従来の探査機とは異なる“自動車サイズのドローン”
ドラゴンフライは、これまでの惑星探査機には見られなかったマルチローター垂直離着陸機(VTOL)の形態を採用しています。そのいでたちは、いわば自動車サイズのドローンといったところで、見ようによってはドラゴンフライ(トンボ)のようにも見えるかもしれません。
タイタンは地球よりもやや重力が弱く、一方で気圧や大気密度は高いため、ドローンにとって飛行しやすい環境です。そして設計をマルチローターにすることで、仮にローターが1つ故障して回転しなくなっても飛行が継続可能で、車輪で移動するローバー(探査車)よりも広範囲にわたる探査が行えます。
タイタンは地球よりもやや重力が弱く、一方で気圧や大気密度は高いため、ドローンにとって飛行しやすい環境です。そして設計をマルチローターにすることで、仮にローターが1つ故障して回転しなくなっても飛行が継続可能で、車輪で移動するローバー(探査車)よりも広範囲にわたる探査が行えます。
探査機ドラゴンフライ(出典:Johns Hopkins APL)
厚いメタンの雲に覆われ太陽電池が利用できないタイタンの地表で必要な電力を得るために、ドラゴンフライはマルチミッション放射性同位体熱電気転換器(Multi-mission radioisotope thermoelectric generator; MMRTG)を搭載しています。
放射性同位体熱電気転換器(Radioisotope thermoelectric generator; RTG)は放射性同位体の崩壊熱と熱電対を利用して電気を発生させる発電ユニットで、これまでも、太陽電池が効果的に利用できなくなるほど太陽から遠い宇宙を探査する機器に搭載されてきました。
例えば1977年に打ち上げられたボイジャー1号と2号が搭載するRTGは、打上げから47年が過ぎ、機体が太陽圏を脱出して星間空間に到達した現在も、(能力低下はあるものの)電力供給を継続しています。
ドラゴンフライでは、MMRTGからの電力をリチウムイオンバッテリーに蓄えることで、機体を飛行させるための動力とします。設計上は、バッテリーが満充電の状態ならば、約30分間・約16kmを飛行できるようになっています。
放射性同位体熱電気転換器(Radioisotope thermoelectric generator; RTG)は放射性同位体の崩壊熱と熱電対を利用して電気を発生させる発電ユニットで、これまでも、太陽電池が効果的に利用できなくなるほど太陽から遠い宇宙を探査する機器に搭載されてきました。
例えば1977年に打ち上げられたボイジャー1号と2号が搭載するRTGは、打上げから47年が過ぎ、機体が太陽圏を脱出して星間空間に到達した現在も、(能力低下はあるものの)電力供給を継続しています。
ドラゴンフライでは、MMRTGからの電力をリチウムイオンバッテリーに蓄えることで、機体を飛行させるための動力とします。設計上は、バッテリーが満充電の状態ならば、約30分間・約16kmを飛行できるようになっています。
タイタンを調査用の「5つの実験観測機器」が搭載された大型ドローン
ドラゴンフライは、タイタンの地表を調べるためにDraMS、DrACO、DraGNS、DraGMet、DragonCamという5つの実験観測機器を搭載しています。
DraMSは、タイタンの地表や大気中の成分から生命の誕生に必要となる有機化合物や分子といった生命前駆物質(生命の元となる物質)を識別するための質量分析計です。
DrACOは、地表サンプルを採取するためのドリルで、ボーリング装置のような仕組みでサンプルを取り出し、DraMSへ送ります。
DraGNSはガンマ線・中性子分光計です。地表面の元素組成を分析したり、表面物質を分類する機能を備えています。DraGMetは大気の状態や地表のレゴリス(砂利など)の特性を調べたり、地震レベルを検出してタイタンの惑星活動の特徴をつかみます。DragonCamは、飛行中に上空から地形をカメラで捉えたり、地表面の活動痕跡を特徴づける役割を担います。
ドラゴンフライには、ほかにもいくつかのセンサー機器などが搭載される予定です。
DraMSは、タイタンの地表や大気中の成分から生命の誕生に必要となる有機化合物や分子といった生命前駆物質(生命の元となる物質)を識別するための質量分析計です。
DrACOは、地表サンプルを採取するためのドリルで、ボーリング装置のような仕組みでサンプルを取り出し、DraMSへ送ります。
DraGNSはガンマ線・中性子分光計です。地表面の元素組成を分析したり、表面物質を分類する機能を備えています。DraGMetは大気の状態や地表のレゴリス(砂利など)の特性を調べたり、地震レベルを検出してタイタンの惑星活動の特徴をつかみます。DragonCamは、飛行中に上空から地形をカメラで捉えたり、地表面の活動痕跡を特徴づける役割を担います。
ドラゴンフライには、ほかにもいくつかのセンサー機器などが搭載される予定です。
ドラゴンフライが発見するかもしれない「生命誕生の兆候」
ドラゴンフライミッションでは、ホイヘンスの着陸地点から見て東の方角にある、「シャングリラ」と名付けられた丘陵地帯をドラゴンフライの着陸予定地としています。シャングリラはタイタンの赤道付近にある3つの大きな砂の海のひとつです。
そしてシャングリラの端には「セルク」と呼ばれる直径約90kmのクレーターがあります。そのクレーターの中には、隕石の衝突で持ち込まれた水や、火山活動に由来する水、そしてメタンをはじめとする炭化水素などの有機物が混ざり合い、生命の元、つまり生命前駆物質であるアミノ酸などがが形成される可能性がある「原始スープ」状態になっている可能性が考えられています。
そしてシャングリラの端には「セルク」と呼ばれる直径約90kmのクレーターがあります。そのクレーターの中には、隕石の衝突で持ち込まれた水や、火山活動に由来する水、そしてメタンをはじめとする炭化水素などの有機物が混ざり合い、生命の元、つまり生命前駆物質であるアミノ酸などがが形成される可能性がある「原始スープ」状態になっている可能性が考えられています。
ドラゴンフライ(出典:NASA / Johns Hopkins APL)
ドラゴンフライは、計画ではまず着陸地点のシャングリラから最長8km離れた複数地点で地表のサンプルを取得し、分析を行います。その後、セルク・クレーターへ向かい、内部一帯を調査する段取りとなっています。
なお、われわれ一般人の感覚からすれば、マイナス161℃という極低温である液体メタンの中でどのようにして生命が存在できるのか想像しにくいところですが、2015年にはコーネル大学の研究チームが、地球上の生命体と同じように代謝や繁殖が可能な、メタンベースの無酸素生命体が存在しうることを論文で報告、この仮説上の細胞の細胞膜を「アゾトソーム」と名付けています。
地球とは全く違う環境のタイタンではあるものの、もし生命誕生に近い段階の化学物質などがここで発見されれば、われわれの生命の起源にまつわる謎の一部の解明につながるかもしれません。
なお、われわれ一般人の感覚からすれば、マイナス161℃という極低温である液体メタンの中でどのようにして生命が存在できるのか想像しにくいところですが、2015年にはコーネル大学の研究チームが、地球上の生命体と同じように代謝や繁殖が可能な、メタンベースの無酸素生命体が存在しうることを論文で報告、この仮説上の細胞の細胞膜を「アゾトソーム」と名付けています。
地球とは全く違う環境のタイタンではあるものの、もし生命誕生に近い段階の化学物質などがここで発見されれば、われわれの生命の起源にまつわる謎の一部の解明につながるかもしれません。
Munenori Taniguchi
ライター。ガジェット全般、宇宙、科学、音楽、モータースポーツetc.、電気・ネットワーク技術者。
実績媒体:TechnoEdge、Gadget Gate、Engadget日本版、Autoblog日本版、Forbes JAPAN他
Twitter:@mu_taniguchi