水辺の生き物・ヒラムシを参考に水中を泳ぐロボット
スイス連邦工科大学ローザンヌ校(Swiss Federal Institute of Technology in Lausanne、EPLF)の研究者は2025年2月、海岸にいる「ヒラムシ」と呼ばれる平べったいウミウシのような動物の特徴を取り入れ、水面・水中を泳ぐように移動するロボットを開発したと、学術誌Science Roboticsに発表しました。

ヒラムシの身体を模倣した仕組みで泳ぐロボット(出典:EPFL-LMTS)
EPFLの研究チームは、2020年に昆虫サイズの自律ロボットを開発し、地面をはうように移動する技術を実証していました。しかし今回のワイヤレスのヒラムシ型ロボットは水面・水中で動作可能。そしてそこには、強力なアクチュエーターの開発、新しい推進システムの確立、そして超小型かつ高電圧な電子制御システムの開発という、それまでとはまったく別の、新しい課題があったと研究者は述べています。
ヒラムシを模倣した小型水中ロボット
via www.youtube.com
このロボットは、サイズが長さ45mm、幅55mmでクレジットカードよりも小さく、狭いところでも移動できます。重さもわずか6gしかありません。
その推進システムは、ヒラムシが体の左右のひれをうねらせるように動かすのを模倣し、水面を波立たせて前進する仕組みです。ヒラムシのひれの動きを模倣するために、柔軟性のある6mm厚のゴム膜を採用し、独自開発したアクチュエーターに接続しました。
アクチュエーターを駆動する電子制御システムは、使用電力量は500mWながら、500Vもの電圧を使用し、ヒラムシの10倍の速さでひれを動かせるとのことです。
現在はまだ試作段階で、光センサーによって光源の方向を検知し、水面をその方向へ進むという、シンプルな機能のみを備えています。また電子回路基板をむき出しにしたまま水面に浮かべるのは危険に思えますが、基板はシールドコーティングされ完全防水で、使用する電圧は高い一方で流れる電流が微少なため、安全なのだそうです。
研究チームはこのヒラムシロボットを、将来的にはボートなどの水上機械の検査に使ったり、池や水田、珊瑚礁や湖など、外部の影響を受けやすい環境の生態学研究、水質分析・監視、精密農業などへの適用を想定しています。
自然界で活動する生物たちは、それぞれが生息する環境に適応した進化を経てそこにいます。そのため、生物の特徴を分析して洞察を得ること、またそこから着想したバイオミメティクスロボットを開発し活用することは、自然環境をわれわれに都合の良いように変えるのでなく、自然と調和しながらともに生きるための仕組みを実現し、持続可能な未来を築く一助となるのではないでしょうか。
その推進システムは、ヒラムシが体の左右のひれをうねらせるように動かすのを模倣し、水面を波立たせて前進する仕組みです。ヒラムシのひれの動きを模倣するために、柔軟性のある6mm厚のゴム膜を採用し、独自開発したアクチュエーターに接続しました。
アクチュエーターを駆動する電子制御システムは、使用電力量は500mWながら、500Vもの電圧を使用し、ヒラムシの10倍の速さでひれを動かせるとのことです。
現在はまだ試作段階で、光センサーによって光源の方向を検知し、水面をその方向へ進むという、シンプルな機能のみを備えています。また電子回路基板をむき出しにしたまま水面に浮かべるのは危険に思えますが、基板はシールドコーティングされ完全防水で、使用する電圧は高い一方で流れる電流が微少なため、安全なのだそうです。
研究チームはこのヒラムシロボットを、将来的にはボートなどの水上機械の検査に使ったり、池や水田、珊瑚礁や湖など、外部の影響を受けやすい環境の生態学研究、水質分析・監視、精密農業などへの適用を想定しています。
自然界で活動する生物たちは、それぞれが生息する環境に適応した進化を経てそこにいます。そのため、生物の特徴を分析して洞察を得ること、またそこから着想したバイオミメティクスロボットを開発し活用することは、自然環境をわれわれに都合の良いように変えるのでなく、自然と調和しながらともに生きるための仕組みを実現し、持続可能な未来を築く一助となるのではないでしょうか。

Munenori Taniguchi
ライター。ガジェット全般、宇宙、科学、音楽、モータースポーツetc.、電気・ネットワーク技術者。
実績媒体:TechnoEdge、Gadget Gate、Engadget日本版、Autoblog日本版、Forbes JAPAN他
Twitter:@mu_taniguchi