ローファイ&善良なるオフビート
現在は5分ほどの長尺の動画に加え、TikTokやXに特化した5〜10秒ほどのショート動画も公開されています。どの動画も映像にあえてノイズを入れたり、時にはモノラル音源にしてみたり、トイ感やローファイさを大切にしている印象です。パペットの動き(人形操演)のかわいらしさも大変すばらしい。
そしてオフビートなユーモアも、初期から現在に至るまで一貫しています。
例えば、個人的にイチオシの回「パペットスンスン#5『オリンピックにでよう』」は、将来オリンピックに出たいスンスンが、おじいちゃんに“あること”を手伝ってもらいながら、友達の「ノンノン」と、“きっとこれからすごく人気が出るスポーツ”を練習する……というもの。
私たちがコロナ禍をまだ知らず、無邪気に東京オリンピック・パラリンピックで盛り上がっていた時期に公開された動画です。で、いつかオリンピックに出たいと願う幼いパペットが、サッカーや柔道のようなメジャーな競技ではなくニッチな新興スポーツを特訓する状況が、大人の私にはジワジワ面白い。そしてニッチな謎スポーツの強烈な絵面といったら!
しかも、その新興スポーツの競技人口がむちゃくちゃなのです。万が一オリンピック競技に正式採用されたら、100%スンスンとノンノンが選ばれます。でも当然ながらスンスン本人は「競技人口って何!?」といった調子で「競技人口が少ないから、自分でもオリンピック代表になれるかも」なんていうスケベな胸算用は感じられません。スンスンにもノンノンにも底意は全くなく、ストレートに「オリンピックに出たい!」だけ。おじいちゃんのゾンゾンも一緒になって新しい競技を楽しんでくれます。で、見ているこちらも「いつかオリンピックに出られたらいいねえ」みたいな気分になっちゃう。
そしてオフビートなユーモアも、初期から現在に至るまで一貫しています。
例えば、個人的にイチオシの回「パペットスンスン#5『オリンピックにでよう』」は、将来オリンピックに出たいスンスンが、おじいちゃんに“あること”を手伝ってもらいながら、友達の「ノンノン」と、“きっとこれからすごく人気が出るスポーツ”を練習する……というもの。
私たちがコロナ禍をまだ知らず、無邪気に東京オリンピック・パラリンピックで盛り上がっていた時期に公開された動画です。で、いつかオリンピックに出たいと願う幼いパペットが、サッカーや柔道のようなメジャーな競技ではなくニッチな新興スポーツを特訓する状況が、大人の私にはジワジワ面白い。そしてニッチな謎スポーツの強烈な絵面といったら!
しかも、その新興スポーツの競技人口がむちゃくちゃなのです。万が一オリンピック競技に正式採用されたら、100%スンスンとノンノンが選ばれます。でも当然ながらスンスン本人は「競技人口って何!?」といった調子で「競技人口が少ないから、自分でもオリンピック代表になれるかも」なんていうスケベな胸算用は感じられません。スンスンにもノンノンにも底意は全くなく、ストレートに「オリンピックに出たい!」だけ。おじいちゃんのゾンゾンも一緒になって新しい競技を楽しんでくれます。で、見ているこちらも「いつかオリンピックに出られたらいいねえ」みたいな気分になっちゃう。
何を見てもなんだか楽しくなっちゃう ©PUPPET SUNSUN/PS committee
あえてテンポを崩したようなオフビートな笑いやローファイな演出が特徴ですが、登場人物がみんないい人で、さりげない善良さや優しさがきちんと見え隠れするところこそ、私がパペットスンスンを非常にモダンなコンテンツと感じる点でもあります。誰の心もざらつかせないぞという製作者側の意志を感じるのです。そして多くの大人たちが「癒やされる」とコメントする理由もここにあると思います。“無垢”なものを目にすると、その瞬間くらいは、私もつられてピュアな気分になります。
で、ここ2〜3年の動画は、ただのオフビート&ローファイな世界観にプラスして、不条理さがどんどん増しています。「ちいかわ」がまとう不条理さがパペットスンスンにも漂っているのです。ここもモダンな愛されポイントといえます。
最近のパペットスンスンは不条理すぎて、もはやスリムクラブのコントのようになりつつありますが、それでも「善良であること」は不変で、ひたすらにかわいい。動画をたった10秒見ただけで「かわいいじゃん」と思わせる力があります。
つまり動画なくしてパペットスンスンの成功はなかったはずです。少なくとも私は、動画で見たパペットスンスンの動きや演出、そしてなんともいえない笑いをフックに、静止画のスンスンやぬいぐるみにもスンスンのパーソナリティーを感じるようになり、「君はとてもかわいいなあ」と思うようになりました。それに加えて、ハイスピードなコンテンツ供給と多彩なコラボ展開のおかげで、ひたすらに目に付いてしょうがない。
で、ここ2〜3年の動画は、ただのオフビート&ローファイな世界観にプラスして、不条理さがどんどん増しています。「ちいかわ」がまとう不条理さがパペットスンスンにも漂っているのです。ここもモダンな愛されポイントといえます。
最近のパペットスンスンは不条理すぎて、もはやスリムクラブのコントのようになりつつありますが、それでも「善良であること」は不変で、ひたすらにかわいい。動画をたった10秒見ただけで「かわいいじゃん」と思わせる力があります。
つまり動画なくしてパペットスンスンの成功はなかったはずです。少なくとも私は、動画で見たパペットスンスンの動きや演出、そしてなんともいえない笑いをフックに、静止画のスンスンやぬいぐるみにもスンスンのパーソナリティーを感じるようになり、「君はとてもかわいいなあ」と思うようになりました。それに加えて、ハイスピードなコンテンツ供給と多彩なコラボ展開のおかげで、ひたすらに目に付いてしょうがない。
2025年6月にソニーミュージック系列のレーベル“Echoes”からアーティストデビューしました。ジャケがしゃれてる ©PUPPET SUNSUN/PS committee
ちなみにコラボについては、かつての「ハローキティ」と同じく「仕事を選ばない」なんて評される勢いでドシドシ展開中です。でも実は、ハローキティもパペットスンスンもちゃんとお仕事は選んでいると思います(暴力を想起させたり人の心をざわつかせる領域には絶対に近寄らないはずです)。
とにかく、一挙手一投足、すべてに令和らしい戦略とチャーミングさが込められた愛すべきキャラクターです。“永遠の6才”ことスンスンには末永く「ふわぁ」と言いながらバンザイしててほしい!
とにかく、一挙手一投足、すべてに令和らしい戦略とチャーミングさが込められた愛すべきキャラクターです。“永遠の6才”ことスンスンには末永く「ふわぁ」と言いながらバンザイしててほしい!

花森 リド
ライター・コラムニスト
主にゲーム、マンガ、書籍、映画、ガジェットに関する記事をよく書く。講談社「今日のおすすめ」、日経BP「日経トレンディネット」「日経クロステック(xTECH)」、「Engadget 日本版」、「映画秘宝」などで執筆。
X:@LidoHanamori













