多様性・ダイバーシティの必要性はビジネスシーンでももはや常識だが、実務などで携わっていない限り、どこかで誰かがやるものだと傍観者に収まってしまいがちだ。
多様性への取り組みは、人びとを生きやすく、幸せにする鍵でもある。その実現のためには、差別や偏見の防止や構造的な障壁を取り除くことはもちろんだが、異なるバックグラウンドや視点を持つ人が集まることで促進される創造性やイノベーション、個々の活躍と相互理解について未来を見据えていく必要がある。
マーケティングからの視点やテクノロジーの活用など、さまざまなケースで求められる多様性のポイントを、じっくり考えてみよう。
多様性への取り組みは、人びとを生きやすく、幸せにする鍵でもある。その実現のためには、差別や偏見の防止や構造的な障壁を取り除くことはもちろんだが、異なるバックグラウンドや視点を持つ人が集まることで促進される創造性やイノベーション、個々の活躍と相互理解について未来を見据えていく必要がある。
マーケティングからの視点やテクノロジーの活用など、さまざまなケースで求められる多様性のポイントを、じっくり考えてみよう。
「弱さ」は伸びしろと多様性にあふれている
誰もが抱えている弱み、できないこと=マイノリティ性に、あなたはどう向き合っているだろうか。自分も他者も、弱点は克服すべきものと捉えている人が大半だろう。
本書の著者は、世の中では「弱さ」「マイノリティ」とされることを起点に社会課題を解決する仕掛け人の澤田氏。
大手代理店でコピーライターとして活躍していた著者は、視覚障害者である息子をきっかけに、障害当事者たちに会いに行き、それぞれが抱えている困難の乗り越え方、幸せの定義を学びなおしていく。そこで、弱さは克服するのではなく「生かすもの」だと気づき、間口とハードルを下げて楽しさを追求する「ゆるスポーツ」を考案、協会を設立した。
弱さは社会の伸びしろであり、分析されたマーケティングの枠からこぼれ落ちた課題は山積みだ。マジョリティとマイノリティを分断せず「誰かの弱さは、誰かの強さを引き出す」ことで、使い捨てではない成長につながる。持続可能なアイデアのヒントを得られる1冊だ。著者自身が楽しみながら活動している息づかいが感じられる文章で、固定観念をゆるめてくれるだろう。
本書の著者は、世の中では「弱さ」「マイノリティ」とされることを起点に社会課題を解決する仕掛け人の澤田氏。
大手代理店でコピーライターとして活躍していた著者は、視覚障害者である息子をきっかけに、障害当事者たちに会いに行き、それぞれが抱えている困難の乗り越え方、幸せの定義を学びなおしていく。そこで、弱さは克服するのではなく「生かすもの」だと気づき、間口とハードルを下げて楽しさを追求する「ゆるスポーツ」を考案、協会を設立した。
弱さは社会の伸びしろであり、分析されたマーケティングの枠からこぼれ落ちた課題は山積みだ。マジョリティとマイノリティを分断せず「誰かの弱さは、誰かの強さを引き出す」ことで、使い捨てではない成長につながる。持続可能なアイデアのヒントを得られる1冊だ。著者自身が楽しみながら活動している息づかいが感じられる文章で、固定観念をゆるめてくれるだろう。
『マイノリティデザイン 弱さを生かせる社会をつくろう』
発行:ライツ社
著者:澤田智洋
定価:1870円(税込)
発行日:2021年3月3日
判型:四六判
頁数:330P
ISBN:978-4-9090-4429-7
https://wrl.co.jp/2020/12/25/minority-design/
発行:ライツ社
著者:澤田智洋
定価:1870円(税込)
発行日:2021年3月3日
判型:四六判
頁数:330P
ISBN:978-4-9090-4429-7
https://wrl.co.jp/2020/12/25/minority-design/
多様性への視野を広げて焦点を絞りなおす第一歩を
今や日常的に見聞きする「多様性・ダイバーシティの推進」は、表向きはポジティブな文脈で語られている。しかし、実態は受け入れやすい特定の差異を選別し、マーケティング対象やイメージアップの目的として都合よく管理、消費されているものが多い。
本書は、LGBT、ジェンダー、移民、視覚障害者、貧困、生きづらさなど、日本社会で多様性をめぐる問題に取り組んでいる8名の研究者が、差別構造の解消に向けた連帯と実践の可能性を探る1冊だ。
中でも、マイノリティと認知されにくい「生きづらさ」の研究は、特に身近に感じやすいだろう。「生きづらさからの当事者研究会」は、就労や就学、症状の改善といった直線的なゴールを設定せず、生きづらさを抱えた自己を語り合う活動を、大阪で月に1回行っている。それぞれが孤立感を開示し、受け止め合うことで「自分とは何か」を考える取り組みは、当事者たちの支援ニーズのヒントに満ちている。
無自覚な線引き、思い込みは誰にでもあることを前提に、どのような視野や連帯、実践が求められるのかを考察していくことが不可欠だ。具体的な事例が多く論点も明確なので、学びの導入として手に取ってみてほしい。
本書は、LGBT、ジェンダー、移民、視覚障害者、貧困、生きづらさなど、日本社会で多様性をめぐる問題に取り組んでいる8名の研究者が、差別構造の解消に向けた連帯と実践の可能性を探る1冊だ。
中でも、マイノリティと認知されにくい「生きづらさ」の研究は、特に身近に感じやすいだろう。「生きづらさからの当事者研究会」は、就労や就学、症状の改善といった直線的なゴールを設定せず、生きづらさを抱えた自己を語り合う活動を、大阪で月に1回行っている。それぞれが孤立感を開示し、受け止め合うことで「自分とは何か」を考える取り組みは、当事者たちの支援ニーズのヒントに満ちている。
無自覚な線引き、思い込みは誰にでもあることを前提に、どのような視野や連帯、実践が求められるのかを考察していくことが不可欠だ。具体的な事例が多く論点も明確なので、学びの導入として手に取ってみてほしい。
『多様性との対話 ダイバーシティ推進が見えなくするもの』
発行:青弓社
編者:岩渕功一
定価:1760円(税込)
発行日:2021年3月26日
判型:四六判
頁数:240P
ISBN:978-4-7872-3483-4
https://www.seikyusha.co.jp/bd/isbn/9784787234834/
発行:青弓社
編者:岩渕功一
定価:1760円(税込)
発行日:2021年3月26日
判型:四六判
頁数:240P
ISBN:978-4-7872-3483-4
https://www.seikyusha.co.jp/bd/isbn/9784787234834/
不完全さを抱えたままでともに生きていく
「テクノロジーで障害を克服」と聞くと、誰もがポジティブなイメージを描くだろう。しかし、それは誰にとってのストーリーで幸せなゴールなのか、当事者たちの立場で考えるとはどういうことなのか。
本書は、ともに障害を抱えるSF作家のキム・チョヨプ氏と、弁護士でパフォーマーのキム・ウォニョン氏が「障害とテクノロジー」をテーマにした共著。2人の日常生活や諸外国の事例も踏まえ、現代の技術開発の方向性が当事者を置き去りにしていると気づかされる。
今日明日の不便を解消したいと困り続けている人は、「ある日突然、目が見えるようになった」「耳が聴こえる」といったドラマティックなゴールを描いていない。自立よりも連立できる社会づくりのほうが現実的な生きやすさにつながるからだ。
障害を抱えて生きる人たちは、それをアイデンティティとして、生きるしかなかったという自負がある。私たちは非障害者であるマジョリティ側のほうが幸せだと、無自覚に決めつけているかもしれない。正解は人の数だけあり、大切なのはまず当事者を尊重することだ。想像力を働かせて、一人一人に向き合うための新たな視点を築けるだろう。
本書は、ともに障害を抱えるSF作家のキム・チョヨプ氏と、弁護士でパフォーマーのキム・ウォニョン氏が「障害とテクノロジー」をテーマにした共著。2人の日常生活や諸外国の事例も踏まえ、現代の技術開発の方向性が当事者を置き去りにしていると気づかされる。
今日明日の不便を解消したいと困り続けている人は、「ある日突然、目が見えるようになった」「耳が聴こえる」といったドラマティックなゴールを描いていない。自立よりも連立できる社会づくりのほうが現実的な生きやすさにつながるからだ。
障害を抱えて生きる人たちは、それをアイデンティティとして、生きるしかなかったという自負がある。私たちは非障害者であるマジョリティ側のほうが幸せだと、無自覚に決めつけているかもしれない。正解は人の数だけあり、大切なのはまず当事者を尊重することだ。想像力を働かせて、一人一人に向き合うための新たな視点を築けるだろう。
『サイボーグになる テクノロジーと障害、わたしたちの不完全さについて』
発行:岩波書店
著者:キム・チョヨプ、キム・ウォニョン 著/牧野美加 訳
定価:2970円(税込)
発行日:2022年11月17日
判型:四六判
頁数:316P
ISBN:978-4-00061-567-9
https://www.iwanami.co.jp/book/b615154.html
発行:岩波書店
著者:キム・チョヨプ、キム・ウォニョン 著/牧野美加 訳
定価:2970円(税込)
発行日:2022年11月17日
判型:四六判
頁数:316P
ISBN:978-4-00061-567-9
https://www.iwanami.co.jp/book/b615154.html
葉々社 小谷輝之
本屋と出版社
2社の出版社勤務を経て、2022年4月に東京・梅屋敷で本屋「葉々社」を開店。ひとりで本屋の運営を切り盛りしながら、出版社としての本作りにも取り組み中。Twitter:@youyousha_books