たちを堪能してほしい。

中野 亜希
ライター・コラムニスト
大学卒業後、ブログをきっかけにライターに。会社員として勤務する傍らブックレビューや美容コラム、各種ガジェットに関する記事執筆は2000本以上。趣味は読書、料理、美容、写真撮影など。
X:@752019













