地球外生命との遭遇はもうすぐ!?エイリアン実在の「状況証拠」と科学者の「本音」

Munenori Taniguchi

Specialテクノロジー

地球外生命の発見まで「あと数年!?」

ここ数年、地球外生命の存在やその発見の可能性に関するニュースは、肯定的なものが多くなっています。

例えば2023年9月に発表された論文では、水が液体で存在できる環境と考えられる太陽系外惑星の観測によって「今後5年ほどのうちに生命の兆候を発見できるだろう」と、ケンブリッジ大学天文学研究所のニック・マドゥスダン教授らが述べています。

また2024年9月には、SETI(地球外知的生命探査)研究所 カール・セーガン研究センターの所長で宇宙生物学者のナタリー・カブロル氏が、インタビューで地球外生命の発見は「もうすぐそこ」だと語りました。カブロル氏は「太陽系外惑星に生命を発見できるかどうかは判断が難しい」としつつも、生命活動に由来する汚染物質や合成分子の痕跡が見つかれば、生命発見への確信につながるかもしれないと述べています。

とはいえ、これらの発言はあくまで可能性を示しているだけともいえます。研究者が自らの研究や調査について「まだほとんどわかっていない」「誰にもわからない」と言うことはまずありません。そんなことを言えば、人びとに興味を持ってもらえず、また研究資金の確保にも不利になるからです。

では、天文・宇宙科学界隈の研究者たちは、地球外生命が存在すると本心から思っているのでしょうか。

科学者の本音—— 「エイリアン」はいるか、いないか

今年1月、科学誌『Nature Astronomy』へ掲載された調査報告に、宇宙生物学者521人と他分野の科学者534人へのアンケート結果がまとめられています。知的な地球外生命体の存在の可能性について、宇宙生物学者の86.6%が「宇宙のどこかに地球外生命が存在する」という意見に同意しました。そして「どちらとも言えない」、つまり中立だと答えたのは12%、否定的な考えを示したのはわずか2%でした。

他分野の科学者でもこの傾向は同じで、全体では実に88.4%が地球外生命の存在に同意しました。つまり、地球外生命の存在を信じているのは宇宙生物学者だけではないことがわかります。

この傾向は「知的な地球外生命が存在するか」という問いでも同じで、宇宙生物学者の67.4%、他分野の科学者の58.2%が「存在する」と答えています。

回答には「中立」という選択肢もありましたが、それを選んだのは全体の12%にとどまりました。中立を選んだ科学者はおそらく、地球外生命の存在はあくまで推測にすぎず、直接的な証拠がないと考えたのかもしれません。

科学者は、確たる証拠がない事柄について、基本的に結論を断定しないものです。科学者としての行動規範では、学術的な誠実性が求められるからです。誠実性を欠けば、研究は非倫理的であるだけでなく非効率的なものとされ、分野全体の信頼や研究資金の配分にも影響しかねません。

「地球外生命体がいるか、いないか」のような二択の問いでは、科学的合意は明確な証拠に基づく場合にのみ、信頼できるものになります。現状では、地球外生命が「存在する」と言えるほどの証拠はまだ不十分です。それでも半数以上の科学者が肯定的に答えるのは、証拠がないからこそ「存在する可能性もある」と推測したからではないでしょうか。

「状況証拠」は既にそろっている

「確たる証拠」こそ見つかってはいませんが、これまでの観測や研究から、「状況証拠」と呼べるような、地球以外にも生命が存在可能と考えられる環境は数多く見つかっています。

例えば木星の衛星エウロパでは、表面の氷殻の下に、温暖で栄養に富む、ある種の生命にとって理想的ともいえる環境が存在すると考えられています。 2024年に打ち上げられたNASAの探査機エウロパ・クリッパーは、2030年に木星周回軌道へ入り、エウロパへの接近通過観測(フライバイ)を繰り返して、生命存在の可能性を探る計画です。

土星の衛星エンケラドゥスでは、2005年から2017年にかけて土星を調査した探査機カッシーニが、南極域から吹き上がる水蒸気のプルームを観測しました。2014年には、NASAやESAがその地底に液体の海が存在する証拠を発見したと発表しています。

火星でも、かつて厚い大気に覆われ、その地表には水で満たされた湖や川が存在した痕跡が発見されています。つい最近ではNASAが、火星探査ローバーのパーサビアランスが採取した岩石サンプルに、生物由来の化学的プロセスから生じた可能性の高い成分が含まれていたと発表しました

太陽系外惑星の観測技術も進展しています。ハッブル宇宙望遠鏡やケプラー宇宙望遠鏡、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の活躍によって、太陽系外惑星の発見は格段に進みました。地球と同じような岩石質からなり、恒星からの距離としても水が液体で存在できる「ハビタブルゾーン」に位置している星も見つかっています。

つまり状況証拠から見ても、広い宇宙には生命が存在してもおかしくない環境がいくつもあることはわかっているのです。あとは、それらの太陽系外惑星を一つひとつ詳しく調べていけば、いつか生命の存在を裏付ける決定的な証拠が見つかるはずです。
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Munenori Taniguchi

ライター。ガジェット全般、宇宙、科学、音楽、モータースポーツetc.、電気・ネットワーク技術者。
実績媒体:TechnoEdge、Gadget Gate、Engadget日本版、Autoblog日本版、Forbes JAPAN他 Twitter:@mu_taniguchi

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