地球に似て非なる火星はどんなところ?
米アラバマ州にあるNASAマーシャル宇宙飛行センターは今年7月、 来たる火星有人探査に向けて、新開発の小型冷凍システムをテストしました。
火星といえば、太陽から数えて4番目、地球のすぐ外側を公転する惑星として知られています。気候も太陽系のなかで地球に最も近く、最高気温はおよそ30℃です。
もしそれだけなら、火星にも地球と同じようにたくさんの水や植物、動物がいてもおかしくないように思えます。ところが現在の火星表面は酸化鉄を含む赤茶けた砂に覆われ、カラカラに乾燥し、季節によっては広大な砂嵐が吹き荒れるような世界になり果てています。
その理由は、はるか昔のどこかの時点で、何らかの理由により火星の磁場が失われ、大気が宇宙に逃げてしまったためと考えられています。
現在の火星の気圧は地球の約160分の1しかなく、大気の構成も地球とは大きく異なります。比重が重く宇宙に逃げ出しにくい二酸化炭素(CO2)が96%を占め、残りは窒素とアルゴンがそれぞれ2%弱、酸素はわずか0.15%程度といった具合です。そして赤道付近では最高気温が30℃に達することもありますが、平均はマイナス60℃。夜や極地ではマイナス100℃を下回ることもあり、火星は地球に似て非なる“寒冷の惑星”です
では、そんな火星への有人探査のために、NASAはなぜ小型冷凍システムを開発しているのでしょうか?
火星といえば、太陽から数えて4番目、地球のすぐ外側を公転する惑星として知られています。気候も太陽系のなかで地球に最も近く、最高気温はおよそ30℃です。
もしそれだけなら、火星にも地球と同じようにたくさんの水や植物、動物がいてもおかしくないように思えます。ところが現在の火星表面は酸化鉄を含む赤茶けた砂に覆われ、カラカラに乾燥し、季節によっては広大な砂嵐が吹き荒れるような世界になり果てています。
その理由は、はるか昔のどこかの時点で、何らかの理由により火星の磁場が失われ、大気が宇宙に逃げてしまったためと考えられています。
現在の火星の気圧は地球の約160分の1しかなく、大気の構成も地球とは大きく異なります。比重が重く宇宙に逃げ出しにくい二酸化炭素(CO2)が96%を占め、残りは窒素とアルゴンがそれぞれ2%弱、酸素はわずか0.15%程度といった具合です。そして赤道付近では最高気温が30℃に達することもありますが、平均はマイナス60℃。夜や極地ではマイナス100℃を下回ることもあり、火星は地球に似て非なる“寒冷の惑星”です
では、そんな火星への有人探査のために、NASAはなぜ小型冷凍システムを開発しているのでしょうか?
マイナス250℃で沸騰し、気化する燃料
その理由は、複数の宇宙飛行士が搭乗し、往復で2~3年かかる行程に必要な水や食料を積むためです。そのため、宇宙船は無人のロボット探査機とは比べものにならないほど大きくなり、火星に軟着陸して再び地球へ戻るだけの燃料を安全に保持しなければなりません。
宇宙探査で一般的な燃料(推進剤)は液体水素と液体酸素です。ミッションに必要な量を蓄えるため、宇宙船には大型の燃料タンクが欠かせません。問題は、これらがいずれも極低温の液体である点です。液体水素はマイナス252.9 °C(マイナス423.2 °F)、液体酸素はマイナス183 °C(マイナス297.4 °F)で沸騰してしまいます。
宇宙空間では、日陰はおよそマイナス150℃まで下がります。それでも極低温の液体燃料の沸点より高いため、タンク内には気化したガスが充満し、圧力が上がります。最悪の場合はタンク破裂の危険があるため、定期的にガスを放出して圧力を下げる必要があります。
打ち上げ前に燃料を注入してから1週間ほどで終わる一般的な有人ミッションなら、ガスの放出も大きな問題にはなりません。しかし2年以上に及ぶ火星往復ミッションでは、断熱や冷却が不十分だと火星到着前に相当量の燃料をガスとして、排出せざるを得なくなる可能性があります。
NASA極低温流体管理ポートフォリオ・プロジェクトでマネージャー代理を務めるキャシー・ヘンケル氏は「火星で持続可能な滞在をし、地球へ帰還するには、極低温の液体燃料を保存する必要がある」と語ります。
同氏は「現在のロケットは燃料損失を見込み、ミッションに必要な量より多めの『マージン(余裕)』を含めた燃料を積む設計だから短距離では問題にならない。しかし、火星有人探査や月面の長期滞在となれば、非常に大きなタンクが必要になってしまうため、異なるアプローチが必要になる」と指摘します。
例えば燃料タンクを覆う断熱材を厚くするのは有効な手ですが、それでも燃料の蒸発は止められません。だからこそ、数年にわたるミッション中も極低温液体燃料の蒸発を抑える冷却システムが必要なのです。
宇宙探査で一般的な燃料(推進剤)は液体水素と液体酸素です。ミッションに必要な量を蓄えるため、宇宙船には大型の燃料タンクが欠かせません。問題は、これらがいずれも極低温の液体である点です。液体水素はマイナス252.9 °C(マイナス423.2 °F)、液体酸素はマイナス183 °C(マイナス297.4 °F)で沸騰してしまいます。
宇宙空間では、日陰はおよそマイナス150℃まで下がります。それでも極低温の液体燃料の沸点より高いため、タンク内には気化したガスが充満し、圧力が上がります。最悪の場合はタンク破裂の危険があるため、定期的にガスを放出して圧力を下げる必要があります。
打ち上げ前に燃料を注入してから1週間ほどで終わる一般的な有人ミッションなら、ガスの放出も大きな問題にはなりません。しかし2年以上に及ぶ火星往復ミッションでは、断熱や冷却が不十分だと火星到着前に相当量の燃料をガスとして、排出せざるを得なくなる可能性があります。
NASA極低温流体管理ポートフォリオ・プロジェクトでマネージャー代理を務めるキャシー・ヘンケル氏は「火星で持続可能な滞在をし、地球へ帰還するには、極低温の液体燃料を保存する必要がある」と語ります。
同氏は「現在のロケットは燃料損失を見込み、ミッションに必要な量より多めの『マージン(余裕)』を含めた燃料を積む設計だから短距離では問題にならない。しかし、火星有人探査や月面の長期滞在となれば、非常に大きなタンクが必要になってしまうため、異なるアプローチが必要になる」と指摘します。
例えば燃料タンクを覆う断熱材を厚くするのは有効な手ですが、それでも燃料の蒸発は止められません。だからこそ、数年にわたるミッション中も極低温液体燃料の蒸発を抑える冷却システムが必要なのです。
二段階冷却で燃料の蒸発を防ぐ
冒頭で触れたマーシャル宇宙センターの新型冷凍機テストは、まさにその対策です。貴重な燃料の損失を避けるため、二段階の能動的な冷却機構を用い、液体水素の蒸発ゼロ貯蔵を目指します。
まず第1の冷却ループでは、マイナス253℃(液体水素の沸点よりも低温)まで冷やした液体ヘリウムを満たしたチューブを極低温液体燃料タンクの周囲に巻き、タンクごと冷却します。さらに外側を断熱材で覆い、その上に第2の冷却ループとしてマイナス183℃のやや温度が高いヘリウムを循環させます。第2ループは、外部からの熱の侵入を抑え、遮断する役目を果たします。
これにより、電力供給が続く限り、極低温液体燃料を液体のまま保てます。蒸発による排出の無駄も抑えられます。
二段階冷却で無駄な排出がなくなれば、長期の火星ミッションでも持参する燃料を最小限にできます。惑星表面での滞在を含む、より長い往復ミッションの計画も視野に入ります。
まず第1の冷却ループでは、マイナス253℃(液体水素の沸点よりも低温)まで冷やした液体ヘリウムを満たしたチューブを極低温液体燃料タンクの周囲に巻き、タンクごと冷却します。さらに外側を断熱材で覆い、その上に第2の冷却ループとしてマイナス183℃のやや温度が高いヘリウムを循環させます。第2ループは、外部からの熱の侵入を抑え、遮断する役目を果たします。
これにより、電力供給が続く限り、極低温液体燃料を液体のまま保てます。蒸発による排出の無駄も抑えられます。
二段階冷却で無駄な排出がなくなれば、長期の火星ミッションでも持参する燃料を最小限にできます。惑星表面での滞在を含む、より長い往復ミッションの計画も視野に入ります。

マーシャル宇宙飛行センターにある真空チャンバーでテスト中の冷凍機(出典: NASA/Kathy Henkel)

Munenori Taniguchi
ライター。ガジェット全般、宇宙、科学、音楽、モータースポーツetc.、電気・ネットワーク技術者。
実績媒体:TechnoEdge、Gadget Gate、Engadget日本版、Autoblog日本版、Forbes JAPAN他
Twitter:@mu_taniguchi