NASAは、土星の衛星タイタンにドローン型探査機を着陸させ、あらかじめ設定したポイントに飛行して移動し、その場所を探査する「ドラゴンフライ(Dragonfly)」ミッションの打ち上げを2028年7月に予定しています。
探査機ドラゴンフライ(出典:NASA / Johns Hopkins APL / Steve Gribben)
タイタンにはどんな“雨”が降る?
衛星タイタンといえば、今から約20年前に土星を訪れたNASAの探査機カッシーニによる観測が思い出されます。カッシーニは、搭載していた欧州宇宙機関(ESA)の小型惑星探査機ホイヘンスをタイタンに投下。タイタンへの着陸に成功したホイヘンスは、タイタン地表の写真や、そこに吹く風の音をわれわれに送り届けました。
ホイヘンスが撮影したタイタン地表(出典:ESA / NASA / アリゾナ大学)
ホイヘンスからの科学観測データは詳細に分析され、10年後の2015年にはその成果をまとめた資料も発表されました。データからは、タイタンの地上に液体メタンや液体エタンなどの炭化水素成分でできた湖または海があり、そこから蒸発したメタンやエタンが、地球の水循環のように雨となって上空から地表に降る気候活動があることが示されました。
タイタンの大気は約93%が窒素であり、残りのわずかな成分はメタン(またはエタン)の雲や、窒素を多く含む有機スモッグで構成されています。
タイタンには水(H2O)も存在していると考えられています。現地はマイナス約180℃という極低温環境であるため、水は通常なら氷ってしまいますが、地下はもう少し温度が高く、融点がマイナス90℃付近のアンモニア水溶液が存在すると考えられています。
科学者らは、ホイヘンスのデータから水の存在下で生成されるトルエンと呼ばれる有機化合物を発見しています。そのため、今回のドラゴンフライミッションでデータをさらに集めて分析・研究を深めていけば、タイタンの状況を基にして、過去の地球で生命がどのように誕生したかを説明する手がかりも見つかるかもしれません。
タイタンの大気は約93%が窒素であり、残りのわずかな成分はメタン(またはエタン)の雲や、窒素を多く含む有機スモッグで構成されています。
タイタンには水(H2O)も存在していると考えられています。現地はマイナス約180℃という極低温環境であるため、水は通常なら氷ってしまいますが、地下はもう少し温度が高く、融点がマイナス90℃付近のアンモニア水溶液が存在すると考えられています。
科学者らは、ホイヘンスのデータから水の存在下で生成されるトルエンと呼ばれる有機化合物を発見しています。そのため、今回のドラゴンフライミッションでデータをさらに集めて分析・研究を深めていけば、タイタンの状況を基にして、過去の地球で生命がどのように誕生したかを説明する手がかりも見つかるかもしれません。
イーロン・マスク率いるSpaceXが打ち上げる「ドラゴンフライ」
ドラゴンフライミッションの主な目的は、過去の探査を踏まえ、これまでにわかったタイタンの気候や地上の様子から、そこにあるかもしれない「生命誕生の兆候」を探すことです。
2024年11月、NASAはドラゴンフライミッションで探査機ドラゴンフライを打ち上げ、タイタンまで送り届けるロケットとしてイーロン・マスク率いるSpaceXのファルコン・ヘビーを選定し、契約を結んだと発表しました。
ファルコン・ヘビーはこれまでに11回の打ち上げ実績があり、2024年10月には木星の衛星エウロパを観測する探査機エウロパ・クリッパーの打ち上げにも使われています。
2024年11月、NASAはドラゴンフライミッションで探査機ドラゴンフライを打ち上げ、タイタンまで送り届けるロケットとしてイーロン・マスク率いるSpaceXのファルコン・ヘビーを選定し、契約を結んだと発表しました。
ファルコン・ヘビーはこれまでに11回の打ち上げ実績があり、2024年10月には木星の衛星エウロパを観測する探査機エウロパ・クリッパーの打ち上げにも使われています。
SpaceXのロケット「ファルコン・ヘビー」(出典:SpaceX)
ドラゴンフライは、ファルコン・ヘビーによって打ち上げられたのち、一度地球にフライバイ(着陸せずに接近)することで地球の重力を利用した加速を行い、タイタンへ向かいます。そして約6年を経た2034年にタイタンに到着すると、LiDAR(注:ライダー、レーザー光を使って物体までの距離や周囲の地形を高精度に測定する技術)やレーダーを駆使した自律制御によって軟着陸を行います。
Munenori Taniguchi
ライター。ガジェット全般、宇宙、科学、音楽、モータースポーツetc.、電気・ネットワーク技術者。
実績媒体:TechnoEdge、Gadget Gate、Engadget日本版、Autoblog日本版、Forbes JAPAN他
Twitter:@mu_taniguchi